サーヤの実家の前庭で。

nanashima01222005-11-17

昨日、一昨日と比べると今日は少し暖かかった。
夕方から北の丸公園内のサイエンスホールで『大停電の夜に』の夫婦限定試写会(何の意味があるのだろうか?)があるので、早めに家を出て、宮内庁三の丸尚蔵館へ。平川門から皇居東御苑を尚蔵館へ向かってぶらぶら歩いていると、ここが東京とは思えないような静けさと緑。この静けさと緑とチリ一つ落ちていない清々しさを守る為に、ディズニーランドばりに清掃員&庭師&警備員たちが一瞬の休みもなく働いている。違いは、ここには一般の人が殆ど歩いていないこと。でも、死にもの狂いで落ち葉を掻き集めているおじさんたちにはそんなこと関係ないね。そういえば、サーヤの帝國ホテルの結婚式を「質素」と言って誉めているつもりのTVのコメンテーターが二人もいたけど、彼等だったらこの手のかかった庭園を見ても「質素」と言いかねないな。

そうか、サーヤが結婚して、ここはもうサーヤの実家と呼ばれる場所になったんだよね〜ここは前庭に当たるってことかしら〜サーヤはスーパーで買い物したことないらしいけど36歳にして初体験がわんさかあって、これから毎日面白いだろうな〜もうアニメオタク趣味だって誰憚ることなく全開かな〜、でもあのダンナってどうよ?などと下らないことを考えつつ行くと、こじんまりとした尚蔵館に着いた。

今日みたのは、「やまとうたー美のこころ」という『古今和歌集』成立1100年『新古今和歌集』成立800年を記念する展覧会。
古びて美しい和紙に、読めないけれど美しいということははっきり分かる筆跡で書かれたたくさんの和歌。それにしても、紀貫之の「やまとうたは、人の心を種として、よろずの言の葉とぞなれりける。世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふことを、見るもの聞くものにつけて、言い出せるなり。」という『古今和歌集』序文冒頭の文は、今でもばっちりそのまま伝わるのがすごい。

笑ったのは、桃山時代(16〜17世紀)の智仁親王というからにはプリンスなんだろうね、この人がサラサラ〜っと書いたような古歌屏風もびっくりするくらい美しいのだけれど、何といっても『三十六歌仙絵入冊子』の絵!絵というより、似顔絵なんだけど(笑)ある人物の顔が“三笠宮”にそっくり生き写しなのであった。ホントに血がつながってるよ、、、と奇しくも最近女系天皇に反対しているという三笠宮殿下の顔を思い浮かべてしまいました。

平川門はもう閉まる、と言われ大手門から出て、今度は国立近代美術館までポクポク歩いていく。目的は所蔵作品展の岸田劉生の特集〜♪劉生といえば麗子。子供の頃、美術の教科書に載っていた麗子像を見ただけで夢でうなされそうだった。でも、麗子像って、いくつもあって、微妙に全部違っていて、怖いのを我慢してよーく見るとけっこう可愛かったりすることが分かってきてから妙に好きになった。決定的だったのは麗子が父劉生のことを愛情込めて書いた本(『父岸田劉生』岸田麗子/雪華社)を読んでから。今回展示されているのは麗子像のなかでも、一番最初に描かれた、五歳の麗子。まだ、あのトレードマークのおかっぱ頭でもなく、目もぱっちり、薄笑いもなしの麗子。赤まんまを指にぽっちり持って、強く光るつぶらな瞳でこちらを見ている麗子は、内側から生命力で輝いているみたい。この子が成長して、自分を描いた画家の父親を敬慕する素晴らしい本を書くんだなぁ、と思いながら見ていると全然飽きないのでした。自画像や“切り通し”もあり、他にも家族に宛てた葉書きや、麗子の写真帖など、貴重な資料も展示されていて、もう大満足。隣の展示室には、劉生の弟子や裏切られた元親友の絵が、近代日本の美術という枠で展示されていたのも、時空を超えた何かが感じられちょっとゾーッとしてきた。その展示室の片隅には、麗子が「父は晩年を軽視されすぎ、研究されていない」と憤っていた通り、晩年に劉生が描いた美しい日本画「冬瓜と茄子」「にんじん」が、ろくな説明もなく展示されていたのも印象的だった。

和歌と麗子で満腹状態になりつつ、サイエンスホールへと向かう。『大停電の夜に』の試写会。
(以下、ネタバレがあります」)


音楽が菊地成孔という点に大期待で観始め、途中眠くなったり、おぉ!スーパージャイアンツ・宇津井健は一生大根だなー、でも森光子を見習って長生きさえすりゃ勲章もらえるかもよーなどと考えたりしながら観終わる。デート映画にしては、登場するカップル・夫婦のぜーんぶが相手を騙しながら暮らしてて、そのことで疲れ果てている、というヘンな映画だったな。最後は「やっぱ、不倫相手とは別れて、家庭に戻ってほどほどに幸せになろうよ」という終わり方で、、、え!それで、夫婦限定試写会だったのか?!夫婦で感想を述べ合いながらポクポク帰る。あ、肝心の菊地成孔の音楽は、想像以上にばっちりと「映画音楽」になっていて、全体の作りも、個々のオリジナル曲も良かったのでした。良かった♪