日曜の「よみうり堂」から
恒例の読書委員(評者)による「今年の3冊と理由」が面白かった。
やはり,私には町田康氏の文章は合わない。同じスペースで「,」ばかり*1だと私は思う。
■町田 康 作家,パンク歌手
①笙野頼子 『一,二,三,死,今日を生きよう!成田参拝』
②中原昌也 『名もなき孤児たちの墓』
③松本圭二 『アストロノート』
多くの人がまともだと思っていることがもうまともではないということが結果として現れていて,
だから別のまともを考えなければならないのだけれども,そういうことをまともに考えると,あい
つはまともではない,と排除されて,でもそのまとも自体がもう駄目なまともなんだけどね,と小
声で言いながらも,そうしないと仕方ないのでまともなことを考えようとする。そのまともな言葉
はでも,自分をまともと信じて疑わない鈍感な人の言葉なんかには比べようなくキュートなんだけ
どね。(2006.12.24・日曜 読売朝刊より 引用)
『ダカーポ』の「20071/3・17合併号・今年最高!の本」に,『ざらざら』と『真鶴』が
とりあげられている川上 弘美氏と比べるのは嫌味みたいだが・・・。
■川上 弘美 作家
①吉井由吉 『辻』
②黒井千次 『一日 夢の柵』
③藤原新也 『黄泉の犬』
身体を自分が持っているということをはっきりと自覚したのは小学生の頃だったか。中空に浮か
んだ自分の意識が「あっ,そこに私の身体がある」と得心して驚いたのだった。都市の中でひとま
ず息災に生きていると,しばしば自分の身体のことを忘れる。怖いことだ。挙げたものはどれも身
体が「そこにある」ことを強く思いださせる尤なる作品だった。それぞれに書きようは全く異なる
のだが。
四つめになってしまうが,伊井直行著『青猫家族輾転録』も,たいそう惹かれた小説だった。
(2006.12.24・日曜 読売朝刊より 引用)
文体が違うのだから,比べるのもむべなるかな・・・。
読書委員の1年を語る数行にもオモシロイ。
◆川上弘美 4冊が出ました。『夜の公園』と『ざらざら』『ハヅキさんのこと』,最新刊は『真鶴』
です。最近なぜか鉛筆が大好きになりました。数独のおかげか?(2006.12.24・日曜 読売朝刊より 引用)
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群ようこ『かもめ食堂』の映画ロケにまつわる旅エッセイ。
■小泉今日子 女優
(中略)③女優,片桐はいりさんのエッセーのテーマは旅。たった一人で見知らぬ街をずんずん歩く
片桐さんの,カッコイイ旅人っぷりに,私の心まで開放されるよう。3冊とも思い出や記憶がどんな
に大切なことかを教えてくれました。(2006.12.24・日曜 読売朝刊より 引用)
『私のマトカ』は,映画『かもめ食堂』*3のロケ旅エッセー。
フィンランド贔屓の私には,懐かしくも,面白いエッセーだった。
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「私と20世紀クロニクル・番外編」より
読売に連載された,ドナルド・キーン氏の「クロニクル」。
知っていたが一度も読まなかった。
が,24日の「番外編」の見出しがとても気になった。
「思い出そうとしない方がいいのだ」 連載を終えて
(2006.12.24・日曜 読売朝刊より 引用)
20世紀の記憶を辿って来た筆者が,最後に「思い出そうとしない方がいい」とは,
何とも引きつけられる見出しではないか・・・*1。
(中略)
それでも連載が終わってみると,後悔の念に駆られた。私は,読者が特に関心があったかもしれない
幾つかの体験に触れなかった。それ以上に,私の人生で重要な役割を演じて私の自叙伝に登場して然る
べき多くの人々に言及しなかったことが悔やまれてならなかった。彼らは,連載に登場した人々ほど自
分が重要に思われていないのだろうかと疑ったり,すでに亡くなっていたとしたら,その家族が同じよ
うな思いを抱くかもしれない。私に答えられるのは次のことだけで,いざ「クロニクル」を書き始めて
みたら,自分が書こうとしているのは,次から次へと「鎖」のように繋がっている一連の体験だという
ことに気づいたのだった。(後略)(2006.12.24・日曜 読売朝刊より 引用)
悔恨の念とその潔い告白。さらに,連鎖にたとえられた一連の人生体験。
読んでおいたほうが良かったかな?といささか,悔やまれた。
多分,本になるだろう。その時,改めて読んでみたいと思う。
ただ,この日の文章がどういう形になって載るのかはわからないので,保存しておきたい。
さらに,最後に続く文章は,ブログや日記を書く事,記録を残す事を「改めて考える」きっかけに
なった。念頭に置いておきたいと思った*2。
この連載の読者の中には,私が昔のことをよく覚えていると誉めてくれる人々もいる。逆に私は,
自分がよくも忘れてしまったものだと思っている。最近,古い写真を取り出す機会があった。どの
写真にも私の隣に数人が立っていて,私と一緒にカメラに向かって笑いかけている。私はその場所
も,その人々が誰かも覚えていない。何か手掛かりはないかとその写真が撮影された国を明らかに
してくれるもの----例えば,後ろの壁に外国語で書かれている文字を探す。結局何も思い出せなく
て,そこには説明書きのない写真だけが残る。
自分が日記をつけていなかったことを,残念に思うことがよくある。日記があれば,過去の多く
のことを思い出す手掛かりとなったに違いない。しかし,いっそのこと忘れてしまった方がいいの
かもしれない。もしすべてを覚えていたら,子供のころに私を怖がらせたものや,学校で嫌いだっ
た先生のこと,私を裏切ったと思った友達や,こっちが愛しているのに向こうが愛していなかった
人々のことを思い出すだろう。そう,たぶん思い出そうとしない方がいいのだ。この「クロニクル」
が抱えている数々の欠陥にもかかわらず,一人の人間がいかに幸せな人生を過ごしてきたかという
ことさえわかっていただければ,私は本望である。(2006.12.24・日曜 読売朝刊より 引用)
P.K.ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が原作として
製作された映画『ブレードランナー』の中で,レプリカント達は,寿命が
数年しかない為に,作られた記憶にすがるかのように写真や見てきた事を
大事にしていた。
”記憶”・”記録”・”思い出”。それらは,人々の生きてきた証。
嫌な思い出も,時の経過と共に,”あれもいい思い出”なる言葉に変容していく。
しかし,逆に考えると,忘却の彼方にある幾ばくかの思い出には,「たわわと茂った枝葉が
青々としていた頃」があるという事なのだろう。
12/23に”3年目宣言”をした私にとって,この1年の日記は,どのような枝葉が茂り,
そして,未来には,何枚の葉っぱが残っているのだろう・・・。
←「木の葉(銀杏)に銀メッキをしたもの*3」
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
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*1:一面全部を別頁に引用するだけの時間もないので抜粋する。しかし,それによって,「誤解が生じないといいなぁ」と切に願う。私の抜粋引用を読んで気になる方は,全文を”検索サイト”ででも探して読んでいただきたいと思います
*2:私は,職場での同僚の発言・動作・環境等をかなり克明?に記憶しているらしく,再現ビデオの様に話をすることがある。仲間から”よく覚えているな”と感心,嫌な顔をされたり,逆に,”あれはどこにあったっけ?”と尋ねられる事も多い。その為,嫌な事も忘れない,忘れようにも消えない。これも実に辛い事である。”心の風邪”の原因の一因かもとも思ったりする。ただ,寄る年波には勝てないのか,少しずつ忘れる事や勘違いも増えてきて嬉しいが,それが近日の事だと,”痴呆?”と不安が募ることがある
*3:高校時代,テレビ「みんなの科学」で放送していたレシピを持って化学の教師の処に行くと,放課後,実験させてくれた。アンモニアの匂いは凄かったが,黒い液体の入ったビーカーが見る間に銀色に鏡になる様子は驚異だった
友人からもらった”文具立て”
教育畑の友人から送られた「立体周期表」型文具立て。
←陶器製の3つの容器。それぞれが,原子を分類している。
←土台の皿
←裏は「クラーク数」
←裏には凡例
id:doubletさんが,ご覧になられたら,驚かれるかな(笑)?
少しずつ,荷物が開け放たれているが,置く場所・片づけには至っていない。
倉庫と化している,ある部屋の荷物を移動して使えるようにしなくては・・・。