尾城夏人の名曲番外勝負②

oshironatto2004-11-20

中川五郎さんのブログ日記を愛読している。五郎さんは、`70年頃、フォーク・リポートで不定期ながら輸入盤のコラムを書いていた。僕は、そこで、ボニー・レイット、マリア・マルダー、J・J・ウォーカー、デヴィッド・ブロムバーグなどの今も聞き続けているシンガー達を知った。五郎さんが奨めている音楽にハズレはない。そういうトコロから、日記で絶賛していた、ステファン・フォスター(あの”おお、スザンナ”を書いた人です)のトリビュート・アルバムをせっせとアマゾンへ注文してしまうのである。伝記も面白そうだなあ。『フォスターはガレージ・サウンドの先駆でもあったのだ』だもの。

●All Along The Watchtower / Jimi Hendrix (‘68年・Electric Ladyland)

ジミ・ヘンドリックスの自伝映画があるのを御存知だろうか?記憶を頼りに書くのだけど、ブラック・パンサーから『黒人としての誇りがあるのなら、B・パンサーの歌を書いてくれないか?』という広告塔としての打診を『(自分は)黒人としての誇りはある。しかし、君たちのように暴力がすべてを解決するとは思わない』と拒絶するという場面があった。おおっ!やはり、ジミヘンは正しく、美しいのである。

ジミヘンを敬遠する人は多いと思うけど、シングルを集めた『スマッシュ・ヒッツ』を聞くと、とにかく名曲揃いなのに驚く。とりわけ、ディランも大好きだと語った「風の中のマリー」は名作だ。本作は、ニューヨークのエレクトリック・スタジオで録音された彼の傑作。あり余るほどのイマジネーションと熱気を強引に真空パックしたのではないか?と思われるほど密度が高い。

この曲のオリジナルはボブ・ディラン。『John Wesley Harding』(`67年)に収録されている。イントロの緊張感溢れるカッティングと間奏の素晴らしいギター・ワークはもう絶妙だ。ジミ自身、もうこれは快心のアレンジだったのではないかと思う。ディランもこのアレンジを相当気に入ったそうだ。ザ・バンドとの共演『ビフォー・ザ・フラッド』でセルフ・カバーしているし、グレイトフル・デッドニール・ヤングもそれぞれがカバー。どのカバーもギター・パートが大胆で印象的だ。僕はそこに、ジミ・ヘンドリックスの影響を見る。