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ギンザ プラスワン

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2017-10-15 大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P78

 猪鍋や大山の闇待つたなし


 石田勝彦先生結社「泉」の方々と大山周辺を吟行した。名物豆腐料理が食べられると期待したものの、一行はケーブルカー阿夫利神社直行社務所の裏で秘かに豆腐アイスクリームを食べようとしたら、「神の鹿を詠みなさい」と勝彦先生。そこで〈神鹿のひづめさびしき懐炉かな〉を作った。句会の後、猪鍋を囲んで談笑。先生の後ろの硝子戸には大山の大いなる闇が迫っていた。〈牡丹鍋みんなに帰る闇のあり〉 (『火のいろに』)

2017-10-09 大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P76

 ぼろ市や空一枚を使ひけり


 東京世田谷のぼろ市を吟行したときの作。第二句集『火のいろに』を上梓することが決まり、頻繁に吟行をした。無所属俳句をやっている私を心配した石田勝彦先生がたびたび吟行に誘って下さった。

 このときも、先生のお伴をして古着、古物、農具などの店を見て句作した。街を見渡すと同じような店が街の外れまで続いている。ぼろ市って、空を上手に使う青空なのだと改めて思った。 (『火のいろに』)

2017-10-08 大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P74

 がちやがちやの森を壊してゐたりけり


 いろいろな虫の音があふれている夜の森で、ひときわ個性的なのが、がちゃがちゃとも呼ばれる轡虫。そのがちゃがちゃと賑やかでやかましい鳴き声が最高潮に達すると、森が壊れるのでは、と思ってしまう。それは轡虫の生態であって、雌を呼ぶ狂おしい鳴き声であり、短い命を生きている証なのかもしれない。「壊してゐたりけり」と感受し、断定する私の心が壊れていたのだ。内的なものまで投影してしま俳句って怖い。 (『火のいろに』)

2017-10-01 大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P72

 遠雷や人を待たして人待たず


 老母や猫の世話をしていて、待ち合せの時間にたびたび遅れることがあった。遅刻するだけでも迷惑なのに、吟行の最中野良猫遊んだり気儘な行動をするので、俳句仲間はたまったものではない。それでいて、待つとなると三十分がリミット。遠くで雷鳴がしたら、雷好きの私はじっとしていられない。駅の伝言板に「雷が呼んでいるのでお先に行きます。では、句会場で!」と書いて俳人諸氏を当惑させるのだった。 (『火のいろに』)