「普天間基地問題」報道等に見る、鳩山政権への「揚げ足取り」


普天間基地移設問題で「アメリカとの同盟関係が壊れるかもしれない」「内閣総理大臣鳩山由紀夫氏のリーダーシップの欠如が問題だ」「アメリカは鳩山総理大臣に不信感を持っている」などと、「日米関係の危機」を憂い、鳩山政権を糾弾し続ける日本のマスメディア。
しかし、その報道内容には相当の「妄想」が含まれていると私は考えています。

「米大使一変、激怒」(産経)、「米、同盟協議を延期」(読売)、「普天間暗礁 同盟に影」(朝日)など、米軍普天間飛行場の移設問題では左右両派の新聞が、「同盟が危ない」という同じ論陣を張り続けている。

 ところが、これらの報道に、米大使館は呆れ顔という。

「『米大使一変、激怒』と産経は刺激的に書きましたが、そうした事実はまったくありません。われわれは外交官ですから」(米大使館関係者)

 米外交筋によれば、米国では外交官が他国の批判をすることは固く禁じられているので、こういったことはあり得ないという。

「『米、同盟協議を延期』にしても、そもそも協議のスケジュールもまだ出来ていない。出来ていないものを延期するなんてことは無理です。日本の新聞は危機を煽りたいようですが、同盟関係は幅広くかつ深い。普天間問題は同盟に影響しないし、危機でもありません。米側に取材すれば、すぐに分かることばかりなのですが……」(同前)

http://bunshun.jp/shukanbunshun/thisweek_nat/091224.html

 そんな恫喝にいちいち反応していたら何も問題は解決しない。ところがこの国のメディアは過剰に反応する。そして情けないのはその報道を鵜呑みにする政治家がいる。昔はそうした報道で政治家に食い込み、「私がアメリカ側と接点を作って上げる」とマッチポンプを専門にするゴロツキ特派員がいた。

 しかし「経済戦争」が激しかった頃のアメリカは本音では日本に一目置いていた。置いていたから色々恫喝してきた。日本側はアメリカの顔を立てる振りをしながらしっかり実利を確保した。なかなかに見応えのある交渉を行い「経済戦争」の勝者は日本だった。しかし湾岸戦争を契機に日本はアメリカに見くびられるようになる。

 1兆円を超す日本の資金提供は湾岸戦争に大きく貢献した。しかし日本は誰からも感謝されなかった。人的貢献が無かったからだと説明されたがそれは嘘である。勢いのある経済大国日本を本気で怖れるようになったアメリカは、日本が独自の中東戦略を持たず、ひたすらアメリカに協力を申し出た事で日本をバカにした。中東の石油は日本経済の生命線である。それなのに他人任せである事が分かった。経済戦争であれだけ煮え湯を飲まされたが、本物の戦争が起これば何でもアメリカの言いなりになる。そこから「日本イジメ」が始まった。

(中略)

 利権まみれの政治のせいで13年間何も進まなかった普天間問題をじっと見てきたアメリカが移設を急ぐ理由は何もない。民主党政権が誕生すれば自民党と政策が異なるのもアメリカは先刻承知である。しかしそれをただで認めてしまったらアメリカは何の利益も得られない。恫喝に怯む日本のDNAを百年以上も見続けてきたアメリカだから今回のような動きは当然である。試されているのは新政権の外交力だ。決着のさせ方でアメリカの日本を見る目が決まる。

http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2009/12/post_201.html


そもそも、普天間基地は、「海兵隊普天間航空基地」Webページの「任務」で「支援」という言葉が5回も使われていることにも表れているように、米軍の中核的機能を担っている基地ではないようです。
http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Installations/futenma.html


普天間飛行場に配備されている兵器」は、「常駐機」の合計が71機で、うちヘリコプターが56機とのこと。
http://www.city.ginowan.okinawa.jp/2556/2581/2582/2065.html


元編集者・五十嵐茂さんが、ジャーナリスト・有田芳生さんのブログに投稿されたコメントの通り、「それをここまで大げさな『国益』が損なわれる問題かのごとき現象に仕立て上げるマスコミの論調こそ一番のネック」なのでしょう。マスコミと言うより「マスゴミ」とした方が適切かもしれません。
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2009/12/post_8e76.html#comment-23795040


五十嵐さんによると、普天間基地移設問題では捏造記事もあったとか。
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2009/12/post_8331.html#comment-23726817


しかし、大した規模の基地ではなくても、住宅地のど真ん中に存在することは大問題です。写真を見て、「これはひどい」と思いました。
http://普天間基地.jp/


マスメディアは、沖縄の人々の生活を軽視し、鳩山政権の揚げ足取りにばかり執着しているように見えます。


自民党政権は基地だらけの沖縄県内での移設などという方針だったのに、米軍の問題は日本政府単独で決めることができないのに、結論をすぐに出せないことを非難する。
歴史的政権交代が実現した今こそ沖縄の米軍基地を減らす絶好のタイミングなのに、「自民党政権下での日米合意を守らないと日米関係が壊れる」と危機を煽る。
議院内閣制は内閣総理大臣の独裁ではないのに、「鳩山総理大臣のリーダーシップの欠如」を批判する。


沖縄関係以外でも、「揚げ足取り報道」にうんざりしています。


自民党政権下では野党に政府の情報をほとんど渡さなかったのに、野党時代の民主党マニフェストで示された財政に関する数値が与党になって実現できないことを問題視しても、「ためにする批判」でしょう。情報を得られなくても、マニフェストに数値目標を全く掲載しないわけにはいかないのですから。
事業仕分け」で予算を目標より削減できそうにないことも、仕方ないと思います。わざわざ官僚が「この事業は実はムダでした」などと報告するでしょうか。国会議員が官僚の抵抗を抑えてムダを洗い出すのは、どれほど大変でしょうか。
とにかく、一時期を除いて半世紀以上も政権を維持した自民党が下野し、新政権が発足してからまだたったの3カ月なのに、多くの結果を求めるのは性急だと言わざるをえません。