来年秋に市制移行を目指す野々市町で、町民に今秋の国勢調査への協力を求めるPRが活発化している。市への昇格には10月の国勢調査で人口5万人を超えることが前提だが、町内には日中不在がちな単身世帯が多い上、個人情報保護を理由に調査に協力しない住民が増加傾向にあるためだ。
 町の新市名称検討委員会は5月、合併でなく単独で市に移行することや、アンケート調査で5760世帯の住民約65%から賛同を得たとして、「野々市市」が新市名称に適当と答申。粟貴章町長は11日開会の6月町議会で正式に「野々市市」の新市名称を表明する方針だ。一方、町市制準備室では「市制移行に向け、今回の国勢調査の重要性を住民に浸透させることが必要」だとして、住民説明会に加え、町長タウンミーティングでも市制移行をテーマに取り上げるなど懸命だ。5月29日には同町本町の公民館で、粟町長自ら「生活保護の支給決定、母子家庭の支援決定など、県が判断してきたことを野々市の状況に応じて出来るようになる」と、約50人の住民に市制移行のメリットを力説した。5月は本町を始め町内4か所で市制移行をテーマに住民説明会を開いた。
 前回(2005年)の国勢調査野々市町の人口は4万7977人。住民基本台帳に記載していない住民もおり、住民登録人口(4万3250人)とは4727人の差が生じた。今回も同様の差が出ると仮定し、町は、5月現在の住民登録人口(4万6409人)から、今回の国勢調査結果を約5万1000人と推測。「5万人突破」の可能性は高いとみているが、「調査票の記入漏れや出し忘れが心配」(粟町長)だという。
 国勢調査は、町から委託された調査員が、調査票に名前・住所・職業などを記入してもらい回収するが、町内はマンション・アパート居住者の割合が6割で、戸建て住宅居住者より高く、学生など、日中不在で接触しにくい住民も多い。加えて、記入内容を調査員に見られたくない人のために、今秋の調査から、郵送や調査票を密封しての提出も認められるようになった。その場で調査員がチェック出来ないため、記入の不備や、結局送付しない世帯が続出する恐れもある。こうした懸念から、町は昨年12月、全国の自治体で2番目に早く国勢調査実施本部を発足させ、調査員の確保や住民不在の際にも調査票が回収できるよう、マンション・アパート管理会社との連携態勢構築に早期に取り組んでいる。同町市制準備室は「住民の理解の下、漏れのない国勢調査を目指したい」としている。
 国勢調査の速報値の発表は来年2月頃。人口が5万人を突破すれば、町は来年6月の町議会、9月の県議会での議決を受け、県知事を通じて総務相に上申という行程を描いている。

本記事では,野々市町における国勢調査の取組を紹介.同町における国勢調査の取組に関しては,同町HPを参照*1
本記事でも紹介されているように,同町では「市制施行を目指す」ため,「国勢調査による人口5万人を達成することが関門」であり,「この関門を突破する」ためには,「全庁体制で適正かつ効率的に調査事務に臨む必要」との課題認識から,同「町は県内で最初に,全国でも2番目」に,「副町長を本部長とする実施本部」を2009年「12月1日」に「立ち上げた自治体」*2とのこと.
「統計調査を取り巻く環境の変化等により,その円滑な実施が困難となってきている」*3なかで,2009年10月2日付の本備忘録でも言及したように,媒介者としての国勢調査員制度を経由しない回答・回収方式へと改められ,下名の整理では,「調査の実施機構の外延に被調査者が含まれる形態」*4へと制度配置上は広がりつつあるなかで,同町における「最大動員」*5の試みは,大変興味深い.同町の実施状況は,要経過観察.
地方自治法第8条第1項に規定される「市となるべき普通地方公共団体」の4つの要件のうち,同条同項第1号にいう「人口五万以上を有すること」との要件に関しては,同法「第二百五十四条にいう人口であり,現実に市となるときに実在する人口ではない.したがって現実に要件である人口があつても,最近の国勢調査又はこれに準ずべき全国的な人口調査において要件である人口を下回つている場合は,市となることはできない」*6との見解とともに,一方で,「市となる時に必要な要件(成立要件)であり,市であるために必要な存続要件ではない」*7との見解も示されており,同人口要件が,「持続可能な発展」*8(更には,維持)を予期されておらず,一重に,「調査」の時点における「人口」を基準とされる要件.
「特例主義」*9的に「市町村合併が行われる場合に限り」認められてきた「人口三万以上有すること」*10との人口要件により,初期段階からの「特例主義」的都市が存在するなかで,今後も,法定上の「普遍主義」的な「人口」要件が初期設定として「持続」されることの意義は,考えてみると,下名はうまく整理ができていない.考えてみたい.

*1:野々市町HP(野々市町統計情報)「平成22年国勢調査

*2:野々市町HP(野々市町統計情報平成22年国勢調査)「平成22年国勢調査野々市町実施本部

*3:内閣府HP(審議会・研究会等統計委員会)『「公的統計の整備に関する基本的な計画」に関する答申』(平成20年12月),9頁

*4:松井望「調査統計における実施機構の内包と外延」『都市政策研究』第1号,2007年,143頁

*5:村松岐夫『日本の行政』(中央公論社,1994年)28頁

日本の行政―活動型官僚制の変貌 (中公新書)

日本の行政―活動型官僚制の変貌 (中公新書)

*6:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)102頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*7:前掲注6・松本英昭2009年:100頁

*8:足立幸男「持続可能な発展に資する民主主義の理念と制度」足立幸男編著『持続可能な未来のための民主主義』(ミネルヴァ書房,2009年)1頁

持続可能な未来のための民主主義 (環境ガバナンス叢書)

持続可能な未来のための民主主義 (環境ガバナンス叢書)

*9:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)202頁

自治制度 (行政学叢書)

自治制度 (行政学叢書)

*10:前掲注6・松本英昭2009年:102頁