文藝春秋の新刊 2000・2 「木蓮」 ©大高郁子

クリーム色に描かれた地面、銀の足跡がまぶしく雪の風景かなってそんなふうにも思えるのだけど、でも雪の日、自転車には乗らないしな─なんて茶々はいらないか。左下にある葉っぱだけの木蓮がイラスト全体を引き締めている。初夏にどんな花が咲くのでしょうかね…なんて何だかこういう物言いはわたしに似合わない。

 2008年2月 ハヤカワ文庫チラシの紹介

早川書房の新刊案内 2008 2

ロバート・ホワイティング サクラと星条旗

クリスティー・ジュニア・ミステリ第3弾 予告殺人
フォルツ&フランシス 天沼春樹=訳
宇宙英雄ローダン・シリーズ 344 メールストロームでの邂逅

ティーブン・グールド 公手成幸=訳
ジャンパー 上・下
ジャンパーグリフィンの物語

アルフレッド・ベスター 中田耕治=訳
虎よ、虎よ!

栗本薫
グイン・サーガ 119 ランドックの刻印

野阿梓
兇天使

レイモンド・E・フィースト 岩原明子=訳
リフトウォー・サーガ 第1部 6セサノンの暗黒

テリー・グッドカインド 佐田千織=訳
真実の剣 第7部完結 魔帝の血脈 4 宿命の邂逅

ステフ・ペニー 栗原百代=訳
優しいオオカミの雪原 上・下

T・M・ジェンキンズ 熊谷千津=訳
死者覚醒

ローラ・リップマン 吉澤康子=訳
女たちの真実

ロバート・B・パーカー 菊池光=訳
ダブルプレー

ジョアン・ハリス 古賀弥生=訳
紳士たちの遊戯

カレン・ローズ 藤田佳澄=訳
暗闇に抱かれて

ジョン・スタインベック 土屋政雄=訳
エデンの東 3・4

ロバート・M・バーシク 五十嵐美克=訳
禅とオートバイ修理技術 上・下


早川書房の最新刊
好評の年間ベストSFガイドブック 「SFが読みたい 2008年版」
「警察署長ジェッシイ・ストーン」シリーズDVD


ハヤカワ文庫チラシ08年1月はこちらにあります

 創元推理・SF文庫 2008年2月チラシの紹介

 
東京創元社 新刊案内 2008 2

創元クライム・クラブ 小林泰三 モザイク事件帳 カバー装画=丹地陽子

創元推理文庫 新刊
サラ・スチュアート・テイラー 野口百合子=訳
狡猾なる死神よ

パーシヴァル・ワイルド 越前敏也=訳
検死審問 インクエス

パトリシア・A・マキリップ 原島文世=訳
オドの魔法学校

米澤穂信
犬はどこだ

高城高
高城高全集 1 墓標なき墓場


創元SF文庫 新刊
田中芳樹
銀河英雄伝説 7 怒涛篇


ミステリーズ 単行本 全集 近刊案内
桜庭一樹先生が第138回直木賞を受賞

海外MYSTERY通信
テイラー「狡猾なる死神よ」は、墓石研究家が探偵役となるシリーズ第1弾。死と象徴に彩られた物語をお楽しみください。新訳でよみがえる「検死審問─インクエスト─」は乱歩やチャンドラーも認めた才人ワイルドの代表作。メイヤー「トウシューズはピンクだけ」は妊娠中の主婦探偵が奮闘するコージー第2弾です。
国内MYSTERY通信(文庫)1955年デビュー。「賭ける」など主に短編を執筆し、日本ハードボイルド黎明期を飾った高城高は、1970年の「死ぬ時は硬い笑いを」以降作家的沈黙を続けます。2007年、荒蝦夷より代表作を纏めた「X橋付近」を刊行、反響を呼び「このミス」にもランクイン。37年ぶりの新作も発表し、完全復活を遂げたこの伝説の作家の文庫版全集を、三分冊で刊行します。第一巻はもっとも入手困難だった幻の長編を復刊。同時刊行は、やはり「このミス」にランクインした米澤穂信の私立探偵小説「犬はどこだ」。読み比べてみるのも面白いですよ。
国内単行本通信
犯人当てに日常の謎等々、ミステリでおなじみのお題に小林泰三が挑む「モザイク事件帳」。精緻な論理とそこはかとなく黒い笑いが横溢する、叙述トリックの名手である著者の真骨頂。竹内真「ビールボーイズ」は秘密基地でビールへの復讐を誓った少年たちの成長小説。好対照な単行本、あわせてお楽しみください。
ファンタジー通信
ファンタジーの名手、幻想の紡ぎ手マキリップが登場。魔法の力を持つ孤独な青年、親の決めた結婚に反発する姫君、都の歓楽街で興行する妖しい魔術師らが織りなす不思議な物語。世界幻想文学大賞の候補にもなった傑作です。ブックランドは、好評<魔使いシリーズ>第3弾「魔使いの秘密」。主人公トムの成長に注目。



創元推理・SF文庫チラシ08年1月はこちらにあります

 ハヤカワ文庫 06年5月刊 谷甲州 エミリーの記憶

エミリーの記憶 (ハヤカワ文庫JA)

エミリーの記憶 (ハヤカワ文庫JA)

興味を持って購入したのだけれど、曲折あって読めずに放っておいた一冊。手に取ったけど巻頭の短編がどうにも読めずに悪戦苦闘してそのまま諦めた。もっと美味しい作家だったのになと不審に思ったのだが、あとがき読んでその不審の理由を納得する…ってのも変な話だが、著者いうところの“SF冬の時代”の薄ら寒さを実感したってところか。

…ただし掲載にあたっては、全面的に改稿した。89年あたりにかかれたものはともかく、フルタイムになったばかりの86年や87年ごろの作品など、いかにも下手糞でとても人前に出せる代物ではない。…
…中略…
「逝きし者」86年10月号
フィリピンから帰国して書いた最初の作品。それ以前はフルタイムではなく、ほかに本業を持っていた。つまりこれが完全なプロとして書いた最初の作品になるわけだが、当時の雑誌を読み返してみたらこれがいちばん下手糞だった。がさがさと手をいれたのだが、あと何年かしたら「手をいれてこの程度か」と嘆くことになるかもしれない。
…あとがきからそのまま文庫版あとがきへ…

クーデターの予感に満ちた土星の衛星植民地で、犯人探しに奔走する老刑事と若い婦人警官のスリリングでサスペンス溢れるSFミステリ長編(タイトル失念、このミスランクインの一編でした)を書いた人とは思えませんでした。
まあ、最後の作品まで読み終えはしたが、やっぱり谷甲州は長編作家なんだね。「過去を殺した男」「子供たちのカーニバル」など枝葉をととのえ、キャラクターをそろえたなら心理サスペンスやホラーとして、悪くない長編小説になったかもしれない。短すぎたせいで両者とも無理やりの謎解き・オチで興が殺がれた。
「宗田氏の不運」ってこれはおかしな読後感だな。いじめられ小説の新機軸というわけでもない、賭金総取りっていうほうが正解か。


宗田氏は答えなかった。得をしたような気もするが、なんだか損をした気分のほうが強かった。(了)

という結末だけれど、だれがどう考えても損をしてるでしょ。少し早く死んだおかげであの世から、地獄絵図の現世をのほほんと見られるってことかも知れないけれど、まあそれはともあれ死んでしまってはどうしようもないって、こんなわたしが言ってもどうでもいいことだけど。