罔殆庵 RSSフィード

2010-01-11 インターネットと中国共産党

[]『インターネット中国共産党


インターネット中国共産党』読了。

なかなか面白いスタンスというか、著者の立ち位置の本だと思います。研究者というわけではなく、企業の駐在員でもないし、外交畑でもない。もちろんジャーナリストではありますが、いわゆる特派員とか駐在記者というのともちょっと違うわけです。

ある種、塀で守られた空間で暮らし、本当に庶民の中に入っていて体当たりルポをした、というわけではないけれど、いかにも中国共産党という組織の内面を、その不合理さやそうである正当性も含めて、見聞きした体験記です。

著者もそのあたりの、自分が特権的な場に所属していることを十分自覚していますし、だからこそのジレンマも行間から垣間見られます。本書の最後に登場する、エリートである人民網の正社員と,彼らの生活を支えるお手伝いさんたちとの対比が、現在の中国の縮図をよく表わしていたと思います。

2009-09-14 中国共産党「天皇工作」秘録

[]『中国共産党天皇工作」秘録』読了。


本書は、日中双方の政治家、研究社などに丹念に取材した成果を元に、彼らの証言から構成される日中政治交流史といった本です。交流史と言ってしまうと、かなりふやけた、甘っちょろいものを連想してしまうので、むしろ「疎遠史」と呼んだ方がいいかもしれません。

本書は前半は、中国語側が日中関係を考える上で天皇の存在をかなり重視していたことを中心に述べています。その意味では本書のタイトルは正解なのですが、後半ではほぼ全く天皇は出てきません。それでも、ポスト小泉になり、既に天皇訪中は実現したので次は皇太子訪中を狙っているのが共産党側の戦略のようです。

本書を読了して思うのは、中国側には日本では考えられないほどの権力闘争があるのに、それでも日中関係をかなり大局的に判断し、したたかな戦略をもって、外務省の役人や共産党の中枢部が行なっているのに対し、日本側にはそういった先を見通すような戦略も何もないということです。

結局は、中国も日本という国を無視して進むことはできないし、そうであればなおさら友好を深めたいと思っているのは明らかなのに、投げられたボールをうまく返せない日本の政治家の不甲斐なさがなんとももどかしいものです。

2009-07-25 中国の異民族支配

[]中国の異民族支配


中国の異民族支配』読了。

このところ、ウイグルチベットでの騒乱が続いています。三農問題、格差問題と並んで中国の民族問題が、これからの中国の発展・安定にとってかなりの不安材料だということがわかります。

これらに関する日本の報道では、ウイグルチベットよりの立場に立って、横暴な中国政府のやり方を批判する論調が主流のようですが、翻って中国政府、あるいはもっと大きく漢民族は、なぜああいう考えを持っているのか、ああいう行動に出るのか、という点ではやや物足りない感じです。

本書は、漢民族辛亥革命以来、異民族(少数民族)にどう対処しようと考えていたのかを、当時の知識人政権担当者の発言・発表・公布文書などを通じて解き明かしていきます。

よくよく考えてみればわかっていたこととはいえ、辛亥革命において漢民族満洲族の駆逐を唱えていたわけで、孫文を初め多くの知識人たちは漢民族のみによる中華共和国の建国を考えていたようです。そのままいけば、大陸の中心部に漢民族の国、東北地方(いわゆる満洲)に清王朝を引き継いだ満洲族の国、そしてモンゴル国ウイグル国、チベット国が出来たはずです。

ところが革命後は、一転してこれらの異民族を含んだ大中華帝国を構想するようになります。辛亥革命満洲族支配を打破したものであるならば、これらの異民族が漢民族支配打破を唱えるのも同じ理屈であるはずなのに、現在の中国政府は異民族(少数民族)の独立志向を「祖国の分裂を図るもの」と見なして徹底的な弾圧を加えています。

この矛盾に、中国政府が真摯に向き合わなければ中国少数民族問題の解決は難しいと思われます。

2009-05-28 北京陳情村

[]北京陳情村


北京陳情村』読了。

著者は、とにかく北京の陳情村へほぼ二年通ったわけです。ただ、国際的に陳情村が話題になった時期をとうに過ぎ、著者も通うことの意義を見失いながらの訪問です。

著者は、新聞記者のように社会の暗部を鋭くえぐるわけでもなく、チャイナウォッチャーのようにその背景を分析して解決方法を提言するわけでもなく、はたまた何か解決のための行動を起こすわけでもありません。ただただ陳情村を訪れては彼らの話を聞くだけです。

そういう意味では、ルポルタージュドキュメンタリーとしては物足りないですし、そもそもそういう範疇の本ではないのかもしれません。陳情者たちの話だけではなく、政府役人(中央・地方)、北京にふつうに暮らしている市民、研究者などに取材をして、さらに肉付けをすればよかったのかもしれません。

でも、たぶん著者は最初からそういう部分を放棄しているというか、現時点で自分にできることをよくわかっているのでしょう。とにかく彼らにできるだけ近づき、何もしてあげれらないのに話を聞き、そして何もしてあげれらないことに悩み、逡巡しています。その等身大の姿が本書の最大の魅力なのではないでしょうか?

2009-04-30 諸子百家―儒家・墨家・道家・法家・兵家

[]諸子百家儒家墨家道家法家兵家


諸子百家儒家墨家道家法家兵家』読了。

この十数年来の考古学的成果を取り入れた諸子百家の概論書です。ただ、考古学的成果が、あらゆる諸子の書に成果をもたらせたわけではないので、そこをあまり期待して読んでもいけないと思います。

ある程度中国思想を学んだことがある人なら本書は気軽に読め、考古学的発見によってどの程度学問が進んでいるのかを手軽に知ることができる好著だと思います。ただ、全く初めて中国の古代思想に触れる人には、もう少し時代背景とか、各諸子の関わりや影響関係などを補足してあげないと、理解できない部分もあるかもしれません。

そういう目で見ると、最後の著者の山東旅行記は、一般向けの肩の凝らない記事ではあるのでしょうが、不必要なものであったかもしれません。

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