政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)が検討している都道府県から市町村への権限移譲案の全容が23日、明らかになった。まちづくり、福祉、医療、教育などを中心に、約500件の権限が対象となる。5月中にも福田首相に提出する第1次勧告に盛り込む。分権委は、政府が2009年度中に国会に提出する「新地方分権一括法案」で、関連法約90本を改正したい考えだ。分権委は23日午後に会合を開催後、各府省に対し、法改正の検討などを求める文書を送る方針。住民に身近な行政サービスについて、分権委は、地元の市町村が総合的に担うべきだとの基本方針で分権改革を検討している。「平成の大合併」の進展で、市町村の行政体制が強化されたこともあり、権限の大幅移譲は可能と判断した。500件のうち約6割は、まちづくり、福祉、医療、保健、衛生の5分野が占める。まちづくり分野では、土地区画整理事業市街地再開発事業の認可などに関する事務を市に移す。景観や屋外広告物に関する事務は、市町村に移譲する。福祉関係では、人口30万人以上の規模の中核市が現在行っている福祉施設の認可や指導監督の権限を小規模の市にも移す。教育分野では、現在、都道府県が行っている市立の小中学校の教職員人事権や学級編制基準の決定について、中核市に移す。また、産業振興分野では、商店街振興の整備計画などの認定を市に移譲する。都道府県にとっては、権限を市町村に移譲すると、余剰人員が発生し、国から別の事務の権限移譲を受け入れやすくなるメリットがある。

同記事では,地方分権改革推進委員会の第一次答申に,都道府県から市町村への事務権限移譲項目として500項目を記載する予定であることを紹介.詳細は,同委員会第43回配付資料参照*1都道府県への市町村への事務権限移譲を観察してきた者の一人としては,正直なところ,人口段階別に移譲項目を選別した内容ではあるが,一律移譲となることには複雑な気分.それほど,法定による「一律的」な移譲が必要なのであろうか.
個人的な思いは置いておいて,同資料をざざっとではあるが読んでみると,「実績に基づく移譲論」と「要望に基づく移譲論」の双方の基準*2を用いつつ,項目選択を行っている模様(3頁).ただ,「実績」の裏には,都道府県からの財源措置が存在する.当該資料には,全く記載されていないようだが何故だろう(対象項目が財源措置を要しないものか).理屈上,「法定移譲」となると,これらの財源措置を交付税措置することになる.個別の権限については,各省庁との公開討議によって何らかの結論に至るのかもしれないが,何よりも自治制度官庁及び財政制度官庁との間でも論議が不可避となる.財務省にある財政制度等審議会・財政制度分科会・財政構造改革部会の審議状況*3を「チラ見」していると,なかなか容易な議論とはなりそうもない.恐らく,事業官庁との協議は「二の丸」であり,こちらが議論の「本丸」か.いずれにせよ,資料をもう一度精読し,今後の動向を注視したい.

*1:資料3−2「都道府県から市町村への権限移譲について」.PC接続が悪いためか,3月後半以降の同会議のムービーファイルが全く見られない状態にあり,当日の審議状況は未確認

*2:松井望「都道府県と市町村の協議と受容圏−「条例による事務処理特例」制度の創設について」『都市政策研究(首都大学東京都市政策研究会・編集)』第2号,2007年,140頁

*3:財務省HP「財政制度等審議会・財政制度分科会・財政構造改革部会」(平成20年4月18日開催)