木走日記

場末の時事評論

沖縄防衛局親族調査が晒した防衛省のリスク管理能力欠如

 呆れてしまうとはこのことです。

 31日付け産経新聞電子版速報記事から。

選挙に不当介入か 沖縄防衛局が親族調査 2月市長選の宜野湾市 メール暴露
2012.1.31 13:08
 共産党赤嶺政賢氏は31日午前の衆院予算委員会で、沖縄防衛局が2月12日投開票の沖縄県宜野湾市長選に向け、同市に職員の親族がいるか調査するよう指示していたと政府側を追及した。

 赤嶺氏が提示した沖縄防衛局内のメールとされる資料によると、人事係が今月4日、「各部庶務担当者」あてに宜野湾市に住む職員や選挙権がある親族のリストの提出を要請。18日のメールで、23、24両日に真部朗沖縄防衛局長による「講話」を実施するとして、「必ず聴講するよう、別添『聴講者リスト』の職員に通知願います」と庶務担当者に再び要請した。

 沖縄防衛局長の講話の中身は不明だが、赤嶺氏は「国家権力による選挙の自由への不当な介入ではないか」と追及。野田佳彦首相は「まず事実関係を確認させてもらいたい」とし、田中直紀防衛相は「沖縄防衛局としてそういう事実はあってはいけない。事実関係を明確にしたい」と述べた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120131/plc12013113090010-n1.htm

 私たまたまですがTVのNHK国会中継をLIVEで見ておりまして、この赤嶺氏がメールを読み上げるところでその内容に驚き画面に釘付けになってしまいました。

 まず仕事始めの今月4日、人事係が「各部庶務担当者」あてに宜野湾市に住む職員や選挙権がある親族のリストの提出を要請いたします。

 18日のメールで、23、24両日に真部朗沖縄防衛局長による「講話」を実施するとして、「必ず聴講するよう、別添『聴講者リスト』の職員に通知願います」と庶務担当者に再び要請いたします。

 田中直紀防衛相が明日の国会で事実関係を報告するそうですが、これらの内容が事実だと仮定して話を進めますが、防衛省内の組織風土はどうなっているのか、そのリスクマネジメント能力の著しい劣化を感じずにはいられませんでした。

 コンプライアンスを重視する民間企業ならば、個人情報保護の観点からも、たとえ誰かが社内の「宜野湾市に住む職員や選挙権がある親族のリストの提出」を提案したとしても、複数の部署から絶対にストップが掛かったことでしょう。

 防衛局長が公務時間に宜野湾市に住む職員や選挙権がある親族を有する職員だけを集めて「講話」を実施とは、これが外部に漏れれば「選挙に対する不当介入」の疑いが強く持たれることは誰しも想像のつくことです。

 誰の発案か知る由はありませんが、もし実施されていたとすれば、この調査、通知、講話、というステップの、すべての段階で防衛局長を筆頭に関わる全員が、誰もこのことの重大性、危険性、つまりリスクを認識していなかったことになります。

 しかも省内のメールで人事係が「各部庶務担当者」にメールにおいて情報収集するという「大らかさ」はどうでしょう、情報を秘匿する構えもまったく伝わってきません。

 国を守る組織としてこの「大らかさ」、リスクマネジメント能力の欠如は致命的であります。

 ・・・

 現代社会においては、多くの組織がリスクマネジメントを業務システムとして運用していますが、その一方で現実的には、大きな事故・災害や不祥事の発生は後を絶つことがありません。

 リスクマネジメントの定石としてリスクの大きな部位から順に対策を講じてゆくことは重要ではありますが、組織が抱えるリスクシナリオは無限に存在するため、結局は顕在化したリスクのモグラたたきという構図に陥る場合もあります。

 しかし、防衛省は旧防衛庁の2002年、情報公開請求者の身元や活動内容をまとめたリストを作り、庁内で閲覧していたことが発覚、大問題になった過去があります。

 過去に顕在化したリスク、そこから組織として何も学ばなかったとすれば、国防組織としてリスク管理能力がないと断ぜざるをえません。

 国防という大切な仕事を任されている防衛省リスク管理は、当然のことですが、兵器を扱う「制服組」だけでなく平時の「事務方」をも含めた組織全体に厳しく適用されなければなりません。

 防衛省には猛省を促したいです。

 リスクマネジメントシステムの徹底的な見直しをもとめます。



(木走まさみず)