2012-01-03
■「ただの女装っ子で妥協しちゃダメ」は違うと思う。てか「ただの」「妥協」ってなによそれ。
わたしは日本では年末に紅白歌合戦なんてものがあることすら覚えていなかったわけだけど、NHKによるレディ・ガガの曲の字幕翻訳がツイッターで議論になっているのを見かけた。で、なにかおかしいなあと思いつつ放送を見ていないわたしには分からない話だと思って放置していたのだけれど、id:saebouさんがブログでこんなことを書いているのをみかけて、とても驚いた。
動画が消されているので全部の字幕を検証することはできないのだが、途中一番ひどいなと思ったのが"Don't be a drag, just be a queen"を「ぼやいてないでいっそ女王になろう」と訳したところである。英語の映画やテレビドラマを普段から見て英語を勉強している人にはすぐわかると思うのだが、これはdrag queen(女装する男性エンターテイナー、日本語で表記するとドラァグクイーン。男装する女性エンターテイナーはdrag king、ドラァグクイーンのような女装をする女性エンターテイナーはfaux queenとかいう。そもそも男/女をどう区別するかという話はまあここではおいておく)にひっかけたシャレた歌詞で、非常に訳しにくいのだが「ただの女装っ子で妥協しちゃダメ、なるならステキな女王様に」というようなニュアンスであろうと思う。ところがこの訳者はおそらく"drag"に「異性装」の意味があることを知らない。どうも訳者はこれがdrag queenという単語の一部であることがわからなかったようで、苦し紛れの「ぼやいてないで」という翻訳はたぶん「だらだら引っ張る」とか「うんざりする」というようなほうのdragのもうひとつの意味からきている(なんかちゃんと勉強しない学生のテスト答案を採点する先生みたいな思考回路だが)。
「don't be a drag, just be a queen」というのがドラァグクィーンにかけた言葉遊びだというのはその通り。でも、だからといって前半を「ただの女装っ子で妥協しちゃダメ」と解釈してしまうのは、意味としてもニュアンスとしてもまったく違う。違いすぎて最初よく分からなかったくらい全然違う。「don't be a drag」というのは、つまらない奴になるな、つまらないことを言う(する)な、程度の表現。たとえば、みんなで週末どこに遊びに行こう、みたいな話をしているときに、一人だけあそこは混んでいる、あそこは楽しくない、みたいに欠点ばかりあげてみんなの気分を盛り下げている人がいたら、その人に「don't be a drag」と言ったりする。なのにこれを「ただの女装っ子で妥協しちゃダメ」と解釈するのは、saebouさんが「女装っ子」のことを「つまらない奴」だと思っているのでないとすれば、ちょっと理解できない。「ぼやいてないでいっそ女王になろう」というNHKによる訳のほうが、言葉遊びの面白みには欠けているものの、訳としては正しい。
saebouさんは、NHKの訳は「『だらだら引っ張る』とか『うんざりする』というようなほうのdragのもうひとつの意味からきている」のではないか、と推測しているけれども、それはdragの動詞としての意味。ガガの歌詞では冠詞の「a」が付いていることから分かる通り明らかに名詞なので、辞書で名詞としての「drag」を調べてみると、以下のような説明がある。
drag (noun)
2. [ in sing. ] informal a boring or tiresome person or thing: working nine to five can be a drag.
例文の「working nine to five can be a drag」は、「午前九時から午後五時まで働くのって、ちょーしんどい」みたいな感じ。インフォーマルな表現とされていて、確かに硬い出版物ではみかけないけど、会話やネットや軽い雑誌などではよくある普通の言葉。
以上をふまえて「don't be a drag, just be a queen」というのをみると、前半はごく普通の表現で「つまらない奴になるな」って意味。後半はその「drag」にかけて、女王/ドラァグクィーンみたいに自分に自信を持って堂々としようよ(@chicomasakさん風には「ファビュラスにいきましょ」)、と呼びかけていて、そこが言葉遊びになっている。言葉遊びであるという点ではsaebouさんが正しいけれども、前半を無理に複雑に解釈しすぎ。てかそもそも、「ただの女装っ子」の「ただの」って、「妥協」って、それどーゆー意味なんだろうか。
ちょっと検索してみたところ、英語圏でも歌詞のこの部分の解釈に悩んだ人は皆無ではないようで、Yahoo! Answersで意味を聞いている人はいる。でもすぐにわたしが上で説明した通りのごく普通の回答が出て、とくに議論にもならずに終了している。「don't be a drag」という表現を知らない人にとっては混乱するかもしれないけれど、これは全然難解でもなんでもない、ごくありふれた表現を使ってちょっと言葉遊びを入れただけの歌詞。
これだけ解説したのは「ただの女装っ子で妥協しちゃダメ」という明らかに間違った解釈が多くの人にそのまま受け入れられかねないのが嫌だったからだけど、わたしはこの曲のメッセージ自体はあんまり好きじゃない。それは、ゲイやその他の社会的マイノリティの人たちの自己肯定を困難にしている社会的状況を放置したまま自己肯定を呼びかけるのは、単なるネオリベ自己責任論であり、犠牲者非難につながると思うから。わたしは最近、性暴力やドメスティックバイオレンスのサバイバー支援におけるポジティヴ志向や自己肯定感の称揚を批判する「ネガティヴ・サバイバーシップ」というのを提唱しているから、こういう無責任かつ強迫的な自己肯定感の強要はとても気になる。
ガガの歌詞やその他の同種のポップミュージックについては、フェミニスト・ポップカルチャー雑誌Bitchの最新号に掲載された「Raise Your Glass If U R A Firework Who Was Born This Way」(タイトルはPink「Raise Your Glass」、Ke$ha「We R Who We R」、Katy Perry「Firework」、Lady Gaga「Born This Way」から)という記事で詳しく論じられているので、英語が読める方は是非。って思ったけど、そもそも英語が読める人はわたしのこの記事なんて当たり前すぎて最後まで読んでいないという気もw
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2011-09-26
■性暴力における被害者非難(犠牲者非難)の寓話
たぶん何十年も前からあるシナリオ。もっと長いものも含めて、いくつかバリエーションをみかけたことがあるけれど、たまたま手元にあったものを翻訳。
警察官 スミスさん。あなたは一六番街で銃を付きつけられ財布を奪われたというんですね。
スミス その通りです。
警察官 犯人に抵抗しましたか?
スミス いいえ。
警察官 どうしてですか?
スミス 犯人が銃を持っていたからです。
警察官 つまり、あなたは自分の意思で抵抗せずに犯人の言いなりになったわけですね。
スミス そうですが。
警察官 あなたは叫んで助けを求めましたか?
スミス いいえ、犯人が怖かったので。
警察官 なるほど。あなたは過去にも強盗の被害にあったことはありますか?
スミス いいえ。
警察官 でも貧しい人にお金を恵んであげたことはあると。
スミス はい、ありますが。
警察官 それは、自分の意思であげたんですよね。
スミス 何が言いたいんですか?
警察官 こう考えてみましょう。あなたは過去に他人にお金を渡したことがあると。
そればかりか、かなり気前のいい人だと評判ですよ。
自分で強盗されるように犯人を仕向けたとは思いませんか?
スミス ちょっと待ってくださいよ、もしお金を恵みたかったのであれば…
警察官 いや、答えなくていいですよ。で、この事件は何時頃に起きましたか?
スミス たしか午後十一時ころだったと思います。
警察官 そんな時間にあなたは何をやっていたんですか?
スミス ただ家に向かって歩いていただけですが。
警察官 ただ歩いていたって?それがどれだけ危険なことだか、分かるでしょう?
強盗に会うかもしれないとは思わなかったんですか?
スミス とくに考えていませんでした。
警察官 そのときのあなたの服装は?
スミス ええと、スーツを着ていました。
警察官 お金のかかったスーツですか?
スミス えっ?確かにそうですが。
警察官 つまりまとめると、あなたは強盗に目をつけられてもおかしくない服装で、
夜の道を歩いていたと。そういうことですね?
襲ってくれと言っていたようなものだと思いませんか?
まあ、さすがにこれは解説いらないだろうとw
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2011-07-10
■キャサリン・マッキノン、一九九一年の座談会でクラレンス・トーマス最高裁判事を支持する発言
本家ブログでフェミニスト法学者キャサリン・マッキノンの名前が出ているので、それに関連したおまけをこちらに。
ハードドライブの中の古いファイルを整理していて、一九九一年にブッシュ(父)大統領によって最高裁判事に指名された(が、まだ承認されていない時期の)クラレンス・トーマスについての座談会記事を発見。著名なフェミニスト法学者だから呼ばれても別に驚くようなことじゃないけど、キャサリン・マッキノンが座談会に参加していた。掲載誌は、以前わたしがウガンダ「反同性愛法」についての記事を寄稿したこともあるTikkunの一九九一年九月号(目次)。この座談会で、キャサリン・マッキノンは現在の最高裁で一・二を争う超保守派のトーマスについて、次のように発言している。
保守派はたとえばポルノグラフィが引き起こすような、ほんとうの害悪について語ろうとしている。リベラルはその害悪を矮小化し、ポルノ製作者の「表現の自由」として擁護している。女性の経験からは、右翼的な「法と秩序」という路線のほうが、少なくとも女性に対する性暴力の現実を踏まえているという点で、納得がいく。わたしは法律家として、トーマス判事の法廷で議論をしなければいけないかもしれないことに、まったく脅威を感じていない。かれは話がわかる人だと思う。一部の女性団体は、かれの妊娠中絶についての考えを理由として、それほどたいした根拠もなくはじめからトーマスを非難しようとしているが、わたしはそれには反対だ。
その後トーマス判事はセクハラ疑惑で追求を受けながらも上院によって承認され、最高裁判事になったが、それ以来のかれはフェミニストにとってとても「話がわかる」相手ではない。アントニン・スカリア判事とならんで、四人いる保守系判事のなかでもとくに急進的な保守としてことあるごとにフェミニストの怒りを買うような行動を取っているだけでなく、最近では、保守政治活動家から高額のプレゼントを受け取ったり、家族がはじめた政治団体に多額の寄付をしてもらったりしていることも明らかになっている。反「ポルノ・売買春」の価値観を共有しているという一点だけで、こういう極右的な人たちとつるむのはホントどうにかしてほしい。(でも、こういう発言をあんまり紹介したら、保守的な人からは逆に「マッキノンって偉いじゃん!」って反応がありそう。)
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2011-03-01
■性暴力被害者を「無条件で保護する」文化は成立しているか
メールマガジンJapan Mail Mediaのサイトに、バックナンバーとして冷泉彰彦さんの記事「CBS女性記者襲撃事件とアメリカ的フェニミズム」が掲載されている。サイトに掲載されたのは先週だが、わたしはこの記事が某秘密主義MLで紹介された時に読んでおり、それに対してML内でコメントを書いていたのだが、JMMのサイトにも掲載されたのでわたしのコメントを以下に転載する。
まず二番目の問題ですが、まずこの異常なニュースが報道された背景にあるのは、性的暴力の被害者は徹底的に救済・保護するという文化が確立しているということが挙げられます。(中略)この時期からは女性をほぼ無条件で保護する権利が確定しています。判例というだけでなく、社会的な価値観としても明らかです。
そんな文化が確立していれば良いのですが、それはないでしょう。ローガンさんは、そういう文化を確立するのに貢献するため、問題提起するために、あえて普通なら公開されない被害の事実を勇気を出して公開したのであって、すでにそういう文化が確立しているからと気軽に公表したわけではありません。
そもそも、この件がそれだけ話題になり、ローガンさんの勇気がたたえられている(そして、ローガンさんに対する中傷発言が激しく反発をされている)ということが、ローガンさんの行為が「社会的な価値観」を揺るがすものであることを示しています。たとえば男性ニュースアンカーのアンダーソン・クーパーが暴行を受けた件については、勇気を出して公表したと褒める人もいなければ、かれに対して失礼なジョークを言うのもタブーではありません。
筆者は、
勿論、実名での告白を自動的に強制するとか、実名を晒すということは今でも厳格に否定されていますが、本人の自由意志で過去の被害経験を告白することがメンタルな問題解決に役立つのであれば、周囲はそれを受容しなくてはならないし、まして嘲笑したり、疎遠な感じを持ったりすることは近親者であっても厳しく禁じられる、そんな文化が確立しているのです。
と書いていますが、それが「厳しく禁じられる」のは、性暴力被害を公言することが、いまだにタブーだからです。もしほかの犯罪被害と同じように、被害者の「落ち度」が責められるのでもなく、被害者の恥だとか貞操の問題だとかして扱われるのでなければ、ほかの犯罪被害者と同じ程度には(アンダーソン・クーパーに対して「話題作りになって良かったな」と揶揄する人がいて、それが悪趣味だと思われつつも特に反発を浴びない程度には)許容されるはずです。そうでないのは、いまだに性暴力に関して、ほかの暴力や犯罪行為とは別格の、なにか被害者本人の資質や人格にとって汚点となるようなものだとして見る「社会的価値観」が温存されているからです。
すなわち、性暴力の被害者を嘲笑することがことさら咎められるのは、性暴力は特殊な犯罪だという価値観と裏表です。もちろんいまの社会において性暴力が特殊な犯罪として扱われているのは事実なので、ことさら咎める(そうしたものからことさら被害者を保護しようとする)のは悪いことではないでしょう。しかしそれは、被害者保護が社会的価値観として定着しているからではなく、逆にそうした価値観が不十分だからこそ、要請されるものです。もしほんとうに性暴力被害の告発がタブーではない世の中になったならば、クーパーの被害の扱いとローガンさんの被害の扱いは、「程度の違い」程度の問題に落ち着くのではないでしょうか。
2011-02-24
■性的暴行を確実に予防する工夫――効果は保証します!
英語圏ブロゴスフィアで一年とちょっと前くらいに流行った(ていうか紹介されまくった)記事なんだけれど、日本語圏で紹介している人がいないみたいなので紹介。既に紹介されてたらごめん。ソースはNo, Not You。うまい訳をつける自信ないから、文句があったら原文をどうぞ。
*****
Sexual Assault Prevention Tips Guaranteed to Work!
性的暴行を確実に予防する工夫――効果は保証します!
1. Don't put drugs in people's drinks in order to control their behavior.
誰かの行動を支配するために、ほかの人の飲み物に薬を入れるのはやめましょう。
2. When you see someone walking by themselves, leave them alone!
一人で歩いている人を見かけたら、放っておきましょう。
3. If you pull over to help someone with car problems, remember not to assault them!
車が故障して困っている人を助けるときは、暴行しないよう気をつけましょう!
4. NEVER open an unlocked door or window uninvited.
鍵がかかっていないドアや窓を勝手に開けないように。
5. If you are in an elevator and someone else gets in, DON'T ASSAULT THEM!
エレベーターに一人で乗っている時にほかの人が入ってきても、暴行しないように!
6. Remember, people go to laundry to do their laundry, do not attempt to molest someone who is alone in a laundry room.
コインランドリーは洗濯をするところです。一人でコインランドリーにいる人を襲うのはやめましょう。
7. USE THE BUDDY SYSTEM! If you are not able to stop yourself from assaulting people, ask a friend to stay with you while you are in public.
連れの人と一緒に! 一人では暴行を思い止まれないなら、公の場にいるあいだ一緒にいるように友人に頼みましょう。
8. Always be honest with people! Don't pretend to be a caring friend in order to gain the trust of someone you want to assault. Consider telling them you plan to assault them. If you don't communicate your intentions, the other person may take that as a sign that you do not plan to rape them.
常に正直に! 暴行する機会を得るために相手の信用を得ようとして優しい友人の振りはしないように。はっきり「あなたを暴行したいです」と伝えましょう。意思をきちんと伝えなければ、相手はレイプする意図はあなたにはないと誤解するかもしれません。
9. Don't forget: you can't have sex with someone unless they are awake!
起きている人としかセックスできないということをお忘れなく!
10. Carry a whistle! If you are worried you might assault someone "on accident" you can hand it to the person you are with, so they can blow it if you do.
笛を持ち歩きましょう! 意図せず暴行してしまうかもしれないと不安だったら、あなたが暴行しようとしたときに吹けるように、あなたと一緒にいる人に笛を渡しておきましょう。
And, ALWAYS REMEMBER: if you didn't ask permission and then respect the answer the first time, you are committing a crime--no matter how "into it" others appear to be.
もしあなたが(性行為の)許可を得ようとせずに、また相手の答えをを最初から尊重しない場合、どれだけ相手が「望んでいる」ように見えても、あなたは犯罪をおかしているということを一時も忘れずに。
*****
これ、とくに解説しないよ? ツイートとかブクマとかみて必要そうならするけど、必要ないよね?
【追記】
はやくも考えを改めました。ていうか、ツイッターで指摘を受けたのだけれど、文化的な違いがあるので解説しないと通じないかもしれないと。
えっと、解説すると、このリストで挙げられているのは、全部「性暴力の被害を避けるために、女性はこのように行動すべきだ」そして「そんな行動を取ったから被害はあなたの自業自得だ」というような、女性に投げかけられる性暴力言説をひっくり返したものです。たとえば8番なら、「曖昧な態度をとって相手をその気にさせるから襲われるんだ、もっとはっきり意図を伝えなければいけない」みたいな。
もちろん、曖昧な態度で相手をその気にさせてあとでがっかりさせるのは、かわいそうだし気を付けようね、ということなら、分からないでもないよ。でも「性暴力の被害を避けるために」気を付けなくちゃいけないというのは、なにか違う。人間関係でいろいろ気をつけるべきことはあると思うけど、それと性暴力が結び付けられて語られたり、被害者のほうに落ち度があるかのように言われるのは、ひどいと思う。
とにかく、このリストは実際に加害者になりかねない人に対するアドバイスを行っているわけではなくて、「被害を避けるために」という口実のもと、女性の行動をあれこれ制限したり、被害者に性暴力の責任をかぶせたりするような「よくある性暴力予防のアドバイス」を告発するために書かれたもの。
個別の項目に関しては、日本でよく言われることと違っているかもしれないけれども、こうした「アドバイス」が女性に押し付けられているという点は同じだと思う。日本のみなさん、これを参考に日本版をつくりませんか?
2010-12-03
■女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?(4)
前エントリで上野千鶴子さんへの返答その1とその2を掲載したけれども、そのあいだにあったのが、以下のポスト。上野さんが「憶測ばかりだ」と言うから、だったら具体的な話を出そうと元スタッフの体験談を出したら、上野さんはさらに怒ってしまったという結果に。元スタッフの方の承諾も得たので、固有名詞を伏せたうえで、以下に掲載します。文中Aさん、Bさんとなっているのは、雇用者側の二人。
ちなみに、この体験談をシェアしてくれた元スタッフの方は、ML上で自身の体験について発言された方とも、山口智美さんが言及されている山口さんの友人とも、また別の方です。ここに書かれているようなことは、一人や二人の元スタッフが言っていることではないということ。
こんにちは、みなさま。
おまえの話は憶測ばかりでけしからん、という声もありましたので(てかー、わたしは気を使ってわざとはっきり書かないでおいただけなんですけどー)、********/****総合法律事務所の元スタッフだった方に、匿名で投稿するという条件で、****勤務の経験について具体的に書いてもらいました。
ただし、雇用者側のAさんやBさんを個人として貶めることが目的ではないので、個人的な印象や性格にまつわるエピソードなどは、その元スタッフの了承を得た上で、わたしの判断で省きました。
わたし自身、Aさんのことは十年以上前から存じており、他人にも厳しいが自分にまず一番厳しい、正義感のとても強い方だと思っていたので、元スタッフの体験談を聞いて驚きの連続ですし、ここまでのやりとりで何の反応もないということに、やや失望しています。
以下は、いただいた体験談(箇条書き)です。また、わたしが出した11項目の質問にも答えていただいたので、その回答も掲載します。
<元スタッフの体験談>
・勤務時間は10時〜19時だが、定時にあがったためしはない。「今日は予定があるので定時であがりたい」と伝えると、「私たちはこんなに忙しいのになぜスタッフが早くあがれるのか!」と言われた。「今日中に仕上げなければならない仕事」が毎日多すぎる。雇用者は事務所から歩いて帰宅できるので下手すれば徹夜仕事になりそうだが、さいわい事務所の入っているビル自体が0時で閉まるのでそうならずに済んでいる。それでもスタッフが終電で帰るのはほぼ当たり前状態。電車がなくなったら雇用者宅へ泊まればいいというが冗談じゃない。
・たびたびBさんより手製の弁当を売りつけられる。200円〜300円程度だが、おかげで昼休みも事務所から離れられない。
・給与明細には合計の振込給与額のみが記載され、基本給、残業手当ほか諸手当、保険などの天引き額は一切記載されていなかった。これではまったく明細ではない。というか採用面接の際にも、残業規定や諸手当、保険などの説明が一切なかった。
・とにかく仕事かかえすぎ。法律事務だけならまだしも、活動系のお金にならない仕事がハードすぎ。国際会議にかけるための資料づくりやリサーチ、翻訳出版、海外ゲストのアテンド、****主催イベントの準備と運営などなど。
・法律事務所の仕事はクライアントの人生を左右するものなので、わずかなミスも許されないのは当然だが、雇用者でありながらスタッフのミスに対して被害者的立場から責め立てる。いくら人手が足りないとはいえ、そもそもそんな重要な仕事を入りたての不慣れなスタッフに任せること自体が間違い。致命的ミスが起こる原因をつくっているのは雇用者側なのに、ミスするのはスタッフ個人の力量/能力の問題としてシステムの改善を行わないから人員流出を避けられない。
・聞いた話だが、数年ほど勤めた優秀なスタッフがおり、何度か昇給して雇用者の信頼を充分に得ていたものとみられていたが、あるとき仕事上のトラブルが起こったところ、雇用者ふたりはそのスタッフを猛烈に責め立て、耐えきれなくなったスタッフが結局仕事を辞めることになったという。スタッフとの信頼関係つくれなさすぎ。双方とも不幸。
・スタッフの仕事の範囲が不明瞭すぎる。明らかに業務とは異なる、雇用者のプライベートな用事まで発注する。しかし、プライベートな用事を頼むときや機嫌のいいときは友だち同士みたいな親しげなアプローチをとってくるので始末が悪い。(Aさんは*****の資格も持っており、定期的に講習DVDが送られてきて、講義のなかに出てくるキーワードを書き留めて先方に送らなければ履修を認められないのですが、その作業をスタッフに振ります。アクセサリーの修理手配やクリーニングに出した洋服の引き取りをさせられたひともいます。)
・事務所内のトラブルに関してはつねにAさんが被害者でBさんは支援者のスタンス、スタッフは加害者扱いである。Aさんは遠くから激しい口調でスタッフをののしり(決して顔は合わせない)、BさんはAさんの味方であることをアピールしつつ、Aさんの言い分や思いをスタッフに伝える役割を担っている。
<11項目の質問と回答>
1)募集広告では常勤スタッフを募集とされていますが、実際の労働時間は一日あるいは週どれくらいでしたか?
1日につき10〜13時間。終業定時は19時ですが、実際は21時にあがれればマシなほう。
2)法定労働時間(一日八時間、週四十時間)を超える労働はありましたか?
ありました。
3)法定労働時間を超える労働について、勤務規定に明記されていましたか? 残業手当の割り増しはもらえましたか?
勤務規定を見たことがありません。給与明細の支払い総額は基本給プラスαでしたが、αの内訳は不明(明細に記載なし)。
4)勤務中に、昼休みなど職場から完全に自由に行動できる休憩時間はどれだけ与えられていましたか?
名目上は1時間。しかし、雇用者ふたりがご飯も食べずに仕事をしているのを見ると、スタッフだけ休憩をとるわけにはいかないという空気を感じると思います。
5)厚生年金、健康保険には加入できましたか?
いいえ。
6)雇用保険には加入できましたか?
いいえ。
7)労災保険には加入できましたか?
いいえ。
8)年次有給休暇はありましたか? 実際に有給休暇を取得・行使できましたか?
いいえ。
9)産休の制度はありましたか? 実際に休暇を取ることができましたか?
わかりません。
10)育児・介護休暇の制度はありましたか? 実際に休暇を取ることができましたか?
わかりません。
11)****サイトの求人広告では「自営業的に仕事ができる方」が募集されていますが、自営業的な仕事とはどういう意味か分かりますか?
意味がわかりません。自営業的に仕事ができるならだれかに雇われる必要はないと思います。
<以上>

