児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ:単純所持に罰則も検討 自民が法改正へ

 「定義が曖昧」って、いまでもそれで回ってるんですけどね。
 譲受罪はどうでしょうか?

http://mainichi.jp/select/today/news/20080224k0000m040109000c.html
児童ポルノ:単純所持に罰則も検討 自民が法改正へ
 インターネットによる児童ポルノ画像などの拡散に歯止めをかけるため、自民党は23日、児童買春・児童ポルノ禁止法を改正する方針を固めた。販売目的でなくても、画像や写真などを個人で集める「単純所持」を禁じる規定を新たに盛り込むほか、処罰規定も検討対象とする。超党派議員立法で今国会に提出する考えだが、処罰規定には与野党とも「わいせつの定義もあいまい。捜査権の拡大を招く」といった慎重論がある。

 自民党は月内にも森山真弓元法相をトップに小委員会を設ける。販売や提供の意図がない単純所持について「電磁的記録の保持」を禁じる規定を設ける案が出ている。処罰規定は、罰金を科すことを軸に検討する。迷惑メールなど、一方的に画像を送りつけられるケースがあるため、適用対象を収集の意図が明らかな場合に限る。アニメやコミックの児童ポルノへの規制は「表現の自由を侵す恐れがある」との意見が強く、見送られる見通し。

弁護人として嬉しいのは
 児童ポルノを持って自首した場合の必要的減軽免除

弁護人として困るのは
 法定刑の下限の引き上げ
 児童ポルノ・児童買春の年齢知情推定規定・過失犯の処罰

なんですが、立法者には内緒です。

携帯電話を小中学生に「持たせない」方針

 これは有効ですよ。実現すれば携帯電話を接点とする被害はゼロになります。
 「防犯対策」等で携帯を持たせる必要性との調和点が問題ですが、児童が被害に遭うネット犯罪はほとんど携帯電話経由になっていることは警察がよく知っているところで資料も豊富。それに対して、必要性を主張する方が、根拠を示して欲しいところです。
 防犯として電話機能・メール機能はともかく、カメラとブラウザは必要なのかという点も。

http://www.saga-s.co.jp/view.php?pageId=1036&blockId=799915&newsMode=article
携帯電話を小中学生に「持たせない」方針
 携帯電話を持つ子どもが増える中、佐賀市教委とPTAは合同で「小中学生には原則持たせない」方針を打ち出した。保護者からは「防犯面からも必要」との声もあるが、出会い系サイトのトラブルやメールによるいじめなども起きており、学校現場は対応に頭を悩ます。所持にまで踏み込んだ方針には賛否あるが、学校だけでなく親子で携帯電話について考える契機になりそうだ。
・・・・・・・・・
 結果を受け、市教委とPTAは「子どもたちの健全な成長に大きな影響を与える」として、小中学生に携帯を持たせない方針を決定。保護者にも安易に買い与えないよう呼び掛けることにした。

 ある教頭は携帯の問題について、「暴力や無視などと違い“現場”が見えないため、教師や保護者がトラブルに気づきにくい」と話し、生徒指導の難しさを指摘。別の校長は「朝、子どもを起こすのに携帯を使っている親さえいる。親子関係も希薄になりかねない」と危機感を募らせており、方針に賛同する。

 一方で、中学3年に携帯を持たせている父親は「防犯の役割は大きく、持たせないだけでは問題は解決しない。学校の責任逃れの口実にならないか心配」。別の母親は「子どもの気持ちも簡単には切り捨てられない。使い方のルールをきちんと決めることが大人の責任では」と、実態を踏まえた対応を求める。

 今後は各校のPTA主催で、保護者が携帯について理解を深める研修会を開くほか、佐賀市が設けている3月の「命を考える日」では全校一斉に携帯やネットの実態を取り上げる予定。ある生徒指導の教師は「全体を見渡す学校と、自分の子だけを見る親とで考え方に温度差があるのは事実。でも、子どもを守る共通認識だけは持ちたい」と話している。
02月24日更新

13歳に売春相手あっせん 男に1年6月求刑 津地裁

 斡旋された方も公判請求されそうな事案です。
 12才だと強姦罪

http://www.isenp.co.jp/news/20080222/news06.htm
13歳に売春相手あっせん 男に1年6月求刑 津地裁
 検察側は論告で「携帯サイトで少女が十三歳だと広告しており、犯行は悪質」と懲役一年六月を求刑。弁護側は弁論で「十分反省している」と執行猶予付き判決を求め、即日結審した。判決は三月四日。
 起訴状によると、被告は平成十八年十二月三日、津市内の駐車場で、携帯電話の出会い系サイトで知り合った少女が十三歳だと知りながら、サイト掲示板を見てメールを送信してきた男を売春相手として引き合わせた。少女が男から受け取った五万円のうち、三万円が被告に渡ったという。
 井川被告は同年九月ごろから少女と交際。「二回目に会った際に別れようと思ったが、少女に『学校や親に話す』と言われ、ずるずると関係を続けてしまった」と釈明した上で、「遅かったとは思うが、事の重大さに気付き、深く反省している」と述べた。

 こういう事案の量刑を相談されれば

13才児童の児童買春周旋罪を含む裁判例
高裁 実刑
家裁 懲役1年06月 執行猶予3年
家裁 懲役1年執行猶予3年
家裁 懲役1年06月 執行猶予4年
家裁 懲役2年06月 実刑
家裁 懲役2年    実刑 罰金20万
地裁 懲役2年00月 執行猶予3年
地裁 懲役1年00月 実刑

というデータを抽出して、「事案を比較しないとわからないが、手持ちの8件中4件実刑です。実刑事案と比べて、・・・という点は犯情軽いから・・・」という回答をします。

わいせつな行為とは?

 強姦罪に比べると限定ないですよ。

判例コンメンタール刑法第2巻
3わいせつ行為
定義
「わいせつ」概念については、174条、175条と同様「いたずらに性欲を興奮叉は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的しゆう心を害し、善良な性的道義観念に反するものとされている。
16歳の女性の下着のなかに手を入れて指で陰部をもてあそび、背後から抱きしめて陰部に自己の陰部を押し当てたもの、
女性の膝に)馬乗りになって抱きつき着衣の上から陰部を強く押し撫でる行為、
小学校教諭が臨海学校の宿泊所で小学6年の女児に対し、顔を自己の胸に押し付け、下着のなかに手を入れて陰部をもてあそぶなどしたもの
両前で内縁関係にある男女に性交の動作をさせたものである。
接吻行為も該当する。
送ってやると称して自動車に乗せた女性に無理突然接吻しようとした例
店で客が接客女性店員に接吻しようとし、
顔見知り程度の被害者を待ち伏せ、いきなり抱き寄せて接吻しようとしたもの
性的に未成熟な7歳の女児の乳房を撫で回す行為
着衣の上から腎部を撫で回す行為については、判断が分かれている。
被害者に男性を含む。
少年の肛門周辺部に麻酔剤を注射
肛門内に異物を挿入する行為も該当する

「風俗・性犯罪」シリーズ捜査実務全書9p65
(5)わいせつ行為
わいせつ行為とは、「いたずらに性欲を興懲または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する」行為をいうものと解され(名古屋高裁金沢支判昭36.5.2参照)、刑法第174条、第175条に定める「わいせつ」とほぼ共通の概念である。しかし、強制わいせつ罪は、被害者の意に反したわいせつ行為を処罰し、本質的に被害者の性的自由・性的感情を保護法益とするものであり、公然ないしは不特定多数の人を対象として行われることによって違法性が認められる刑法第174条、第175条の罪と異なるので、おのずから「わいせつ」のニュアンスを異にするところがあると説かれており、このような見地からすると、「接吻行為」は,刑法第175条の「わいせつ」行為には該当しないとしても、強制わいせつ罪の「わいせつ行為」には該当する。
陰部への接触行為
)乳房への接触行為
接吻行為
性交等
直接被害者の身体に触れなくても、裸にして写真をとる行為は、強制わいせつ罪を構成する
被害者を単に裸にするだけでも、人前であれば、わいせつ行為足り得、公然性を要しない。

児童の年齢を知らないことを理由として、処罰を免れることができないとされた事案

 裁判例から抽出してみました。
 年齢不知について無過失の主張はまず通らないので、情状として主張した方がいいかもしれません。

  • 利益追求のために児童の年齢申告を軽信した
  • 年齢詐称は生徒証明書を偽造するという悪質な手段であった 
  • 被害児童が年齢詐称
  • 年齢に疑念を抱いていた 仲介者や児童に住民票を求めていた
  • 被害児童が年齢詐称
  • 児童らが同業者で働いていたことだけで年齢詐称を軽信した
  • 年齢に疑問持ち 保険証をもとめたが、そのまま雇用
  • 年齢判明後解雇
  • 住民票を提出させただけで、年齢確認に万全期さないままデリヘル嬢として雇用
  • 被告人が雇用していたデリヘル嬢が、児童を同級生であると紹介して、児童の姉の住民票を提出したので、軽信した。
  • 写真付き身分証と健康保険住民票で年齢確認するという店の方針は正当であり、これを貫くべきであった
  • 年齢詐称
  • 少なくとも営業として児童の福祉を害するような仕事をしている人々には格別の配慮により、年齢証明できない応募者は全部閉め出すよう求めざるを得ない
  • 偽証明書など巧妙に潜り込もうとする児童もいるから100%防止は困難であるにしても証明書が提出されるまでは働かさないと突っぱねるべきである
  • 年齢確認せず安易に採用した
  • 姉の住民票を提出して19才10ヶ月と詐称したのを見抜けなかった口頭で採用
  • 年齢資料求めなかった
  • 姉の住民票を提出して19才10ヶ月と詐称したのを見抜けなかった口頭で採用
  • 年齢資料求めなかった
  • 児童が年齢詐称していた
  • 本人の自己申告と身体状況の観察以外に調査を行っていない
  • 児童の自己申告以外に客観的資料提出求めるなど調査を尽くしていない
  • 本来、このような場面においては当然尽くされているべき初歩的基本的義務が全く履行されて居らず責任重い
  • 経営者は店長らに年齢確認を怠らないよう指導監督徹底する義務
  • 児童2名は採用面接で履歴書に虚偽の年齢記載
  • 安易に採用した 
  • 身分証明書を確認していない
  • 児童が18才と自称したのを確認せず軽信した
  • 厳しく調べると辞めてしまうので、言えなかった
  • 住民票でしか年齢確認できないが信用できる人の紹介だからと軽信した
  • 児童を接客や児童淫行罪させないよう特に注意すべき義務がある
  • 年齢確認もとめたが、その後放置していた
  • 被害児童が年齢詐称
  • 身分証明書は確認していない
  • 自称を信じただけでは、過失がある
  • 被害児童が虚偽の年齢を告げていた