コンドルセのパラドックス、総和構造、整地圏
いずれにしても否定的な意味はまったくない。「コンドルセ現象は事実だから、そのメカニズム/背景を解明せよ」ということになる。この意味では、コンドルセのパラドックスは非常に良い問題である。
昨日の時点から色々と考えて、誤解や甘い点があるのが分かった。
- コンドルセ・サイクルはコサイクルと言ったが、やはりサイクルと考えたほうがいい。それはそうとして、コンドルセ形式=コンドルセ・コチェーンも考える必要があって、「コンドルセ・サイクルの出現」とは、サイクルの空間とコチェーンの空間の相互作用による。チェーン複体、コチェーン余複体(余複体は反変代数的複体のこと)、随伴コチェーン複体の相互関係がハッキリしないと、コンドルセ・サイクルの定義もできない。
- 被覆を使ってコホモロジーを計算するが、良い被覆だけを相手にできない。良くない被覆/部分的に良い被覆なども考える。「良さ」がどう実現できるか? 崩壊するか? が論点。
- コホモロジーの計算では、被覆は単なる道具だが、コンドルセのパラドックスの文脈では、被覆自体が対象(一般的な意味でも、圏論的な意味でも)となる。Xのコホモロジーを計算するのではなくて、Xの被覆Φによるコホモロジー=Φのコホモロジーが問題となる。
- 選好集約〈preference aggregation〉の意味での集約が問題になる。つーか、中心課題だ。選好=1-形式だから、形式=コチェーンの空間のあいだの演算として集約は定義できる。
- 集約は、位相的集約〈topological aggregation〉と量的集約〈quantitative aggregation〉がある。位相的集約はホモロジーに反映し、量的集約はコホモロジーに反映する。
- ホモロジーとコホモロジーは形式的双対ではなくて、ホモロジーが位相的・定性的な性質を反映し、コホモロジーが計測的・定量的な性質を反映する。R以外の係数を使うと、双対性は、まったく対称でなくなる可能性がある。
- 層のようなものを使う必要がある。層そのものも使うかも知れないが、コンポジトリ/グリーフかも知れない。さらに別な構造かも知れない。
- 層のようなもの〈sheaf-like object〉を扱うために、圏上の被覆〈cover〉は必須である。被覆構造〈coverage〉を持った圏、つまりsiteが必須。
- site = category with coverage だから、coverage概念が基本。位相的集約も量的集約も、coverageを使って定義されるはずだ。
- コンドルセのパラドックスと言えば、アジェンダセッティングとアジェンダセッターの問題も考える必要がある。
- アジェンダセッターは、非結合的な代数構造になるのではないか。あるいは (a∨b)∨c = a∨(b∨c) が成立しないような非結合的な論理。
- 順序の推移性や、演算の結合性のような性質を整合性と考えると、整合性の成立を邪魔する障害として非自明なコサイクル=非ゼロなコホモロジークラスが現れる、と考えられそう。
- 広義のコンドルセ現象とは、位相的集約/量的集約により、整合性の障害が発生する現象だと言える。
- となると、アジェンダセッティングの概念は、位相的集約/量的集約のなかにエンコードされるはずだ。
- パッヒナー移動による分割の変更による不変性が、双対メッシュから作られた代数系の結合性に対応する。コンドルセ現象が起きるときは、パッヒナー移動の不変性は成立しないだろう。なぜなら、結合性のような整合性が壊れることがコンドルセ現象だから。
- もともとあった整合性が、集約(位相的/量的)によって壊れることが事実・現象なのだが、なぜ?どうして?壊れるのかを知りたい。そして、壊れ方や障害の大きさを計りたい。
サイト〈site〉の訳語を整地圏にする。"site preparation"は「敷地造成」という意味。建物を建てるために土地を整地すること。よって、整地された土地は、site-preparedな状態になうる。形容詞「整地」は「整地された」の意味だとして、site = site-prepared category と考えて整地圏。
整地圏が素の圏〈plain category〉と違うのは、coverageを持つことだが、coverageは被覆機構とする。A∈C ごとに、Cov(A)が付いている。Cov(A)は小さい集合とは限らないが、被覆の集合。被覆自体は、{φi:Ui→A | i∈I} のように具体的に書ける。強いて言えば、Cov:|C|→|SET| (SETは小さくないかも知れない集合の圏)。Φ∈Cov(A) ならば、Φは、Aに向かう射のインデックス族になる。Φ∈Map(I, |C/A|) と言える。
ともかくも、Cが整地圏ならば、Cは被覆の概念を持ち、被覆自体は具体的に記述できる。族と考えた被覆の要素(項目)を範囲〈range〉と呼ぶ。範囲は近傍と呼んでもいいだろうが、「何の近傍か?」に答えるのが面倒だから範囲としておく。ただし、範囲は対象ではなくて射である。被覆は範囲の集まりとは言える。
整地圏が整備された土地だとすると、その上に立てる建物は前層になる。前層自体は素の圏でも定義できるが、整備圏だと、前層が層であるとか、グリーフであるとかの議論ができる。層やグリーフだけでなくて、より一般な集約〈aggregation | gluing〉構造も定義できる。
集約概念を作るに際して、総和構造が参考になると思う。
集約 | 総和 |
---|---|
圏 | 順序集合 |
対象 | 要素 |
射 | 順序比較 |
被覆 | 有界族 |
集約可能性 | 総和可能性 |
集約 | 総和 |
被覆と集約の公理 | 総和の公理 |
総和を持つ順序集合と、被覆機構と集約を持つ圏が対応していると思われる。