三億円事件犯人への道
終わりにあたって
ほんの遊興のために、世界の果てまで行く者もあれば、貧に窮し、わずかな移動も、ままならぬ者もいる。
自分は、後者だ。したがって、たまの休日にどこかに出かけて、写真を撮ることは、もう、できない。
いまは、1%の富裕層と99%の貧困層の時代。自分は、貧高層の代表。
よく整備された、美しいオフィスビル群、見上げるほどの巨大な高層住宅。でも、そこに、自分が、いるわけではない。貧困層だもの。当たり前だよな。
それなのに、そこに行って、高層ビルの写真を、撮ることで、あたかも、そこに、参加しているような気になって。
でも、残念ながら、そんなことすら、もはや、できなくなってしまった。
貧困層には、そんな余裕すら、許されていない。
高度成長をなしとげた後の安定期、バブル期は、違った。
自分の身の回り、公園は整備され、街は発展し、そこには輝かしい未来があった。
どうでもいい、公園には、妙なオブジェ。この程度のオブジェを制作していても、身の置場があるという安心感。
いまは、どうだろう。
まわりには、シャッター街。駅近くのショッピングセンターは、まるで、寂れ果てた地方都市。それほど、都心から離れてはいないのだけど。
いったい、どこで間違ったのだろう。どうして、こうなってしまったのだろう。
山手線新宿駅(西新宿三丁目 西参道口交差点)
ネコには、再開発は、関係ないようだ。
住宅地の中、南へ。来た道を、引き返す。
再び、甲州街道。
東へ。もう帰らなければならない。
日が暮れそう。
正月なので、静かな、日暮れ。
最初の日暮れか。とすると、昨日の日暮れは、最後の、日暮れ。
日暮れは、最後の方がいい。日が暮れて、もう、おしまい。そっちの方が、いい。
そういえば、ネコには、再開発は、関係ない。ならば、自分にも、関係ないのだな。
夕暮れ前、急いで、駅へ向かう。
(2014年1月記)
山手線新宿駅(西新宿三丁目 住宅地の中のネコ)
あちこち、更地のある、住宅地を、歩いていく。
ふと、下を見ると、ネコ。
なるほど、こんなところに、ネコは、引っ越していたのか。
再開発される前の、更地にしか、生息できないわけではないので、近場にでも、いい場所が、あれば、移ってくるだろうな。
そんな場所、いくらでも、ありそうだし。
たとえ、ここらへんが、再開発されたとしても、また、どこかへ、移ればいいのか。
(2014年1月記)
山手線新宿駅(西新宿三丁目 住宅地)
甲州街道を西へ。
しばらくして、途中、北へ曲がり、そのまま、住宅地の中、北へ向かう。
ここらへんは、たしか、バブルの頃、高層ビルが建つ予定だったのだ。
西新宿高層ビル街の、飛地みたいなものか。
ちょっと、違ったのは、住宅地、ということ。
ただ、バブルの頃ともなると、高層ビルの建設用地、住宅地に、広がってきたのだ。
だから、住宅地でも、よかったとも、いえる。
計画だと、日本一高い、高層ビル。
でも、結局は、建たなかったようだ。
都心から、離れ過ぎていたのかも。再開発は、都心に、集中するようになる。
その次は、高層住宅が、建つ計画。
景気が上向くたびに、計画が、出てくるのであろうか。
こちらも、いつしか、どうなったことやら。
(2014年1月記)