想いを紡ぐ名建築

 京都帝国大(現・京都大)に工学部建築学科を創立し、”関西建築界の父”ともいわれる近代建築の巨匠、武田五一。国会議事堂の設計監修をはじめ、ここ京都においても、京都市役所・京都府立図書館・同志社女子大学ジェームス館、栄光館・五龍閣・1928ビル(旧毎日新聞社京都支局)など多くの美しい建築を手掛けている。
 京都市役所北隣、河原町御池を上がったところにある「島津製作所旧本社ビル」。昭和2年(1927)竣工(しゅんこう)の、武田五一による築85年のビルディングは1900年代初頭に欧米を中心に流行した、アール・デコ様式の美しい外観を持つ建物である。
 そんな「島津製作所旧本社ビル」が、2012年3月より、リニューアルされ、「FORTUNE GARDEN KYOTO」として生まれ変わった。1階部分には旬の食材を気軽に楽しむことのできる、フレンチ・ビストロが計画され、ガーデンテラス席まで含め、約80席のレストランとなっている。2.3.4階の各階には、それぞれ着席100〜120人の収容人員を誇るパーティースペースが整備され、建物の美しいデザインをうまく生かしながら、各階によって、趣の異なるリニューアルデザインが施されている。さらに、5階テラス部分には、スカイバーがあり、京都の夜景と風をここちよく感じることのできるスペースがしつらえられている。また、隣接する新館には、吹き抜けと自然光を効果的に取り込んだ、天井高約9mの開放感あふれる音楽堂(結婚式場)があり、水をたたえたガーデンを取り込みながら、魅力的なウェディングプレ-スを形成している。
 新しく生まれ変わった、武田五一の名建築。人々の素敵な想いを取り込みながら、ひとつでも多くの「FORTUNE(幸運)」を紡ぐ建物であってほしいと思うのである。