和田垣謙三

昨夜書いた和田垣謙三の『兎糞録』大正2.7.14発行(大正2.12.2 16版による)。
面白い本だ。
序文の冒頭から、

兎糞録とは何ぞや。曰く読んで字の如し。折に触れ時に応じ、興来り情湧く毎に、ポツリ/\ポロリ/\飛び出したるもの、即ち是。
で、「コムモンセンスあり、センモンセンスあり、ナンセンスあり」であるとか、「先づは兎糞録の由来因縁、ザザ脱兎如件」*1とか「先生トフン否ギャフン」などとある。
目次を見ても、「百鬼夜行的誤字当字」「近眼失敗談」「誇大的なる文字の使ひぶり」「原敬る」「清濁の差」「擬声辞」「音読と黙読」「漢字の逆輸入」「記憶法」「コヒーに非ずヒーなり」など、面白そうだ。

「記憶法」から。

農務省は英語にてAgricultural and Commercial Department と云ふ。之を「アッキレケールホド、コマラシヤガル、デパートメント」と呼び、
つまり「呆れかえるほど困らしやがるデパート」というわけ。ウエスト・ケンシントンの上杉謙信も出てくる。そして、
十数年前「和田守記憶法」と云ふ書出でて一時世間に喧伝せり。和田守と和田垣と音相似たる為に、往々その記憶法に就いて予に書面を送り来れる人ありき。
とあるのも面白い*2

「類似せる外国語と日本語」は、「記憶法」のような、意図的なものとは違う。
これもよく言われる「Have an eye!」と「アブナイ」、「ありがとう」と「アリゲーター」の他に、「Comme vin?」と「今晩は」。

*1:野暮な注釈を加えれば、「ざっとくだんのごとし」と洒落ているわけだ。

*2:和田守記憶法については、岩井洋『記憶術のススメ―近代日本と立身出世―』(青弓社1997.2.5)ISBN:4787231324