JR東海会長、新幹線売り込みへ近く訪米

 JR東海葛西敬之会長が今月下旬に訪米し、29日にラフード米運輸長官と会談する予定であることが判明。
(参考=47News
 アメリカのオバマ大統領は、脱温暖化投資によって経済危機の克服を目指す「グリーン・ニューディール政策」の一環として、全米の10地域(10 corridors)に高速鉄道網を整備する考えを打ち出していますが、葛西会長の訪米、会談はこの構想に対して日本の新幹線技術を売り込む狙いと見られています。
 オバマ大統領が発表した高速鉄道構想は、新たな高速交通の整備によって石油消費の削減、地球温暖化防止のほか、渋滞・空港の混雑抑制をも狙ったもので、今年2月に可決された総額7870億ドル(約73兆円)の景気対策法案に含まれる初期費用80億ドルのほか、今後5年間に毎年10億ドルを投資する計画になっています。(詳細や各種ソースへのリンクはswo(exp)の該当記事を参照。)

 高速鉄道技術において、世界をリードしているのは日本、フランス、ドイツの3カ国でしょう。中でも日本は40年以上大きな事故を起こすことなく新幹線を運行し続けてきた実績があるほか、住宅密集地を走る区間が多いことから騒音、環境対策の面でも優れており、極めて優秀な高速鉄道システムなのは間違いありません。
 しかし外国への売り込みとなると、最近はやや活発になってきたとはいえ、他国より劣勢に思えてしまうのは私だけでしょうか。車両製造から運行システムまで手がける巨大メーカーが主導し、鉄道側の要求に合わせてカスタマイズする欧米流のやり方と、運行する鉄道側の要求に応じて鉄道会社と各分野のメーカーが共に造り上げていく日本的なやり方は、それぞれ良い面があるのだと思いますが、「システムとしての高速鉄道」のセールスという面においては、インフラから車両までトータルで提案でき、意思決定機関が集中している前者のほうが有利に思えます。それがTGV、ICEの各国への活発な輸出につながっているのでしょう。
 JR東海は昨年、国内鉄道車両メーカー大手の日本車両連結子会社化しました。実際の列車運行について豊富なノウハウを持つ鉄道会社と、高い技術力を誇る車両メーカーがタッグを組んだことで、車両製造から実際のオペレーションまで含めた「新幹線システム」を売り込む準備は整いつつあるように思えます。今回のJR東海会長の訪米は、本格的な「新幹線世界進出」の時代を切り開くことができるでしょうか?ぜひ期待したいところです。




各地を走る新幹線。上から「本家」の東海道・山陽新幹線N700、台湾高鉄700T、中国CRH2