雨。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第五番 K.283(ピリス、参照)。
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J.メイナード=スミス『生物学のすすめ』読了。邦訳の題名がちょっとミスリードかも知れない。確かにそれほどぶ厚くない生物学入門の書と云えないこともないが、はっきり言ってそんなにやさしい本ではないですよ。まず、著者が大変頭がいい。切れる。だから、著者の言っていることを一般読者が理解するのは、結構むずかしいと思う。僕は高校で生物学を履修していないので、本書のレヴェルがどの学年の知識を必要とするかがよくわからないが、三十年前の本にもかかわらず、本書の内容に(たぶん)さほど訂正が必要ないというのは驚くべきである。著者は生物学者と言い条、元々は数学的な訓練を積んできて、さらに最初は工学系の研究をしていたということで、話がとても理論的である。たぶん、本書で数学的な記述をしなかったのは、著者にはかなり苦痛だったのではないか。それに関し、本書で数式が一箇所だけ出てくるのが、日本人研究者の木村資生の「進化の中立説」の説得性を肯定する部分だというのは、なんとなく嬉しい。僕も(過去にこのブログで触れた覚えがあるが)「進化の中立説」はおそらく正しいと思っているので、著者の肯定は心強く感じる。木村先生もとても数学ができる方だった。それはともかく、本書の筆の運びはきわめて論理的でシャープなもので、多くの専門家でもここまでシャープには推論できないであろうと感じる。その論理の運びを是非実感して頂きたいものである。本書は生物学の難問中の難問を扱っていて、現在でもまだわかっていない部分が少なくない。それが、本書の今日的意義であろう。なお、著者の主な業績のひとつである「ESS(進化的に安定な戦略)」というのは、ゲーム理論を駆使したもので、たいそうむずかしいということである。これは前から、ちょっと勉強してみたいと思っていたので、いい教科書でも探そうかな。
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