わたしと明日のおしゃれなカンケイ

スタイリスト&エッセイストの中村のんの日々、印象に残った出来事。

「原宿」をこよなく愛するドイツ人のヤーナさんの取材を受けました。

先月末、東急プラザ表参道の『OMOHARA写真展』の会場で、私の顔を見るなり、パッと顔を輝かせた外国人の女性と出会いました。「もしかして…」と話しかけられ、「はい、中村のんです」と答えたら、大感激してくださいました。

ヤーナさんは社会学者で、「原宿」を研究テーマにされているそう。
友達から写真集『70’HARAJUKU』を教えられたときには狂喜したそうで、その著者である私に偶然会えたことをものすごく喜んでくださり、私も嬉しくて、何度も握手し合いました。

名刺を交換し合い、後日、ヤーナさんからメールで取材を申し込まれ、昨日、ヤーナさんとお会いしました。
まずは、ヤーナさんが持参された1973年に刊行された原宿特集のアンアンに感激して見入ってしまいました。
中野や神田の古本屋、国会図書館などにも行って、古い原宿の資料を探し回っているそう。

HELP!、BIGIのネオン、バズショップ、等々、懐かしすぎる!

※左下はベルボトム姿の菊池武夫さん。今、見てもカッコイイ!


ティーンエイジャーだった私がワクワクしながらくまなく見ていたページを、80年代生まれのドイツ人のヤーナさんが同じようにワクワクしながら読んでいることが面白いです。「ここに出ているショップをリアルに見ていたことが羨ましいです」と言われました。

このアンアンの表紙になっているマギー・ミネンコは、「70’HARAJUKU」の中でもレオンの店内にいる写真があるのよ、と見せました。

私が取材される側だったはずが、ドイツ人のヤーナさんが、なぜそれほどまでに原宿に興味があるのか、ドイツのファッション事情はどんな風なのか、逆に私が取材しまくってしまいました(笑)

おばあさまがKENZOの服などを置いてるセレクトショップをやられていて、子どものときから服が大好きだったヤーナさんが原宿に興味を持ったのは15歳のとき。
青木正一さんが作られている雑誌「FRUITS」を見たのがきっかけで、
遠く離れたドイツのデュッセルドルフからずっと原宿に憧れていて、念願かなって初めて訪れたのは2006年だったそう。

「ドイツにも日本と同じように、グッチやディオールといったラグジュアリーブランドが並んだ通りはあります。でも、そこで買い物するのはごく一部のお金持ちだけです。
郊外にはZARAやH&Mといったファストファッションが入ったショッピングモールもあります。どこの国にもある同じような感じです。
若い人たちのほとんどはファストファッションを着ていますが、ドイツ人は着るものにお金をかけないので、ZARAでも高いと言っています」

「日本には、ラグジュアリーブランドでもないファストファッションでもないミドルがたくさんあって、そこが素晴らしい」とヤーナさんは言います。

「ドイツでは『ファッションが大好き』というと、それは…えーと、日本語だとなんていえばいいのでしょう」と言って、ヤーナさんがスマホの辞書を示すと、そこには「軽薄。うわべ」という日本語が書いてありました。
「ファッションが大好きというと、自分の表面のことしか考えていない人と思われるような、そのような傾向があります」と。

そこで私は、先日、ドイツを取材したNHKのドキュメンタリー「ラスト・ドライブ」の中にでてきたドイツの家庭や病院やホスピスのインテリアがどれもこれも素敵だったことを話しました。
「そうですね、ドイツ人は、インテリアやガーデンにはお金をかけます。日本人みたいに何度も引越しをしたりもしないし、自分の国を作るような気持ちで、気に行った絵を飾ったり、部屋に合った家具をオーダーしたりして、居心地のいい部屋にすることには熱心です。
外食もバースデーとか特別なときだけで、基本的に、友達と集まるのも誰かの家であることがほとんどです。
ドイツで60㎡の部屋が借りれる家賃で、東京で借りれる部屋は8㎡くらいなのではないでしょうか」と言うヤーナさん。

「ドイツには若いデザイナーはいないのですか?」という私の質問に
「もちろんいます。でも、そういうショップは、たとえばある街に一件、別の街に一件、という感じで、その店を目的にその街に行くという感じなのです。
原宿はひとつの街に若い人向けのショップがこんなにたくさん集まってて、毎週来て、一日中いてもちっとも飽きない。本当に楽しい街です」と。

ヤーナさんは、ファッションの街として誕生したばかりの70年代の原宿にとても興味を持っていて、色んなことを私に質問して、メモしまくっていました。
「どうして、原宿が若者の街、ファッション街として、こんなに発展したのか、とても興味があります」と言い、
「でも、私が来始めたこの10年の間にも原宿はずいぶん変わりました。外国人観光客の数がものすごく増えた原宿が、これからどう発展してゆくのか、そのこともも興味があります」とも。

日本のファッション関係者も口々に言いますが、ヤーナさんも
「以前みたいに個性的なファッションの若い人たちを見かけなくなりました。みんなおとなしく普通になってきた」と言っていましたが
それでも、キャットストリートのショップに入って、店員さんと話すのは楽しく、ドイツからくる友達も、ドイツでは奇異に見られるファッションでも原宿では堂々と楽しめることを喜んでいると言います。

「とても素敵」と思っている原宿駅舎が建て替えでどうなるのか、ヤーナさんも心配していました。
「東京駅みたいにして欲しいですね」と言い合いました。
原宿に憧れて外国から来る人たちのためにも、原宿駅、素敵な駅にして欲しいと切に思います。

原宿の話題で終始した、ヤーナさんとの時間、楽しかった!