うまくいかないニツポンの外交

うまくいかないニツポンの外交


イデオロギー的な制約でもある外交上のある種の反応の鈍さが、ニツポンの首相アベ・シンゾを袋小路に導いた。この袋小路は、国際的な舞台においてニツポンを孤立させ、巧みな方向転換を余儀なくさせた。例えばロシアに対しては、彼はウラジオストクで行われたオリエント経済フォーラムにあたって同国を9月10日から13日まで訪問しているが、これは彼にとってある種混乱の結果に終わった。10日に彼は、通商、ロシア政府の統治下にあるがニツポンがその帰属を主張している北方領土、平和協定について改めて話し合うべく、2012年の彼の政権復帰以来22回目となるウラジミル・プーチンとの会談を行っている。その2日後にはプーチン氏は、「年末までに無条件で平和条約を結ぶ」ことを提案して、彼を驚きのあまりニヤニヤさせた。ニツポン政府は、いかなる平和協定にあたっても領土問題の解決が前提となるとして、この提案を拒絶した。

このロシア戦略が、野党とニツポンの報道によって厳しく批判され、アベ氏はは危ういものとなることにもなった。彼の前任者たちは、あらゆる援助協定に先立って領土交渉の解決を強調している。アベ氏は、第二次世界大戦終結に始まるこの紛争に関して、プーチン氏から譲歩を引き出せるのではないかとして、経済交流を強調している。彼は、ロシアのウクライナへの軍事介入やスクリパリ氏の事件に対する非難にも同調することを避けている。

アベ・シンゾは一連の北朝鮮案件にも土を掛けている。朝鮮半島における緊張は2018年の始めから弱まった。6月に北朝鮮の指導者キム・ジョンウンドナルド・トランプと会談している。しかしいまだにアベ政府は蚊帳の外で、北朝鮮政府に対する強固な立場に凝り固まっている。「アベ氏の頑固さにはもはや合衆国も韓国も同意していない」と高崎経済大学助教授のミマキ・セイコは悔やむ。従来からのアメリカのこの同盟国とは、関係はもはやアベ氏が機嫌を取り続けるほどウマが合っていない。実際のところトランプ氏は、ニツポンの首相には相談せず北朝鮮問題について進めている。さらに彼は、ニツポンに対して貿易上の脅しをかけており、この唯一の「同盟国」はこれによって3月から無抵抗に鉄・アルミニウムに課税されることとなった。

この苦境は、2013年にジャカルタで行った演説に従ってニツポンの外交を変容させようとするアベ氏の意図を分かりにくいものとしている。ミマキ・セイコは、彼の目的は、1946年から1947年、および1948年から1954年に首相に在任したヨシダ・シゲル(1878-1967)の名をとった「ヨシダ・ドクトリン」を置き換えることだと強調する。このドクトリンが「冷戦以来の日本の外交を特徴づけているのです。それは、防衛問題をアメリカにすっかり託してしまって、経済成長を優先しています」。

アベ・シンゾは、経済交流のみならず、「平和への積極的な寄与」のような「価値」の強化も同様に強く推奨し、ニツポンを「正常な」国にすることを望んでいる。彼は自衛隊の介入範囲を拡大しており、平和憲法を改定しようとしている。彼は防衛予算を増やし、自由貿易を促進している。ノースカロライナ大学の国際関係学准教授カタダ・サオリは、彼は「ニツポンがステータスを維持していけるような、国際的な規範や体制を守ろう」と躍起にもなっていると指摘する。


国家主義的な確信
しかしながら、確立された図式、つまり何よりも合衆国との硬い絆と、インドやオーストラリア、ASEAN諸国、そしてある意味でロシアとの関係を強化する「インド-太平洋協力」のコンセプトを通じた中国との堤防とを護ることが必要となるという二面性を脱するために苦労している。彼の選択は、時に明治時代に流行した「脱亜入欧」を思い起こさせる。

国家主義者、いわば歴史修正主義者としてのその確信によって狭められ、その関心を憲法改定に集中しているアベ氏は、北方領土とか拉致被害者のような案件に専念している。上智大学政治学者ナカノ・コイシは、東アジアにおける彼のこれらの問題を「いわゆる"慰安婦"(前大戦中の皇軍のための売春の強制で、一部のニツポンの国家主義者たちが反論しているもの)に対する彼のイデオロギー的な立場に配慮して、韓国と誠実な関係を築けない」ことによるとしている。ナカノ教授にとっては、韓国政府は「中国の勢力拡大と北朝鮮の脅威に対する合衆国の後退に立ち向かって」もいるのだから、アベ氏はその関係を築かなければならないのである。ナカノ氏は、「東アジアにおけるニツポンの地位が避け難く衰えつつある」まさにこの時に、「すべてうまくいくだろうという目論見から、合衆国に時間とエネルギーを賭けてしまった」選択も批判する。

孤立するリスクに直面し、アベ氏は変化を余儀なくされたようだ。北朝鮮に関しては、韓国とアメリカ政府には「経済制裁北朝鮮における人道的援助を続ける、もしくは減額する」という役割を演じてくれないかなという意図があり、それに付け入る形で交渉に復帰し始めるのかもしれない、とジョンス・ホプキンス大学のマツモト・アスカは指摘する。もしくは北朝鮮の核放棄の検証に参加することによって。アベ氏はキム・ジョンウンとの首脳会談を希望しており、それは10月で検討されている。9月10日には北朝鮮政府に経済援助を提案している。カタダ准教授は、アベ氏によって新たに示された「プラグマティズム」を挙げており、それは「ニツポンがトランプのアメリ外交政策から距離を置き、より積極的に中国に関与」し始めることである。この中国への関与によって、各方面との関係は著明に改善する。
(Le Monde紙 2018年9月21日)