影人形~釘抜藤吉捕物覚書:林不忘 1955年(昭30)同光社刊、11篇所収。 1928年(昭3)平凡社、現代大衆文学全集第25巻新進作家集に5篇所収(うち4篇は重複) 最初は大正14年3月から雑誌「探偵文芸」で連載が開始された。岡本綺堂の「半七」ばりの江戸情緒の味わいが出ている捕物帳で、不忘の出世作だが、今は「丹下左膳」の名声の陰に隠れてしまったのが惜しい。 藤吉と手下の勘弁勘次、葬式(とむらひ)彦兵衛の三人所帯で女ッ気は無い。手下の冗談や混ぜ返しにまったく乗らないニヒルさ(あるいは気取り)が見られ、短躯でガニ股の見栄えのしない藤吉への馴れ馴れしさを遠ざけているが、それが名探偵の心の内を容易に…