過去の災害に学ぶ<3> 報道管制下で「隠された地震」 

 下には津波による浸水予測。津波到達時間関連の情報、洪水対策関連の情報を掲載しました。
 さて、前回も触れましたように1943年から1946年にかけて、4年連続で死者千人を超す地震が頻発し、そのうち、三河地震は、東南海地震のわずか37日後に発生しています。

  1943年9月10日:鳥取地震 ― M7.2 震源地 鳥取県鳥取市吉方
  1944年12月7日:東南海地震― M7.9 震源地 三重県津市島崎町など2点(津波発生)
  1945年1月13日:三河地震 ― M6.8 震源地 三重県津市島崎町(津波発生)
  1946年12月21日:昭和南地震 ― M8.0 震源地 和歌山県串本町潮岬など17点(津波発生)

 しかし、東南海地震三河地震終戦末期に起こり、日本は当時報道管制下にありました。それゆえ、地震の報道は極力抑えられ、「隠された地震」とも言われています。報道管制により、十分な情報が集まらず、その後の防災についての対応もなされぬまま、3年後の福井地震で多くの家屋倒壊で人が亡くなったとのことです。このことは、情報の公開とメディアのあり方にも大きな教訓を残しています。
 また、下にありますように報道管制の中でも記事を掲載した地方新聞の編集者・記者の良心、地方自治体の災害対策資料がなければ、記録が遺らなかったことも心にとめる必要があるでしょう。

  1948年6月28日:福井地震 ― M7.1 震源地 福井県福井市豊島

 以下は気象庁「広報ぼうさい No.44」からの引用です。

・・・三河地震は夜明け前に起きたため、多くの住民は就寝中であった。このため、倒壊した家屋の下敷きとなり、多数の死傷者が出た。被害の様相は、阪神・淡路大震災と酷似していた。しかし、地震後家屋の耐震化が叫ばれることもなく、1948年福井地震で再び、主に家屋の倒壊のため、3,769名が死んだ。最近起きた地震災害の特徴でも、その多くはすでに過去に起きている。歴史から学ばないと災害は繰り返される。
 これら2つの地震被害を隠すため、時の政府は、地震災害の詳細な記事を書くことを許さなかった。地震については、噂することも禁じられたというほどである。ただし、報道管制がしかれていたものの、全国紙に比べ、各県1紙に統合された地方の新聞には、比較的多く記事が掲載された。内閣府報告書には、各地域に残るこれらの新聞記事が多数集められている。さらに、県、市、役場、警察などの行政や学校での災害対応等の資料は、終戦直後米軍の占領を恐れ処分されたものや、近年の市町村合併の際に処分されたものが多いなかで、関係者の努力により種々の行政の文書が発掘された。また、地震からだいぶ経過した後、被災体験の手記がいろいろな地域で残されるようになり、内閣府報告書にもその一部が紹介されている。さらに、三河地震東南海地震の被災者の体験談をまとめ、絵画として残す試みも続けられており、当時の被災状況を知る上で貴重な資料となっている・・・

気象庁「広報ぼうさい No.44」(2008年3月)より引用
http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/kyoukun/rep/kouhou044_20-21.pdf



*福井地震では、さらに地震から一ヶ月後の集中豪雨(1948年7月24日〜25日)により九頭竜川堤防が決壊し、福井市総面積の5分の3の地域が浸水、罹災戸数は総戸数の40%に及んでいます。前回は、地震の後の噴火についてもすこし触れましたが、地震の後の集中豪雨による河川の決壊についても注意しなければなりません。福井市の洪水については以下のページで注意が喚起されています。

九頭竜川氾濫計算シミュレーション
http://www.kkr.mlit.go.jp/fukui/simulation/frame.htm

福井市洪水ハザードマップについて
http://www.city.fukui.lg.jp/d380/kasen/hazardmap/



*洪水対策関連の情報です。

・(財)河川情報センター「洪水関連図記号」
当HPによれば、「洪水関連図記号」は、洪水関連の情報の所在を明らかにする「アイキャッチ」としての役割を果たすもの、とのことです。

・・・現在、洪水に関する知識の啓発と円滑な避難を目的として、浸水想定区域図や洪水ハザードマップの整備が進められています。居住地をはじめとする、自分のいる場所の洪水に対する危険度(安全度)や、災害に対応した避難場所を基礎知識として知っておくことは、災害時の的確な避難行動のためには重要なポイントであり、それらの情報の普及は急務となっています。
 そこで、洪水ハザードマップに記載されている「想定浸水深」や洪水時の避難場所などの情報をまちなかに標識表示して、普段からの防災意識の向上を図る試みが始まります・・・
 
http://www.river.or.jp/pict_flood/zukigou_download.htm


国土交通省河川局「まるごとまちごとハザードマップ
http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/bousai/saigai/tisiki/marugoto/060703.pdf



*津市のある三重県防災対策本部では、「津波の浸水予測(平成23年度版)」が公表されています。各都道府県で新しい対策が出されているようなので、各都道府県のHPから検索し、一度ご覧になられることをおすすめします。以下は三重県の一例です。

津波浸水予測図一覧(平成23年度版)
http://www.pref.mie.lg.jp/D1BOUSAI/tsunami/shinsuiyosokuzu.htm

津波到達時間等一覧表(平成23年度版)
http://www.pref.mie.lg.jp/D1BOUSAI/tsunami/toutatsujikan.htm
当資料から場所により5分で津波の高さが50cmに達する地点が多々あることがわかります。この一覧表によれば、「50cm津波到達時間(分)」とは、「地震発生に伴う地殻変動後の水位を初期水位として、そこから水位が50cm上昇するまでに要する時間」のことです。この一覧表で最大津波高だけでなく、「50cmまで水位が上昇する時間」が重要事項として表記されている理由については、以下のように書かれています。
 
「50cmの程度の津波に巻き込まれると、避難が極めて難しくなることから、最大の津波到達まで決して待つことなく、早期に避難を開始し、避難を完了するまでの一つの目安となる時間としてお考えください」




【サイト内関連記事】
・過去の災害に学ぶ<2> 日本付近で発生した主な被害地震 〜 1943年からは4年連続で発生
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120408

・過去の災害に学ぶ<1> 日本全国の言い伝え
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120407

・「次は何を持ってどこに逃げれば良いか考えていた」 〜 日常的な避難意識の大切さ
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120315

・「もしものときにも負けない子どもに」 〜 子どもを対象にした防災キャンプ
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110907

・EPZ(防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲)の再検討 <3>
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110823

・浸水リスクマップ
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110818

・メディアのこころ − 「住民を励ますことのできる紙面を」
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110413/1302648885