児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

海自幹部 女性のひざ下画像50枚

 露出している膝下の撮影行為が卑わいな言動といえるのかは疑問。

http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20070905064.html
海幕によると、三佐は8月24日午前7時ごろ、JR総武線船橋新小岩間の電車内で、女性のひざから下を撮影し、気付いた男性客に取り押さえられた。
 警視庁葛飾署が任意で事情を聴いたところ撮影を認めた。三佐の携帯電話には約50枚の同じような画像が記録されていたという。同署は東京都迷惑防止条例違反の疑いで書類送検する方針。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
第5条(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
① 何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。

年齢知情否認→自白→略式罰金・懲戒免職

 16・17は外見上18歳と区別できないので、年齢不知の主張が通って不起訴になることもあるんですが、逮捕されてしまうと、難しいですね。
 不起訴でも「過失でも児童を買春したことに間違いない」として懲戒免職になった事例もあります。

  • 7/8 児童買春
  • 8/21 逮捕・年齢不知
  • 8/31 略式命令
  • 8/31 懲戒免職

児童買春の教諭、懲戒免職処分に 県教委 /岐阜県
2007.09.02 朝日新聞社
 県教育委員会は31日、7月8日に各務原市内で飲食店員の少女(16)を買春したとして、8月21日に児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで県警に逮捕された岐阜市立小学校の男性教諭(37)を懲戒免職処分とした。
 教諭は逮捕当初、「少女は(児童買春にあたらない)18歳だと思った」と供述していたが、県教委の調べに「今は18歳未満であることを認識している」と認めているという。
 岐阜区検は31日、教諭を略式起訴、岐阜簡裁が児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪で教諭に罰金30万円の略式命令を出した。

撮影行為を処罰する青少年淫行罪は死んでいる。

 青少年条例によっては、「わいせつ行為」として裸体撮影行為を処罰するものもあるんですが、そうなると3項製造罪(姿態とらせて製造)と競合します。その場合、観念的競合になるのではなく、条例違反罪は成立しないということです。
 と考え始めたのですが、事案にそぐわないのでボツになった主張です。
 条例との関係をよく考えていない法律なので、条例違反罪と併せて起訴された場合には、一応、チェックする必要があります。

 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律附則2条は条例との関係について次のように定める

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
附則
(条例との関係)
第2条 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。

 児童買春罪にしろ、児童ポルノ製造罪にしろ、法律上犯罪とされる行為と、条例上犯罪とされる行為が重複する場合には、条例は無効となる。
 ところで、性行為(児童淫行罪・青少年淫行罪)−撮影行為(3項製造罪)が社会見解上一個の行為とすれば、法律上の3項製造罪(姿態とらせて製造)と条例28条2項違反の罪は重複するから、条例違反罪は成立しない。
 条例違反罪を認めた原判決には法令適用の誤りがあるから破棄を免れない。
 条例が撮影行為をも含むとされていることから、3項製造罪(姿態とらせて製造)が成立する場合の条例の効力を問題にするものである。
 条例違反行為の際の撮影行為が児童ポルノ製造罪とされている。

 ところろで、児童ポルノ・児童買春法7条3項と2条3項を合わせてよむと、3項製造罪(姿態とらせて製造)の構成要件はこうなる。

第7条(児童ポルノ提供等)
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態すなわち、
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。

 このうち、

児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態をとらせ

というのは、性交又は性交類似行為を行いながら撮影することに他ならない。児童淫行罪と観念的競合と評価されるゆえんである。
 
 また、

二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態をとらせ

というのは、児童の性器等に接触しながら撮影する・児童に性器を触らせながら撮影することに他ならない。

 他方、青少年健全育成条例の関係では、禁止されている行為は性行為(性交又は性交類似行為)とわいせつ行為であるところ、例規によれば「裸にして陰部等の写真を撮る行為」は、「わいせつ行為」と評価されるのである。

http://www.police.pref.osaka.jp/01sogo/law/images/seian/seian_540123600074.pdf
青少年健全育成条例の運用について
昭和60年12月26日
例規(少)第74 号
(4) 「わいせつな行為」とは、性器に対して指で触れる行為、女性の乳房をもてあそぶ行為、裸にして陰部等の写真を撮る行為、人前で全裸にしたり陰部を露出せしめる行為等いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、露骨な表現によつて、健全な常識のある一般人に対し、性的にしゆう恥嫌悪の情を起こさせる行為等をいう。

 さらに、威迫・困惑させるという行為は、威迫・困惑させ「姿態をとらせる」行為には「とらせる行為」と重複する。

青少年健全育成条例の運用について
昭和60年12月26日
例規(少)第74 号
ア「威迫し」とは、暴行又は脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加えて相手方に不安の念を抱かせ、自由な判断力を低下させることをいう。
イ「困惑させて」とは、借金の返済を厳しく迫つたり、雇用関係、職場における上司と部下の関係等の特殊な関係を利用して義理人情の機微につけ込むことなど、心理的な圧迫を加え、精神上の自由な判断力を低下させることをいう。

 3項製造罪(姿態とらせて製造)の構成要件のうち、

児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態をとらせ

というのは、性交又は性交類似行為を行いながら撮影することに他ならないし、また、

二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態をとらせ

というのは、児童の性器等に接触しながら撮影する・児童に性器を触らせながら撮影することに他ならない。青少年健全育成条例の関係では、禁止されている行為は性行為(性交又は性交類似行為)とわいせつ行為であるところ、例規によれば「裸にして陰部等の写真を撮る行為」は、「わいせつ行為」と評価されるのである。
 さらには、威迫・困惑とは姿態をとらせる行為に他ならない。
 そうであるならば、威迫・困惑により性交し撮影する場合には、3項製造罪(姿態とらせて製造)とされる行為と青少年条例違反とされる行為は完全に重複する。

使えないかなあ。

児童が虐待されない権利より著作権のほうが重要

 法定刑からしてそうなんですけど。
 京都地裁H19の送信可能化権侵害罪の罪数処理でもそんな感じです。
 児童ポルノ画像を1/1と2/1から陳列していても包括一罪ですが、著作権侵害画像を1/1と2/1から陳列していると併合罪になるようです。
 結局、児童ポルノについても被害者側が黙っていると保護は甘くなるということでしょうか。
 国会は児童ポルノ・児童買春法改正どころじゃないし。

動体視力の問題か?

 ビデ倫に見識があれば、会員企業が倒産しても構わないはずです。
 ネットで外国のえぐいのが流されるのに、日本の有体物販売業者が追いつけないので、あせってるんじゃないですか?
 業態としての限界かもしれません。

http://www.asahi.com/national/update/0904/TKY200709040432.html
 レンタルビデオ店が登場した80年代以降、審査はビデ倫の独占状態だったが、近年は基準の緩い新興機関が10近く登場し、勢力を拡大。ネットの動画配信でより過激な作品を入手できるようになったこともあり、会員の制作会社の一部からは「このままでは倒産する」といった悲鳴があがったという。
 ビデ倫の審査を見学したことがある別の審査機関幹部らによると、ビデ倫の審査員の大半は映画会社OBら60代以上で、全体でも十数人しかいない。審査を通らない作品はほとんどないという。20〜50代が審査するという別の審査機関の幹部は「動体視力が落ちる高齢者では、細かなチェックは難しい」と話す。
 規制緩和以降、ビデ倫加盟の制作会社は過激さを競うようになった。「新基準モザイク採用」などと大々的に宣伝する作品も多い。

「『罪名+事件番号+判決日のリスト』は個人情報なので、公開しづらい・・・」最高裁情報公開担当

 曰く、

「罪名+事件番号+判決日」でも、他の情報(報道)と併せれば、個人識別できる
もっと考えさせてくれ

っていうんですが、そりゃ、報道の方は被告人名とか行為の内容とか全部でてますけど、そっちは公開情報だし、「罪名+事件番号+判決日」が加わっても、変わらないんじゃないですか?
 こちらがほしいのは、「罪名+事件番号+判決日」だけです。事件が特定できますが、個人は特定できないでしょう。

児童買春11罪(児童ポルノ製造あり)で懲役2年実刑(札幌高裁)

 公判廷で判決されてしまったので、公知ですね。
 量刑不当が通らなかった。
 罪数だけでみると、史上最高です。
 この程度の余罪があることはざらにあっても、これだけ起訴されることもないんですが、これだけ立件されるとこの程度の量刑になるということです。

出会い喫茶の規制

 また、取材。
 控訴審弁護をやって風営法はちょっと勉強させられましたが、風俗営業には詳しくありません。
 思いつくのはこの程度です。
 直接法律で規制されていない業態であることは間違いないので、なんとか既存の法律に引っかけるしかないですよね。

営業の規制
  食品衛生法(許可)*1
  大阪府青少年健全育成条例(行政指導)*2

 ※規制対象に該当するならば
  風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(届出)*3
  東京都デートクラブ営業等の規制に関する条例(届出)*4

危惧される違法行為
  売春周旋罪*5
  児童買春周旋・勧誘罪*6


参考
インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律*7
(出会い系サイト上で行えば「誘引罪」となる行為が、リアル世界では法律上規制されないようだ。条例で規制されている可能性はある)