Wheatus/Pop, Songs & Death: Vol. 1 - The Lightning EP
★★★★
レコーディングやツアーの情報は断続的に伝わってきていたし、昨年はMC・ラーズとの共演ナンバー「Change The World (Black Precedent)」を発表(&MC・ラーズの最新作『This GiganTic Robot Kills』でも共演)したりはしていたものの、ウィータス単独名義の作品としては約4年振りとなる新作EP。
『Too Soon Monsoon』を過渡期の入口とするならば、本作は過渡期の出口である。EPという形態なこともあってか、「BMX Bandits」のようなシングル・マーケット狙いのキャッチーなナンバーは存在せず、ひたすら沈み込むようなメランコリックなナンバーが続く。だが、ブレンダン・ブラウンは相変わらずメロディ・メイカーとしては超一流で、ライヴ感満点のバンド・アンサンブルとの絡みも絶妙なのだ。SONOMAを使ったDSD録音の効果は絶大で、その音の生々しさは特筆もの。所謂「ハイファイ」なサウンドではないので、最初は面食らうかもしれないが、ドラムとベースの音圧が異様なまでに強調された、この抜けの良いド迫力なサウンドはブレンダン・ブラウンの鬼才っぷりが存分に発揮された唯一無二の凄さ。ロック・バンドにとってのサウンド・プロダクションとしては、ビートルズの『Please Please Me』に匹敵する、というのは大げさにしても、少なくともワイルドハーツの『Endless Nameless』やデイヴ・フリッドマンの一連のプロダクションに匹敵する「発明」なのではないだろうか。というわけで初聴きの際はぜひとも大音量&ヘッドフォンで!
外部のエンジニアやプロデューサーに頼らないの独立独歩のサウンド・プロダクションを確立したこともあってか、バンド・アンサンブルはこれまでになく堂々とした大陸的なスケールを獲得しており、11分にも及ぶオープニング・ナンバー「From Listening To Lightning」に顕著なように、(ブレンダン・ブラウンのお気に入りバンドでもある)ラッシュを彷彿とさせるハード・プログレ的な趣きが出てきたりしているのが面白い。昨年末にPVが先行公開された「Real Girl」も当時はそれほどピンとこなかったんだが、このEPの流れの中で聴くとしっくりきた。しっとりとしたバラードなんだけど、サウンドは超ラウドというのがポイントなのだな。ラスト・ナンバー「Texas」での暗闇から抜け出すかのようなエンディングは本当に感動的。
長尺ナンバーが多いこともあって全6曲39分と、実は『Wheatus』よりも『Hand Over Your Loved Ones』よりも収録時間は長いのだった(『Hand Over Your Loved Ones』はシークレット・トラック抜きでの計測)。というわけでEPであるにも関わらず聴き応えはアルバム級。レディオヘッドの『In Rainbows』と似たような方式での販売で、購入者自身が自由に価格を決めて(「0円」も可)公式サイトからダウンロードできるので、とりあえず最初はタダでダウンロードして試聴してみろってば。必聴。