弱さの情報公開

peerclinic2014-01-28

 今朝は、朝のミーティングの時間に、みなさんの前で

  • Teamぴあ(ぴあクリニックと訪問看護ステーション不動平/ぽっけ)のスケジューリングや訪問頻度、ITT、うまくいった事例、うまくいかなかった事例などについて 
  • 多職種チームって大変だけれども可能性があるよね

について、お話をさせていただきました。

 ぴあクリニックのお仕事をお休みしてまでどうしてなごみさんに伺うか・・・その大きな目的が、チームのコンサルテーションでした。ううむ、そんなこと言われても困るなあというのが実感ではありますが、診療所が隣にあって、サロン活動していて、そしてアウトリーチやっている・・・というスタイルはなごみさんとTeamぴあと共通しています。ましてや、そこに4月から訪問看護ステーションができる・・・ということで、自分の今までの経験はみなさんのご参考になるかもしれない。

 また、恩師の佐々木敏明先生が書かれた文章を何回か読んで(すみません、それ以外あんまり読んでないんですが・・・)、自分にできるのは「弱さの情報公開」かなあって思い、自分のダメダメの体験を発表させていただきました。
 この2月1日でぴあクリニックが開院してちょうど7年。
 7年やってきたけど、こんなふうにダメダメで自分は失敗したし、葛藤が多かったです、悩みました、今だったらスムーズに理解できることがあのころは全然わかりませんでした・・・みたいなことをお伝えすることで、チーム開設2年ちょっとのなごみさんのみなさんが、「自分たちも、同じ苦労をしている」「ぴあよりうちの方がかなりマシかも(笑)」と思っていただき、そのようなことに関してオープンに話したり感じたり気づいたりできればいいかなあと思った次第です。

30分というお約束を大幅にオーバーして40分くらい話してしまいました。本当はもう少し話したかった気もしますが、事例の紹介などもあり、何時間あっても足りませんね。

縁をたぐり寄せる方?!

 午前中はぴあクリニックにいらしたことのあるOTの西内さんと一緒に訪問しました。
 単身の高齢の女性。「反応性うつ」という診断名なのだそうです。ここ数ヶ月で状態が悪化されたということで、訪問依頼があったとのこと。
 移動手段もなく、近隣に店舗もない場所です。今までどうやって生活されていたのか・・・と不思議なくらい。
 厳しい寒さの冬です。高齢の一人暮らしをされている方には過酷な環境です。
 しかも、震災もありました。今日も明日もあさっても平穏な暮らしが続くだろう、何がなくてもどうにかなるさ・・・そういった安心感を根こそぎ奪ったのが震災でもあるなあと感じました。


 ただ、そのような生活の困難さを一緒に一つ一つ解決していけば、光が見えそうなケースではあります。こういうケースは訪問による生活支援が効果的だなあと感じました。

 驚いたのは、その方の縁をたぐり寄せる力です。偶然といえば偶然なのですが、その方の訪問が始まってすぐの先週は、山形県精神科病院の看護師さんが訪問に同行しました。その方は山形出身の方で、看護師さんと山形弁で話をして、数カ月ぶりに入浴までされたそうです。
 そして、今日は私が部外者で訪問。「あんまりいろんな人が来られると困るんだよね〜」・・・確かに。
 しかし、なんとまあ、その方が今一番連絡をとりたいご家族の方が、浜松市は北区でお仕事をされているのだそうです。しかも、勤務先を伺ったら、よく訪問中にドライブしているエリアじゃないですか・・・。
「そこは立派なところですねえ、よく知っています」
とお伝えしておきました。

ぬくもりのある建物

 その後、市営馬場野山田団地に行ってきました。高齢者対象の住宅。「相馬井戸端長屋」という名前もついています。
 実際に「長屋」のような造りですし、あたたかみのある建物でした。

 木材がふんだんに使われており、それが部屋にあたたかみと落ち着きをもたらしているように思いました。梁があると、天井の雰囲気もかなり違います。
 天窓。自然光が入るし、開放的です。
 ドアの色がおしゃれです。ドアに部屋の番号が書かれているのですが、「十」「十五」など漢数字なのも気がきいています。

 こんな建物だったら高齢になってみんなと暮らすのにいいなあと思いましたが、みなさんはいかがでしょうか? 

ご家族の悩みはどこも同じ

 お昼は、大変おいしいワタリガニのクリームパスタをランチにいただきました。
 
 気力を充填した後、午後は家族相談があり、今回初めてお宅に伺うケースに同行させていただきました*1
 相談票によれば、10年以上のひきこもりの方なのですが、おそらく妄想に基づくと思われる周囲には理解できない行動多々あり、独語あり、人への過敏性あり。稀ではありますが、ご家族への暴力もあります。新居先生がここにいらしたら嬉々として往診に行きそうだなあなんて想像しちゃいました。

 ご両親からお話をお聴きしました。引きこもるきっかけ、震災時のご本人の行動、今の状態、ご家族のお気持ち・・・。かなり重篤な症状ながら、ご家族が全てを抱えこんでこられました。その苦労を切々と語られました。お母さんが語った後にはお父さん。お父さんの話が少し済んだらお母さん・・・。

 以前はよく知り合いや友人も家に来てくれた。つきあいもあった。けれども、
 本人が、家に誰かが来るのを嫌がるんです。だから、ついおっくうになって。
 それに、(自分が)出ていって話をするにしても、私らの年代だと、やれ旅行に行ったとか孫の話だとか・・・。私はそういうことしてないから、結局聞くだけだし、面白くないんですよ。それで、だんだん付き合いもなくなっていって、どこにも行かなくなってしまいました。

 自分たちの育て方が悪かったのかなあって・・・。あれこれ思うんです。


 親御さんの育て方の問題ではない、病気なんだ、ご自分を責めないでほしいということ、訪問を続けて仲良くなっていっていろいろな活動をしたり服薬をしていくことによって少しずつではあるけれども良くなることなどを説明していらっしゃいました。
 
 このようなお宅の親御さんの苦労、思い、孤立した状況というのは、どこの地域でも共通していますね。
 ただ、この地域の場合、周囲数百メートルを林に囲まれているといった物理的にも孤立しているお宅にこのようなひきこもりの子どもさんを抱えるお宅が多いそうです。街中だとそのようなお宅のいろいろな状況が周囲にもわかってしまう=周囲に説明したり助けを求めたりする必要から比較的早い時期に公的機関に相談に行ったりする。けれども、よくも悪くも発信さえしなければそのような家の状況は誰にも知られないで済んでしまう。そのため、限界に達するまで親御さんが抱え込んでしまう。
 勤勉で自助努力を良しとする地域性があるので*2、いっそう親御さんが「自分たちが必死に努力しなければ」と思い込んでしまう。

 ご本人は不意の行動が苦手で、予め「この日にこのようなことがある」と知らされていたほうが対応が柔らかいということもあり、今回はお会いしないことになりました。来週、もう一度伺うこととなりました。
 まずは関係作りからですね。
 幸い、お話を伺う限りは、訪問を重ねあれこれとやっていくうちに良くなりそうな感じの方ではあります。

 少しずつこの方がよくなられて、ご家族の負担が少なくなっていけば、ご家族がご家族自身の生活を楽しむようになっていけば・・・と願わずにはいられません。

*1:西内さんと照美さんと一緒でした。ご本人に会うにしては3人は多すぎるかもしれないということで、私はご本人に会わないということもありうるということでついていきました

*2:http://www.nihonkai.com/jh7bia/fuku/sub855.htm

蟻塚マジック?!

 通院が困難な方をどうやって医療につなげるかというのは、未治療・医療中断のケースにおける一つの大きなテーマです。
 なごみさんの場合には、まずコメディカルが何回か訪問して、関係を作ってから医師が登場するという方式をとっているそうです。
何回か行って、ある程度関係がとれたら、蟻塚先生も一緒に行ってくれるんですよ。

でも、私たちの後ろにいて、ただホワ〜ンとしているだけなんです。でもすごい求心力なんです。
最後にちょっと話をするだけなんだけど、みんな引きつけられるみたいで。
「今度、私が働いているところに来てみなさいよ〜」
とか言って。で、次に「あの先生に会いに行こうか」って誘うと、けっこうみんな「行く」って・・・。そうやって通院しちゃう人が多くて。蟻塚マジックなんです。


蟻塚先生のお名前はいろいろなところで伺いますが、例えばこんなサイトhttps://ds-pharma.jp/gakujutsu/contents/consonance/case_i/vol47.html医療や医師との出会い方としては、スムーズで素敵な感じですね。

「私、この家にいたらダメになる」

 今日の最後の訪問先は、原発から32㌔ほど離れたところにある作業所でした。その福祉法人で運営しているグループホームに、とある当事者の方が入居できないかという相談でした。
 その方(仮にYさんとします)はご家族の中にいろいろな問題があり、障害者虐待にあたりかねないようなケースでもありました。知的にも問題があり、自分の気持ちをはっきり言うということがなかなかできなかった方なのだそうです。
 なごみさんが関わってから1年以上(一昨年の11月にもその方に照美さんが一生懸命関わっていた姿をみました)。いろいろなことがあったけれども、その方が先日「私、この家にいたらダメになる」と言われたのだそうです。照美さんも前からそう思っていたということで、グループホームへの入居に向けて調整をしているというところでした。相馬市も南相馬市グループホームがちょうど新しくできるようで、Yさんもそこに入居できそうです。

  • 家族との同居
  • 家族からの自立

それがある程度自由に選択できるだけのサービスが整っていることの大切さを改めて感じます。

もちろん課題は多いしいろいろなことを調整していかなければいけないけれども、Yさんの今後の生活に明るい光がみえてきたように感じました。

 この作業所では、おいしいお味噌を作っているとのこと。南相馬市産の無農薬の大豆と米と沖縄産の塩で作っているのだそうです。虹の家とぴあのスタッフのみなさんへのおみやげにしました。楽しみにしていてくださいね♪