バッハ『平均律クラヴィーア曲集』(リヒテル)

最近、相方がクラシックに凝ってます。もともと凝り性の質ではありますが、ついこの前までアークティック・モンキーズやら木村カエラやらロバート・ランドルフやらスガシカオのCDが散乱していたコンポの前を、ラフマニノフバルトークやベートーベンが占領しているのは不思議な感じがします。
さて、
クラシックの一つの楽しみとして、「聞き比べができる」ことがあります。もちろんポップスもジャズも、同じ曲の別ミュージシャンの演奏というのは当然あるけれど、楽譜に忠実に、アレンジも楽器構成も変えない厳密な同一条件の下で、どれだけ異なる音楽を奏でられるか、という比較ができるのはクラシックだけのように思う。
ピアノ好きなので、ほとんどがピアノのソロか協奏曲なのだが、聞き比べてみると、「これが同じ楽器か?」と思うほど音が違うのが分かる。
私はドビュッシーが好きなんですが、「版画」のモニク・アース版とリヒテル版など同じ曲とは思えない。華やかな音の色彩溢れるアースと、どこか懐かしいイメージのリヒテル、どちらが好みかと言われるとリヒテルですね。版画に限らず、この人の音のもっている、人の心の最奥部にすっと入り込んでくる感じに非常に惹かれます。

最近のお気に入りはリヒテルによるバッハの平均律クラヴィーア曲集。これは私がバッハに対して持っていたイメージをがらりと変えてくれました。ものすごく密やかでパーソナルな音楽。相方は「ハンニバルがカッポーニ宮で弾いているみたい」と言ってましたがまさにそのとおりだなあと。実際どこかのお城で録音されたとのことです。