虚構の劇団『天使は瞳を閉じて』

虚構の劇団『天使は瞳を閉じて』

作・演出◇鴻上尚史 出演◇大久保綾乃 大杉さほり 小沢道成 小野川晶 杉浦一輝 高橋奈津季 三上陽永 山崎雄介 渡辺芳博 / 大高洋夫
8/2〜21◎シアターグリーン BIG TREE THEATER


以下、ネタばれあり。



1988年の初演以来、海外公演、ミュージカル公演等での再演が評価を受けた「第三舞台」の代表作を7年ぶりに鴻上尚史の演出で再演。
代表作というだけあって、面白かった。
冒頭のシーンなどは、福島原発事故を受けて書き加えられた箇所だろうと思われる。
透明な壁に閉じ込められたある街。そこにはテレビ局や新聞社、インターネットなどすべてのメディアがある。それらのメディアをクロスさせ、膨大な情報を操作する人々がいる。
あるバーに集う人々の物語。
ロック歌手のナオキと女優のリナの夫婦。ナオキは仕事がうまくいかず、リナがプロデューサーに頼み込んで歌手以外の仕事をとっている。次第に夫婦仲もうまくいかなくなり・・・。
歌手になるという夢があるケイ。歌手になる夢が叶わないとわかると、今度は映像作家に、次は画家に、漫画家に、とどんどん夢を追いかけて行く。最後はナオキのマネージャーになるのだが・・・。
電通に勤めるタロウ。メディアを使った企画が次々ヒットし、どんどん出世していくが・・・。
テレビプロデューサーのサブロウ。リナのことを好きで、リナを主役にしたドラマをどんどん作る。リナに頼まれてナオキの歌を主題歌にしたりもする。ドラマはヒットし、出世していくが、リナを手に入れられないことで悩んでいる。
そしてバーのマスターには、ある大きな秘密があった・・・。
それを見守るのは天使。天使はただじっと人間たちの行動を見ているだけだ。時折、そっと困っている人間に手をかざす。するとその人間はちょっとだけ前向きになる。
そして、天使から人間になったテンコは、バーで働きながら、みんなのことを応援している。
街の人々は、透明な壁に閉じ込められているので、そこから外へ出たことがない。だから皆、外へ出たい、壁を壊したいと思っている。
そしてある日、壁は壊される。
するとそこに大量の放射能が入り込み(壁の外の世界は放射能で汚染されていた)人々は死んでしまう。
それでも天使はずっとそこにいる・・・。
悲しいラストだが、悲しさよりも、前向きさを感じさせた。それは天使の独白によって語られたからかもしれない。演出もポップで、じめっとした感じはみじんもなかった。
演出がポップかつスピーディーなので、二時間の間、飽きることなく観ることができた。虚構の劇団は何度か観ているが、役者たちのレベルもどんどん上がってきている。