クリンク・レコードからマギー・メイの『12時のむこうに〜アンソロジー 1969−1975』が出ている。今までどうして出なかったのかなと思うくらいの仕上がり。アルフィーの坂崎幸之助が『坂崎幸之助のJ‐POPスクール』(岩波書店)で推しまくっていたという記憶があるけれど、CD化されることはなかった。その本も2003年に出たから13年も経っているとは。
なぜかLPも中古市場にあまり出てこなかったから、本当に売れなかったのかも。アルフィー同様、ガロ・フォロワーのグループ。ガロのファーストやサードにあるCSN的部分を引っ張ってきた感じ。音を聴くだけで微笑ましい。他にも日本の70年代B級バンド(失礼!)でCDになっていないものはまだ結構あるような。坂田修がいた宿屋の飯盛とか、初期RCフォロワーの藁人形と五寸釘とか、田舎芝居とか。結構好きでLPを聴いている。やっぱり大ヒットが出るかどうかは大きかったのかな。BUZZなんかは特大ヒットがあるから知名度で生き残れる。
ビートルズ・チルドレン世代のフォークやロックは、戦後の経済成長とパラレルになったある種の成功物語がある。とりわけポップ・マインド溢れる洋楽系の人たちは70年代初頭のフォークの時代にうまく乗れなかった人が多いから。うまく乗れたせいでおかしくなってしまったガロの失速もある。ガロはむしろ後年、後期のアルバムが評価されたり。斉藤哲夫にしてもフォークからポップに展開して、過渡期もありつつ今の君はピカピカに辿り着いて行った。大滝詠一もそう。エレックからコロンビアに行ってアルバム乱発していた時期は、どう考えてもどん底だったはず。ロング・バケイションが起死回生の一発になったけれど、当時業界からは信用を失い見放されていたみたいだし。レッツオンドアゲイン、じゃ見放されても仕方ないかもしれないけれど!
そう思うとマギー・メイの実川俊晴の場合は、キテレツ大百科のテーマ、あんしんパパ名義で出した「はじめてのチュウ」がその成功物語に当たるのかな。ただ、匿名化されていたから、評価が遅れたのだろう。SMAP木村拓哉がかなりしつこくレスペクトして自身の番組に出したりしていたのは、美川憲一におけるコロッケのようにカナリ効果があった気がする。渋谷系的ディグ精神。
実川俊名義のソロも続けてCD化されるのだろうか。期待。1979年の『ふりむけば50億』は本当にすばらしい作品。当時売れなかったのもよくわかるけれど(手元にあるのもサンプル盤だし)、それは大滝詠一の『ナイアガラ・カレンダー』が1978年にバカ売れし得なかったのと同じ理由だと思う。バックのセッションメンも一流、完成度の高い楽曲もポップスの玉手箱的で、大滝のポップ・センスに相当近いものを感じる。というか声が荒木和作とソックリ、というのが、大滝色を感じさせる部分かもしれない。歌詞の世界も1980年代的感性に足を突っ込んでいて、トータリティもばっちり。