ニコ動やP2Pの規制で、アニメ産業は本当に儲けられるのか?

 また何か言われそうなエントリですが…。
 最近、WinnyやShare(仮)にアニメを流したことで逮捕されたと報じられていますが、かなり早いエンコ職人だったらしいとのことで、目立ちすぎた故の逮捕劇だったのでしょうか。ただこの逮捕劇、警察が自ら動いたからなのか、あるいはアニメ制作側やら放送局サイドからのお願いみたいなものがあったのか、それによって事情は大きく異なってくるんですよね。
 もしこれが、アニメ産業側からの要請だったとしたら、かなり諸刃の刃を実行してしまったのかな?とも思うのです。
 例えば、深夜アニメって放送局にとって、まず広告収入はほとんど期待できません。視聴率は高くても平均で5%程度ですから、その意味ではDVDの売り上げがかなりのウエイトを占めていると思います。アニメ制作会社とテレビ局の売り上げの分配がどのくらいの割合なのかはわかりませんけど、大半はそこでしょう。ただ、テレビ局がそんな小銭稼ぎのためにやるのかどうかってのはわからないだけに、何とも結論付けることは出来ませんが。
 そこで本題なのですが、ニコニコ動画やらP2Pへのアニメ動画のアップは規制される方向に進んでますが、それは本当にアニメ産業へプラスへと働くんでしょうか?
 既に議論され尽くしたことかもしれませんが、ニコ動やP2Pに流れるアニメは、確かに著作権の侵害やら、無許可での作品の垂れ流し、更にデジタル放送が普及し画質に劣化があまり無いなど、テレビ局やらアニメ制作会社にとってありがたくないものがズラリ。「見れれば良い」と言う人や、「DVDレベルの画質じゃ所詮」とか思っている人なら、エンコされた動画でも十分鑑賞だけには耐えられると思う人も多いでしょうし。DVDの売り上げへの影響は計り知れないと思います。
 ただし、アニメDVDって買ってまで見る人ってどのくらいいるでしょう? 一部の劇場版アニメなどを除いてのTVアニメのDVDの売り上げは、どれだけ売れても5万本に届かない数字です。かなりよく売れている部類に入るCLANNADでも、せいぜい3万本を越える程度です。首都圏で視聴率3%程度のアニメだと、視聴者は単純計算で120万人。それから考えると多い数とは思えません。
 この数字が、アニメ業界などからは「Winnyニコニコ動画で流されるから売れないんだ」という声に繋がっているのですが、本当にそうなんでしょうか? と言うのも、アニメの放送局があまりにも限定されていることが挙げられます。
 首都圏に住んでいる人なら実感は無いかもしれませんが、深夜アニメが全国ネットで放送されることは極めて稀です。僕が住んでいる関西でも、放送されていなかったり、日時が関東より遅いものがあったりしますから、比較的深夜アニメの放送率が高い中京圏と関西圏以外の地域は、TVで見る機会すら与えられていないんです。
 そうした地域の人たちは、何処でアニメを見ればいいんでしょう? アニメ情報誌では、動きのクオリティとかまでは確認することができませんし、内容の構成なども見なければわからないでしょう。そういう人たちが、そのアニメを見たいがためにDVD購入に踏み切るでしょうか? 原作に思い入れが凄くある人なら買うでしょうけども、見てもいないアニメのDVDを大金はたいて買う人がどのくらいいるでしょうか?
 要は、アニメにおける地域格差はとんでもなく大きくて、それを埋める手段が現状では、ニコニコ動画P2Pしか無いのです。
 もちろん、アニメが普通に見れない地域の人が、ニコ動やらP2Pやらでアニメを見ただけで満足して、そのアニメのDVDを買わない可能性は高いでしょう。けれど、中にはハマって、じゃあDVDも買おう、と言う人も出てくるかもしれませんし、それに、ブログなどで「面白い!」という記事を載せて、それを見た人から口コミが広がれば、DVD購入者が少しは増えるかもしれません。
 もし規制してしまえば、地方の人はそのアニメを視聴する機会を奪われるわけですし、更にはそのアニメがより広く見られる機会も減らすことになってしまいます。
 もちろん、P2Pでの複製動画が出回ることへの弊害は大きいと思います。が、本来であれば無償で見られるものであったはずが、地方によってはDVDを買わなければ中身の確認も出来ない状態になっているわけで。今より規制が強まれば、地方の人間はますますDVDを買わなくなると思うんですよね。買えないというべきか。
 提案とすれば、低画質の映像はニコ動なりP2Pなりで流すことを許可(黙認)すべきでは?と考えています。内容がわからなければ,DVDを買おうとしたりだとか出来ないでしょうからね。P2Pは複製し放題なので規制すべきかもしれませんけど。それと、もう一つは「一定期間が過ぎれば削除される」あたりですね。1,2週間くらいはニコ動などで流しているのを放置して、逆に広める余裕みたいなものが欲しいように思います。
 そんなわけで、P2Pなどの過度のマイナス要素を除けば、ニコ動などの規制は確実にアニメ人口を減らすことになると思ってます。まあアニメ制作側が、首都圏以外の反応とかを無視しているのなら仕方ないのですけどね。何せ首都圏だけで人口の3分の1、関西と中京を合わせたら、ほぼ半分以上に達するわけなので、その他の地域は切り捨てているのかもしれませんが。