児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

男子生徒にわいせつ 塾経営者男性に200万円賠償命令 福岡地裁判決

 民事裁判での認容額であって、刑事裁判での示談とは違います。

男子生徒にわいせつ 塾経営者男性に200万円賠償命令 福岡地裁判決
2009.02.03 西日本新聞社
 判決によると、生徒は中学生だった二〇〇七年三月、塾主催の七泊八日の米国旅行に参加。宿泊したホテルで経営者や講師二人と同室になり、一日目と三日目の夜、ベッドで寝ていたところ、経営者から下腹部などを触られた。三日目には部屋から逃げて現地の警察に被害を訴え、経営者は捜査当局に逮捕、起訴され、懲役六年の有罪判決を受けた。

13歳未満の女児に1回2000円を与えて口淫させた行為について、児童買春罪ではなく、強制わいせつ罪のみで有罪としたもの(横浜地裁)

 児童買春罪の起訴もありませんでした。
 性的処分能力がない場合には、売買春じゃないから、強制わいせつ罪のみの方が、しっくりきます。

同一児童との数回の児童買春罪を包括一罪とするもの(横浜地裁h19)

 裁判例がないとなかなか言い出しにくいですが、これからはバンバン主張しましょう。
 これで余罪も一事不再理効。

A14歳
1 1/12 児童買春
2 1/28 児童買春

B15歳
1 2/22 児童買春
2 2/25 児童買春

 これで2罪。

13歳未満へのわいせつ行為を青少年条例違反とする場合の問題点

 立法趣旨は抵触しないとしても、強制わいせつ罪の親告罪の趣旨に反しないか?法律で親告罪とされているのを条例で非親告罪にしていいのか?
 それから、条例の青少年わいせつ罪は傾向犯か?
 そこ判例ないですよね。

大阪高等裁判所判決昭和48年5月9日
刑事裁判月報5巻5号899頁
そして、刑法上、一三歳以上の婦女に対する姦淫ないしわいせつの行為は、暴行、脅迫または婦女の心神喪失ないし抗拒不能に乗ずる等してした場合にのみ処罰の対象としているので、一三歳以上の青少年に関する限り、本件条例の右規定は、刑法上犯罪とされない行為を禁止し、その違反に対し、刑罰を科すものであることは明らかであるが、しかし、刑法の強姦罪または強制わいせつ罪は、たしかに風俗犯としての面をももつていることは否定できないけれども、むしろ主として個人の性的自由ないし貞操を保護法益とするのに対し、本件条例が青少年に対するみだらな性行為を禁止するのは、「青少年の健全な育成および保護」を所期するものであるから、両者はその趣旨、目的を異にするものというべく、本件条例八条の二、一項、一七条二項一号が刑法に反するといいえないのはもとより、同条項所定の事項につき法令に特別の定めがある場合には当らないというべきである。もつとも、青少年に対するみだらな性行為等を禁止することは、ひとり地方公共団体の区域内における利害に関係ある事項にとどまらず、広く国民全体の利益に関係のある事項ではあるが、地方の実況に応じて「青少年の健全な育成および保護」を図る必要のあることは否定しがたいところであるので、これをもつて直ちに本件条例の右条項所定の事項が、地方自治法二条一〇項一号にいう司法に関する事務であるとし、国によつて処理される事務であるから、法律によつてのみこれを禁止しうるとの所説にはにわかに賛成しがたく、地方公共団体の自主的立法である条例によつても、これを禁止しうると解すべきである。

「少女」の年齢映像から鑑定 DVD児童ポルノ事件

 「数%で児童でない可能性がある」なんて法医鑑定やった弁護人が居たりしたので、1999年から大阪府警などではそれでやってますよね。
 この段階では児童1人ごとに児童ポルノ性を判断してるんですけど、なぜか起訴段階では児童を特定せずに人数も数えずに包括一罪になります。

http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20090203/107071
 捜索で押収したDVDなどは約千四百点で、うち児童ポルノとみられるものは約百八十点。だが、見た目は明らかに中学生前後でも、それだけで児童ポルノと断定できるわけではない。少女の身元も不明。そこで威力を発揮するのが鑑定だ。
 立件した七枚については、医学の専門家が体格、骨格、発育状況などを詳細に鑑定。この結果、九−十四歳という鑑定結果が得られ、県警は追送検に踏み切った。

 これだと、見かけ15歳以上の場合が、18歳以上と区別できないので、児童ポルノから外れちゃうんですよね。
 逆に、見かけ14歳以下でも真実18歳以上のが紛れ込む危険もあります。
 外国人の場合も見慣れてないので難しいですね。

 これをやってるのが、小児科医とか産婦人科医なんですが、そういう人たちが被疑者になって「18歳未満だとは知らなかった」と弁解していることもあります。「医者ならわかるだろっ!」と追求されて。

児童淫行罪+5項製造罪(不特定多数)の事案(警視庁)

 これは観念的競合で処理するんでしょうね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090204-00000063-jij-soci
女子高校生にわいせつな行為をして写真撮影したとして、警視庁少年育成課などは4日までに、児童福祉法違反容疑などで、フリーカメラマン容疑者(37)を逮捕した。容疑を認め、「生活のためにやった」と供述している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090204-00000528-san-soci
16歳の少女とわいせつな行為をして、その様子を撮影したとして、警視庁少年育成課と蒲田署は、児童ポルノ処罰法違反(製造)などの疑いで、フリーカメラマン、(37)を逮捕した。
 撮影された児童ポルノは雑誌の付録DVDとして発売されており、少年育成課は出版した「サン出版」(新宿区荒木町)と男性編集長(42)を同法違反の容疑で書類送検する方針。

 年齢知情と使用関係(過失)が問題になるでしょう。

第9条(児童の年齢の知情)
児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

マイスペース、性犯罪歴ある会員9万人を排除 米国

 日本のコミュニティサイトでは、ここまでできませんね。
 法律上の出会い系サイトで免許証で登録する程度ですから、それ以外は誰だかわからない。

http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2567598/3753907
 米国の法律では、性犯罪の前科がある人物は、氏名、住所、入れ墨の有無や形状など、本人を特定できる個人情報をデータベースに登録することが義務付けられている。 
 センティネルのソフトウェアは、全米の性犯罪者約60万人が登録されたこのデータベースを基に、SNS会員のなかから性犯罪登録者を探し当て、その人物を排除するという仕組みだ。マイスペースは、現時点でこのようなソフトウェアを導入したSNSは自社以外にないとしている。
 上述のブルメンソール司法長官は、マイスペースに9万人もの性犯罪者がいたという事実は、インターネット上の子どもたちへの脅威が過小評価されていることを物語っていると警鐘を鳴らした。

「国選弁護人が証拠を閲覧・謄写せずに(被告人も見ずに)同意した証拠の採用を取り消してくれ」という相談

 なにせ見てない証拠で裁かれているんですから、後からびっくりということもあるでしょう。
 時々聞かれるのですが、それは難しいのですよ。
 採用前なら、ただ不同意にすれば裁判所の目に触れなかったものを、採用されてしまってからでは無理なんです。信用性を争うしかありません。

最高裁判所第1小法廷決定昭和26年2月22日
最高裁判所刑事判例集5巻3号421頁
最高裁判所裁判集刑事40号961頁
判例タイムズ11号52頁

 記録を精査すると第一審公判において弁護人が所論の書面を証拠とすることにつき同意した際、被告人は在廷しながら反対の意思を表明しなかつたことは勿論これに対し何等異議をも述べずむしろこれに同意したものたることが認められるのである。この事は爾後該書面につき証拠調がなされた際にあつても被告人において何等異議を述べなかつたことに徴して明白なのである。されば、右書面を証拠とするにつき被告人の同意がなかつたことに立脚する所論は、その前提事実を欠くものであり、違憲を云為するけれども刑訴四〇五条所定の上告適法の理由に該当しない。

福岡高等裁判所判決平成10年2月5日
高等裁判所刑事裁判速報集平成10年117頁
判例時報1642号157頁
九大法学78号499頁
判例評論489号59頁
 第一 訴訟手続きの法令違反の主張について
 所論は、要するに、原審裁判所は検察官請求の各書証について原審弁護人から証拠とすることについて同意する旨の意見を徴しただけで右各書証を取り調べこれを有罪認定の資料としているが、被告人は本件公訴事実を否認していたのであるから、検察官が証拠調べ請求をした各書証について弁護人が同意したとしても、これとは別に被告人に対し右書証を証拠として取り調べることについて同意するか否かを確認すべきであり、被告人の同意が得られた書証についてのみこれを取り調べ同意の得られない書証についてはこれを取り調べるべきではないというべきである。しかるに、原審裁判所はそのような措置に出ておらず、かかる訴訟手続きは刑事訴訟法三二六条に違反しており、右法令違反が判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。
 そこで検討すると、刑事訴訟法三二六条一項は「被告人が証拠とすることに同意した書面」については伝聞証拠であっても証拠とすることができる旨を規定しているところ、右の同意は弁護人がその包括代理権に基づき被告人を代理してこれをすることができるものであり、それが被告人の明示した意思に反する等の特段の事情が認められない限り、弁護人の同意をもって被告人の同意とみなして妨げないものと解するのが相当である。

奥村の場合、こんなこと言われるのがいやなので、縮小印刷で差し入れて、気付いたところを箇条書きで送り返してもらうことにしています。