(ぴすとる)1896年(明29)金桜堂刊。妻子を置き去りにして蒸発した男・横瀬は7年後に金持ちになって米国から帰ってきた。妻の実家を訪ねると年老いた義父と自分の息子だけがいて、妻は死んでいた。彼は弁護士の友人と東京に行き、ある実業家の邸宅を訪ねるが、そこの庭で不意に銃撃され、瀕死の重傷を負った。なぜ撃たれたのかの理由もわからないまま、目撃証言からその友人が撃ったとして収監される。横瀬は何とか助かるが、その目撃証言を覆さない限り友人の無実の罪を晴らす手段はなかった。その証言くずしの過程で、彼の過去と事件のからくりがあからさまになってくる。登場人物が少ない中で、人間関係がはめ込み細工のように型に収…