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わが偏愛的艶歌痴話2 奥村愛子

いっさいがっさい いっさいがっさい (CCCD) 蝶 (CCCD)
冬の光 (CCCD) 万華鏡 恋したいハート
虹色ナミダ
レトロ系というか懐かし系というか昭和歌謡系とでもいえる方向があって、
クレイジーケンバンド大西ユカリと新世界などが代表格だろうが、その方向での偏愛と
いうとこの人にとどめを刺す。奥村愛子。03年にインディーズで『いっさいがっさい』発表。
04年ミニアルバム『いっさいがっさい』でメジャーデビュー。その後ミニアルバム『蝶』、
マキシシングル「冬の光」、ファースストフルアルバム『万華鏡』、筒美京平を迎えた
「恋したいハート」、つんく♂プロデュース「くちびるセクシー」、セカンドアルバム(最新)
『虹色ナミダ』などを発表。とにかく個人的にほとんどすべての曲がツボだ。ハズレがない。
『いっさい…』時のキャッチフレーズが「昭和ノスタルジー、ごちゃまぜ妄想オシャレ歌謡」、
『万華鏡』では「昭和ノスタルジーごちゃまぜキラキラおしゃれ歌謡」。これでおよその方向性が
わかるだろう。が、倉橋ヨエコ小島麻由美の類似だと思われたり、あるいはジムノペディ
マネだとか言われたりってことがあるがそれはちょっとちがう。こういう方向は椎名林檎
エゴラッピンなんかも含め昭和歌謡テイストをデフォルメするってことが共通してあるようだが
(クレケンや大西にも言える)、奥村愛子はもっとストレートに純粋に昭和歌謡に入ってる気が
する。だから彼らに共通してある、ある種のイヤラシサが彼女にはない。なんていうか、彼らには
昭和歌謡を愛すると言いながら、どこかでそこに〈可笑しさ〉を加えないと恥ずかしいみたいな
腰の引けが実はあるんじゃないかな。だが奥村は彼らよりずっと若いからなのかあるいは持って
生まれた資質なのか、もっと直接的にその方向を楽しんでる、というのがなんか皮肉でもある、
実は昭和歌謡の黄金期をオンタイムでは知らない世代なはずだから。
スカ、ボサ、ブギ、なんでもありのビッグバンド感がとくに似合う。とくに『いっさい…』
と『万…』所収の「わたしはずるい」では渋さ知らズが編曲・演奏を担当。また『いっさい…』
では金井克子の「他人の関係」を、「冬の光」では大橋純子「たそがれマイ・ラブ」をカバー。
テレビでは一度だけ『ポップジャム』に出演し「蝶」を唄ったのを見た。そのとき当時MCだった
つんく♂に「色っぽいね〜」と褒められ、その縁で「くちびるセクシー」プロデュースとなった
ようだ。たしかに妙に色っぽかった。