知事選で初当選した前秋田市長の佐竹敬久氏(61)が14日、秋田魁新報社の取材に対し、副知事について、「2人必要。2人いれば常識的には内政的な役割と、外交的な役割の分担となるが、今はまだ白紙」と述べ、人選や県議会への提案時期は就任後に検討する意向を示した。
 公約に掲げていた知事公室の廃止は「年度途中にはやらない」と明言。理由を「知事公室の廃止は、ほかの部局にも影響する。年度途中の機構改革で県民を混乱させてはいけない。(部課室などの)看板の掛け替えや名刺の作り直しなどは、税金の無駄遣いにもつながる」と述べ、来年度に向けて知事公室の廃止と組織再編を一括して行う可能性を示唆した。また、知事と市町村長の合議制による総合政策会議については、「5月の全県市町村長会議で考え方を説明する。市町村長は、それぞれの議会とも話し合ってほしい」と“対話型”の県政運営を強調した。

同記事では,4月20日に就任予定の次期秋田県知事への今後の県政方針等に関する取材内容を紹介.
同次期知事が選挙に挑む際に提示されたマニフェストにおいて,「県と市町村が共同で政策の立案や課題解決を行うため,知事と市町村長でつくる「総合政策会議」の設置を提案」とあり,同会議では,「市町村の役割強化のため,県の持つ権限も移譲していく方針」*1と,2009年3月5日付の同紙において報道された折,市町村・都道府県間関係を観察する者の一人(二人目がいるのかという気もしますが)としては,やはり興味を持ち,暫し経過観察の状況.同マニフェストの内容は,同次期知事HPを参照*2.同マニフェスト内では,先の記事にもある「総合政策会議の設置」が提示されており,「政策立案と実行体制の確立のため,知事と市町村長による合議制の会議を設置します」とあり,「県と市町村が対等の立場で議論し合うことにより,多くの課題の一体的,スピーディな解決に結び付きます」(6頁)と先の記事の内容も掲載.テキスト的な理解では,「合議制行政機構一般にあてはまる問題」としては「決定までに時間を要する」*3とは説明がされるものの,市町村・都道府県間関係における合議体の整備は例外事例なのかとも考えられ.興味深い.
そして,この機構改革を,同マニフェストでは「部分的合体」「機能合体」(同頁)という概念で包摂されている.同マニフェスト内では,「市町村の明確な自治権に関連する業務は別として,一体化あるいは強い連携が可能で,全体効率が上がり外へのプレゼンスが大きくなる業務について,市町村との十分な協議・合意のもとに機能合体を進めます」と,その対象の方針と,「機能合体にあたっては地方分権の基本を踏まえ市町村権限の増大を基本とし,全県一律のものとはせずに,それぞれの市町村の特色を踏まえるとともに,県と市町村の一体的体制により,必要な県民サービス水準を確保・向上させます」と対応の方針が示されてはいるものの,明確な定義が示されおらず,その具体化の内容には関心があったところ.同記述振りから,想定すると,市町村と都道府県の全ての業務棚卸を行い,都道府県単独で実施する業務,共管しうる業務,市町村単独で行う業務へと腑分けを行い,むしろ明確な「集中・分散」*4化を図ることを企図されるように考えられなくもない.ただ,あわせて,2008年3月8日付の本備忘録にもあるように,「条例による事務処理特例」制度と同様に「機能合体」も「まだら」状態であることを許容するともあるこれまた,興味深い.
同日付の同紙の報道では,より具体的な内容が記載されており*5,同概念についての応答は,以下の通り.市町村と都道府県による事務の共同処理を念頭に置かれているのだろうか,今後の具体化の様相は,要経過観察.

―公約に掲げた、県と市町村との「機能合体」はどのようなものか。
 佐竹 県と市町村が互いに業務を補完する形。たとえば観光振興の分野では、県の本庁と地域振興局、市町村がそれぞれ別に事業を行っている状態。観光客は、どこに問い合わせをしていいのか分からない。県と市町村の担当者が机を並べて作業することで、業務が効率化し、行政改革の効果も出る。既に秋田中央道路(秋田市)の建設に当たり、県と秋田市の職員が一部の作業を共同で行った。職員の身分をどうするかなどの課題はあるが、法整備に向けた動きもあり、実現可能と思う。

*1:秋田魁新報社HP(2009年3月5日付)「佐竹氏「少子化、雇用対策に力」 知事選に向け公約発表

*2:佐竹のりひさnet.(マニフェスト)『こころの力で 夢をかたちに 世界が変わる 日本も変わる 秋田はもっと変わる 新生あきたのために

*3:今村都南雄, 武藤博己,沼田良,佐藤克廣,前田成東『ホーンブック基礎行政学』(北樹出版,2006年)99頁

ホーンブック 基礎行政学

ホーンブック 基礎行政学

*4:西尾勝行政学の基礎概念』(東京大学出版会,1990年)426頁

行政学の基礎概念

行政学の基礎概念

*5:秋田魁新報社HP(2009年4月15日付)「県、市町村を「機能合体」 佐竹新知事に聞く(下)