船で火葬と葬儀を行う「葬斎・火葬船」構想を日本財団がまとめ、7日に報告書を発表した。平均寿命を迎える団塊世代の人数がピークとなる将来、自治体の火葬場不足が深刻化することに着目。土地の確保や住民との調整を回避できる利点がある。公共火葬場の設置建設を行う地方自治体の資金投入が不可欠だが、財団では「技術的には可能」として、実現に期待を寄せている。
 厚生労働省によると、平成18年の年間死亡者数は108万4450人と40年前の約2倍に増加。一方、全国の火葬場数は、調査開始の昭和27年の2万6089カ所をピークに、増減を繰り返しながら揺るやかに減少し、平成2年以降は一貫して減少を続けている。直近の18年度調査では、4899カ所まで落ち込んだ。特に東京都や福岡市、横浜市では、需要が処理能力を超えている状態が続き、死亡から火葬まで数日間待たされるケースが続出している。減少傾向について厚労省は「火葬場の集約・広域化が進んでいるからではないか」としている。報告書は、日本環境斎苑協会や国交省OBなどで構成される「葬斎・火葬船構想調査委員会」が約2年の調査を経てまとめた。それによると、年間死亡者は、団塊世代が平均寿命を迎える平成48年にピークを迎えて176万人に達し、火葬場の需要は現在の約1.5倍となる。また陸上で新たに火葬場を建設した場合、年間死亡者数がピークを過ぎて以降は余剰施設が出てしまうという問題も生じる。だが、船ならば解体して鋼材にリサイクルできる。接岸する岸壁が限定されないことや参列者の車利用を考え、2600トン級のカーフェリーを想定し、新たに船を建造した場合は約20億円かかると予想。自治体が所有し、運行や葬儀運営は民間委託する。船酔いする参列者や天候の荒れを考慮し、湾内の海で浜辺から10キロ程度の海上に停留して葬儀を行うという。財団では、報告書を全国の自治体に送付し、具体的要請があれば財団が船の建造で協力する方針。

同記事では,日本財団が,船で火葬と葬儀を行う「葬斎・火葬船」構想を取りまとめたことを紹介.火葬場(墓地・納骨堂)の許可は,都道府県,政令指定都市中核市による自治事務である.そして,設置に関しては,各自治体の条例に基づき規定される.ただ,記事にもあり,さらには田口一博先生もご指摘されるように「迷惑施設としての墓地・火葬場」*1の性格もあるため,その設置には近隣住等との間で,事実上は同意を得るための協議が必要となる.また,協議の実施時期と施設工事の着工時期との間での組み合わせ次第では,地域住民の同意を得ることなく,工事着工にもなりかねない.そうなれば,後は,司法判断となる.火葬場は,東京を除き,ほとんどが公営であるという*2.「高齢社会」すなわち「多死社会」という避けがたい現状からすれば,特に,都市部での死亡者増加が見込まれるなかでの,いわば火葬機会確保方策として興味深い提案.

*1:田口一博「墓地関係条例」北村喜宣編著『分権条例を創ろう!』(ぎょうせい,2004年)195頁

分権条例を創ろう!

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*2:斎藤美奈子『冠婚葬祭のひみつ』(岩波書店,2006年)18頁

冠婚葬祭のひみつ (岩波新書)

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