小説家、詩人。 1950年、愛知県生まれ。2014年8月30日、死去。 1973年『蒼い影の傷みを』で婦人公論女流新人賞、1980年『ホテル・ザンビア』で作品賞、1992年『エンドレス・ワルツ』で女流文学賞、1995年『声の娼婦』で平林たい子文学賞を受賞。著書は『猫に満ちる日』『ミーのいない朝』『水の中のザクロ』『ガーデン・ガーデン』『花響』『母音の川』『風変りな魚たちへの挽歌』『午後の蜜箱』『私がそこに還るまで』『さよならのポスト』『還流』など多数。
新左翼に疲れていた若者たちが、あったのかと思う。 一九七〇年の安保改定に向けて、六〇年代後半は若者たちの政治行動が盛んだった。六八年の春には東大入試が実施されなかった。前年の安田講堂立てこもり闘争の後片づけが済まず、いまだ荒廃治まらぬ情勢だったからだ。 新左翼の各セクトは、路線対立による分裂様相をますます深めていた。日本共産党に対する批判や他セクトに対する批判が先鋭化するなかで、主敵であったはずの国家権力批判については、定型符丁化し紋切型になってゆくかに見えた。言葉のみが過激に積みあがり、行動の面では極端化・跳上り化して、多くの社会人の実感から遠ざかる傾向にあった。 が、その現象を滑稽だの漫画…
1995年、今から27年前の本だった。長いこと、書庫に保管されていたのだろう。本を開くと、古い紙のにおいがした。いやな感じはしなかったから、わたしは思わず鼻を本に近づけて、においを嗅いだ。図書館で、稲葉真弓さんの本をいくつか借りてきた。一人の女性たちのひそやかな日常を淡々と描いているストーリーが多かった。柔らかな筆遣いのいたるところに、散りばめられている情緒。一語一語をかみしめながら、丁寧に読んでいく。ぜいたくなひとときだった。巨大な図書館の地下書庫で働く女性が、間違え電話をきっかけに二人の男性としばし魅惑的な交流をしていく「声の娼婦」。 (function(b,c,f,g,a,d,e){b.…
ようやく読めました。 33人の作家さんたちのネコエッセイを集めたもの。 稲葉真弓さん、町田康さん、角田光代さん、森下典子さん、村山由佳さん、群ようこさん、養老孟司さん、佐野洋子さんなどが書いている。 それぞれ単独でのネコエッセイとは一味違った趣がありました。
昔の読書の覚書まとめ。 とんちんかんな感想あるかもしれない&どれも短い。 並びは大体読んだ順。
名古屋といえば、頭に思い浮かべるのはすこしお国なまりで話をする市長さん でありますね。あのような人が人気を集めて当選を重ねる風土というのは、当方 は馴染めそうにないなであります。 もっともあの市長さんを支持する人ばかりが住んでいるわけではないはずであり まして、昨日から手にしている「本の虫 二人抄」を読んでいますと、それを感じ て、長い歴史に育まれた良質な名古屋の文化の有り様を知ることができることです。 古田一晴さんが書いている「工作舎物語 眠りたくなかった時代」の名古屋につ ながるところ。この本には、雑誌「遊」の編集にかかわった人たちの証言を集めて いるのですが、その「証言者のトリを務めてい…
近現代作家集 III ((池澤夏樹=個人編集 日本文学全集28))河出書房新社Amazon 読みたくない本を読みたい、と思った。 あるいは、読みたい本を探して読む、という行為に限界を感じた、と言うべきか。 とにかく、自分自身では選ばないような本を読みたい気分になった。 自分で選ばないのであれば、誰かに選んでもらうしかない。 というわけで池澤夏樹編『日本文学全集』を読むことにした。一番とっつきやすそうな、近年の作品を集めた「近現代作家集Ⅲ」から。 などという軽い気持ちで読み始めたのだが、久しぶりに文学作品を、しかもよりすぐりの作家による作品群を一気にまとめて読んだので、かなり重たいショックを心に…
3日に一回亀の水槽の水を変えてると水道代もバカにならないだろう。夏だけだからまだマシだけども。読書。また2編。残り4編。稲葉真弓。いい。本屋。読みたい本を2冊見つける。 あるきながら昔のことを考える。虚しいことよ。 あの頃の未来に僕らは立っている。 湿気が多すぎて汗が乾かない。喉も変。ホタテの貝柱のソテー。ガキの使い。まっちゃんの髪型ばかり気になる。脚トレ。と言いつつ最近の運動は全部四股、テッポウ、木刀の素振りがメインになってきてる。 ストレッチは首から。でも俺、同級生と沖縄で泳いだことあるし、好きな子と居酒屋でデートしたことあるしなぁ。と、自己肯定感を高めてみる。虚しいことよ。溜まってる。ダ…
第五章「物語は「神なるもの」をどう描いて来たか」 ①「SF小説に見る宗教性と反宗教性」 ②「科学合理性の魅惑と限界」 ③「後期クイーン問題と神」 ④「酸鼻と陰惨のゴシック・ホラー」 ⑤「ナルニアへ続く箪笥」 第六章「性と聖」 ①「推し活は「性的消費」なのか」 ②「エロティシズムと聖なるもの」 ③「泣けるゲームやアニメの神聖な構造」 ④「愛という言葉すら忘れ去られて」 ⑤「詩人が見た夢」 ⑥「性と聖を統合し昇華する」 第七章「推し文化のスピリチュアルなかたち」 ①「ふたつの殺人事件」 ②「共食いの匣」 ③「悪の華、咲きそめる」 ④「尊くもグロテスク」 ⑤「その都市の名はオメラス」 ⑥「実存的空虚…
2014年~2015年、季刊詩誌『びーぐる』に投稿した書評を転載します。 「私たちは、つながっている」詩集『錦繍植物園』中島真悠子著 土曜美術社出版販売 定価(本体2000円+税) 血だらけの「あなたの指」が、「私の皮膚」を剥ぎとって、夜ごと刺繍していく・・・タイトルポエムの「錦繍植物園」を読みながら、白い肌の上に熱帯性の植物の蔓や毛根が繁茂していく眩惑に、しばし捕らわれていた。イメージの生々しさに圧倒される。 「あなた」とは誰だろう。夜になると中島の元を訪れる、もう一人の私(「ハイド」「水棲の部屋」)。見えざる者たちに囲まれて「繕いをしながら/朝と夜を溶け合わせることを目論んでいた」私(「閉…