静岡、浜松両市は1日、政令市を上回る権限を有する特別自治市の実現に向けた研究会を8月中に共同設置すると発表した。期間は2012年度末まで。県からの包括的な財源、権限移譲について研究し、12年秋をめどに成果を国や県に提言する方針。
 研究会は、両市の大都市制度などの関連部局職員を中心に構成。県との二重行政を解消し、十分な税財源の移譲の下で一元的、総合的な行政サービスを提供する特別自治市の実現を見据え、有識者を交えて共同研究に当たる。研究の範囲など具体的な検討内容については、有識者の助言を得て今後決定するという。研究会設置に向けては、10年11月の県・政令市サミット(G3)で川勝平太知事と両市長(当時)が特別自治市の実現に向けた連携、協力を確認。今年5月の静岡市浜松市首脳会合(G2)で設置に合意していた。

本記事では,静岡市浜松市における「特別自治市」構想に関する研究会設置の取組を紹介.同取組に関しては,静岡市HPを参照*1
両市と両市が位置する静岡県の間で,2010年11月に「道府県との二重行政を排除し十分な税財源を移譲のうえ、一元的・総合的な行政サービスを提供する「特別自治市」の創設の実現に向けて」の「連携・協力」がまずは確認され,その後,2011年5月に開催された「第7回」の「静岡市浜松市首脳会合」にて「両市による研究会を立ち上げ」が確定.具体的には,「県との二重行政を解消」し「十分な税財源の移譲のもと」「一元的・総合的な行政サービスを提供する「特別自治市」の実現」を目指すためにも,「両市の大都市制度,関連部局職員で研究会を構成」し,「研究成果」を「国や県に提言」*2される予定とのこと.同回の同会合の記者会見を拝読させて頂くと「警察の部分を県から切り離すのはなかなか難しいと思いますが,あとの部分はかなり移行できる」*3との見解も示されている.
一方,2011年7月29日付の本備忘録でも記録した,指定都市市長会が2011年7月に国に対して要請した『平成24年度国の施策及び予算に関する提案』のなかでは,「特別自治市の業務とする」とその移譲を前提として,「地域の実情に応じて広域的対応が必要な場合は,特別自治市広域自治体に事務を一部委託したり,特別自治市間で共同して警察本部を設置するなど,多様な形での連携も選択肢の一つ」*4との提案も行われている.上記の記者会見の時期と同提案の時期が異なることもあるためか,両者の間では「警察権限」*5に関する相異がある模様.今後の「研究」では,どのように具体的な検討が進めらるのだろうか.
2011年7月27日付の神奈川新聞では,横浜市川崎市との間でも「「特別自治市」の実現に向けた共同研究」*6の開始の取組も紹介.同一の名称というフレーミングのもとに,全政令指定都市による「一つの声としてまとまり」*7を重視するのばかりではなく,各政令指定都市間で研究が進められつつあるような同構想.上記の警察権限が一つの制度的な争点となるように,地域毎で特性と選択に応じた制度となるよう,敢えての「同床異夢」*8を選択された制度として具体化されていくのだろうか.要確認.

*1:静岡市HP(静岡市の組織経営管理局 経営企画部分権・広域政策課)「「特別自治市研究会」発足!

*2:前掲注1・静岡市(「特別自治市研究会」発足!)

*3:浜松市HP(情報のひろばはままつ市長の部屋記者会見)「静岡市・浜松市合同首脳会合 合同記者会見

*4:指定都市市長会HP(意見表明・活動報告平成24年度国の施策及び予算に関する提案)「平成24年度国の施策及び予算に関する提案」13頁

*5:大森彌『変化に挑戦する自治体』(第一法規,2008年)201頁

変化に挑戦する自治体―希望の自治体行政学

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*6:神奈川新聞(2011年7月27日付)「横浜市と川崎市が県から独立へ連携、「特別自治市」を共同研究/神奈川

*7:真渕勝『行政学』(有斐閣,2009年)388頁

行政学

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*8:城山英明「環境問題と政治」苅部直,宇野重規,中本義彦編『政治学をつかむ』(有斐閣,2011年)282頁

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