一日一言「心のうちが自分」
十二月十八日 心のうちが自分
外に出てみると、最新流行の晴れやかな衣装をつけた紳士や淑女が行き交うのに逢う。そこで、自分の格好はと鏡に映して恥ずかしいと思ったなら、少し反省してみるがよい。着物も自分ではない、毛皮も自分ではない、ただ心のうちだけが自分であることを。
我が姿醜かりとて恥ぢなせそ
こゝろ言葉を清く持てれば
みめあしく姿に花は咲かずとも
心に実をば結べ世の人
安吾センセにも曰く、
見たところのスマートだけでは、真に美なる物とはなり得ない。すべては、実質の問題だ。美しさのための美しさは素直でなく、結局、本当の物ではないのである。要するに、空虚なのだ。そうして、空虚なものは、その真実のものによって人を打つことは決してなく、詮ずるところ、有っても無くても構わない代物である。
日本文化私観―坂口安吾エッセイ選 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
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