2009-12-16 萌えるマネジメントと弁護士のマネジメント
■[読書]萌えるマネジメントと弁護士のマネジメント 
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
- 作者: 岩崎夏海
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/12/04
- メディア: 単行本
- 購入: 28人 クリック: 802回
- この商品を含むブログ (100件) を見る
- 作者: 出口恭平
- 出版社/メーカー: 第一法規株式会社
- 発売日: 2009/08/21
- メディア: 単行本
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
1.「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」とは
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」は、ハックルベリーに会いに行くの岩崎夏海さん(id:aureliano)が書かれた、平易なマネジメントに関する本である。
主人公は、川島みなみ、野球部の女子マネージャーである。都立の進学校野野球部、弱くもないが地区予選で毎年のように早期敗退する部活に高校2年生の7月という中途半端な時期に乗り込んできたみなみは、
まともにとり合ってもらえないみなみだが、なんとかこの夢を実現するために、「マネージャー」の行うべきこと、すなわち「マネジメント」を学ぼうと、本屋に行く。そこで出会ったのは、(高校野球のマネージャーの仕事についての本ではなく)経営方法、つまりマネジメントの専門書であった。
その本の内容を、みなみは野球部を甲子園に連れて行くという目標を実現するために実践する。少しづつ変わっていく野球部は、甲子園に行けるのだろうか...。
こういった、面白い物語を進めながら、端々でドラッカーの「マネジメント」が引用される。その内容を、「みなみ」の理解を通じて、読者も理解していく。
ドラッカーというマネジメントの第一人者*1の理論を、「みなみ」が野球部の女子マネージャーとして「マネジメント」をする過程を描き出すことでわかりやすく解説するという著者の構想は、成功しているといって問題なかろう。
今では400人クラスの弁護士事務所も出てきたが、これまでは個人事務所やボス+イソ弁レベル等小さな事務所も多く、「マネジメント」への意識は低かったといってもよいのではないか。「弁護士はいい仕事をしていればよい。そうすれば、お客さんも自然についてくる。」といった考えの弁護士も多かった。
小企業はマネジメントに関心をもつ必要はないとされていたが、これはまちがいだった。
というものがある。規模が小さいからといって、マネジメントが不要な訳ではなく、小さいところほど良質のマネジメントが必要なのである。
この観点から、最近、弁護士のマネジメントについて、提言する本が出てきた。これが、「弁護士のためのマネジメント」である。
「素晴らしい事務所」を作るためには、仮に弁護士一人、事務員一人の事務所でも、マネジメントの手法を取り入れるのが効果的であり、それだけで大きな変化を生むことが可能であると提言した上で、具体的な弁護士事務所に取り入れるべきマネジメントの手法が解説されている。
興味深いことに、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」において「マネジメント」から引用されている部分と、本書の提言はかなり重複していた。
例えば、本書は「仕事の面白さを味あわせ」、「スタッフ会議と個別面談等でフィードバックを行い」、「勉強会、事件の検討会、成功事例共有等で継続学習をする」といった方法が提案されているが、これは、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」で引用されている、
マネジメントは、生産的な仕事を通じて、働く人たちに成果をあげさせなければならない。
焦点は仕事に合わせなければならない。仕事が可能でなければならない。仕事がすべてではないが、仕事がまず第一である。
働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには、(1)生産的な仕事、(2)フィードバック情報、(3)継続学習が不可欠である。
という部分とかなり重なっている。
その他、人は最大の資産("人財")である等、ドラッカーの考えを*2かなり使いながら、筆者のコンサルティング体験をもとに、弁護士事務所のマネジメントについて提言を行っている。
このような提言は、類書がないものであり、先駆的な本として、傾聴に値する。
まとめ
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」は、興味深い物語を読み進めると、マネジメントの基本がわかるという、非常に優れたマネジメントの入門書である。
この本が基本としている「ドラッカー」の「マネジメント」は、単に企業におけるマネジメントに有用なだけではなく、「弁護士事務所」においても有用である。
だからこそ、「弁護士のためのマネジメント」においては、ドラッカーの考えに影響を受けながら、弁護士事務所のマネジメントの具体例が語られている。
弁護士も、ドラッカーを読んで、マネジメントを勉強することが効果的であろう。そのための入門書としては、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を強くお薦めする。
2009-12-07 社会的抹殺の危機に瀕するSOS団!?ー涼宮ハルヒの反社条項
■[ネタ]社会的抹殺の危機に瀕するSOS団!?ー涼宮ハルヒの反社条項 
- 作者: 谷川流,いとうのいぢ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/06
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 1,025回
- この商品を含むブログ (1432件) を見る
1.SOS団とは
SOS団とは、言わずと知れた「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」のことである。
SOS団の活動は、宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことであり、宇宙人、未来人、超能力者と一緒に、町内を散策したり、合宿に行ったりといった活動を実施している*1。
2.反社条項とは
ところで、近年、反社条項といわれるものが、金融機関を中心とした多くの契約についてくるようになった。
反社条項とは、
私は、現在、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約いたします。
1.暴力団
2.暴力団員
3.暴力団準構成員
6.その他前各号に準ずる者
私は、自らまたは第三者を利用して次の各号に該当する行為を行わないことを確約いたします。
1.暴力的な要求行為
2.法的な責任を超えた不当な要求行為
3. 取引に関して、脅迫的な言動をし、または暴力を用いる行為
4.風説を流布し、偽計を用いまたは威力を用いて貴社の信用を毀損し、または貴社の業務を妨害する行為
5. その他前各号に準ずる行為
http://www.zenginkyo.or.jp/news/entryitems/news201125.pdfを参考にした
といった条項である。要するに、「自分は暴力団とかの反社会的な人でないし、反社会的行動も行いません」と表明させ、その上で、仮に違反があれば、契約が解除されてしまうというものである。
このような条項がなぜ必要なのか。それは、暴力団その他の反社会的な集団が存在し、これらが不法な利益を獲得するために、善良な市民や企業から金品を巻き上げたりするために、暴力や嫌がらせ行為を行って、一般市民の生命や財産を脅かしていることから、このような集団と取引をすることで利益を上げることは企業として許されず、よってコンプライアンスの観点から法的にも反社会的勢力を排除することが必要だからといわれる*2。
ここで、反社会的勢力の実効性を確保するためには、現役の暴力団員だけを対象にすることはできない。「もう私暴力団辞めました」と言われたら終わりではなく、反社会的勢力を辞めてからも約5年*3は依然として「反社会的勢力」として、契約を解消すべきである。
3.SOS団が危ない!?
すると、SOS団は反社会的勢力にならないか?
ここで重要なのは、反社会的勢力という概念は「暴力団」を中核とするものであり、単なるクレーマー等、暴力団と無関係の反社会性のある個人や団体は「反社会的勢力」ではないのである*4。
これを見る限り、目的のためには誘拐をも厭わない、橘京子の入っているアンチ「機関」組織*5であれば反社会的勢力になる可能性はあるが、SOS団は暴力団とは無関係だから大丈夫
...と思っていた。
金融法務事情掲載の村上他論文*6によれば、反社会的勢力の認定は以下のようになる。
まず、指定暴力団員等であれば、金融機関の自社データベースや、警察の情報提供を受けることにより、反社会的勢力性を認定できる。
問題は、「多くの反社会的勢力が隠れている」ということであり、データベース等にひっかかってこない反社会的勢力も多いのである。
そこで、反社会的勢力の認定においては、その者が取引の過程でどのような行動を行うかを把握し、そこから、「これは単なるクレーマーではないから、反社会的勢力だ」といった判断をするのである。
具体例としては、以下のような例が挙げられている。
(銀行の)支店が手続ミスを行ったところ、そのミスについて、Xが不当要求を行った。
Xは、(1)連日、数時間にわたり、来店し、または電話をかけて不当要求を繰り返していたが、(2)そのうち「誠意を見せろ」「家族はどこに住んでいるんだ」等の文言を用いて不当要求を行うようになり、さらには、(3)暴力団との関係も示唆するようになった。また、(4)行員が謝罪に訪れた際には行員を長時間拘束したことがあった。
引用元:前掲村上泰、柊木野一紀、高山梢著「反社会的勢力の認定と立証ー暴排条項該当性の実務的判断」金融法務事情1884号45頁の事例2
この場合には、(1)の段階では「単なるクレーマー」との識別ができないので、反社会的勢力とは認定できない*7。しかし、(2)や(3)の段階になれば、もはや「反社会的勢力の不当要求と同様のもの」と言え、反社会的勢力との認定が可能になる*8。
さて、SOS団はどうだろうか?
SOS団が、団としての活動のため、パソコンを必要とした。その際の取引方法を確認しよう。
まず、コンピュータ研究会の部室に赴くやいなや、唐突に「パソコン一式いただきにきました。」と伝え、驚く部員に対し、「1台でいいからパソコンちょうだい。」と言う。
当然のように断られると、「四の五の言わずに1台よこせ。」と威圧的な言辞を弄し、部長が断ると、突如部長の右腕をつかみ,同行させた朝比奈さんの胸をさわらせた上で、その様子を写真に撮影し、更に部長の背中を蹴って、みくると部長が重なりあう様子を写真に撮影し、「あんたのセクハラ写真はばっちり撮らせてもらったわ。」「この写真を校内にばら撒かれたくなかったら,とっとと耳そろえてパソコンよこしなさい。」「部員全員がこの子を集団で輪姦したって言いふらしてやる。」等と脅したのである。
いや、これは、ストレートな暴力をなるべく避ける現在の暴力団もびっくりの、「旧世代の暴力団のやりかた」そのものであろう。
もう、これだけで十分に、「クレーマーレベルを超越する不当要求」と言えよう。
そう、SOS団は反社会的勢力なのである。
まとめ
SOS団は反社会的勢力であり、反社会的勢力の構成員である涼宮ハルヒやキョン、朝比奈さん等は、少なくともSOS団加入中及び脱退後5年間は、銀行をはじめとする多くの企業から取引を拒絶され*9、また、今後SOS団に入りそうな(?)佐々木らは、加入前から「反社会的勢力関係者のお友達(関係者の関係者)」として審査が厳しくなり、加入したら最後、キョン等と同じような扱いとなってしまう。
反社条項が一般化するにつれ、SOS団は社会的抹殺の危機に瀕するのである!
つぶやき:先日(って結構前ですが)某大学の学園祭に行ったところ、「だんご大家族」というだんご屋や、片岡優希がイメージキャラのタコス屋等があって、「後輩がすくすく育っているなぁ」と実感できました。
*1:なお、過去に行って中学校のグランドに奇抜な模様を描く手伝いをしたり、宇宙人の暴走を止めたりするのは、「キョン」が個人的に行っていることであり、SOS団としての活動ではない点に留意されたい。
*2:主に、第一東京弁護士会民事介入暴力対策委員会編「業界別民暴対策の実践」8頁以下を参考にした
*3:廃棄物の処理及び清掃に関する法律14条5項2号ロは、5年以内に暴力団員であった人を欠格事由とする
*4:村上泰、柊木野一紀、高山梢著「反社会的勢力の認定と立証ー暴排条項該当性の実務的判断」金融法務事情1884号37頁参照
*6:前掲村上泰、柊木野一紀、高山梢著「反社会的勢力の認定と立証ー暴排条項該当性の実務的判断」金融法務事情1884号45頁参照
*7:正確には、反社条項の行為要件に該当するとの認定ができない
*8:正確には、反社条項の行為要件に該当すると認定できる
*9:上記の反社会的要求場面は、テレビ等で放映されたことから「公知」となっており、銀行等がそれにもかかわらず彼らと取引すれば、監督指針違反となる。なお、山土模型店等のすでに取引している企業はコンプライアンス上の疑義があるので、即時契約を解除すべきだろう。
2009-11-21 書籍の著者名の読み方を一発で知る方法〜著作権の方式主義
■[その他]書籍の著者名の読み方を一発で知る方法〜著作権の方式主義 
- 作者: 日日日,三月まうす
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2005/06
- メディア: 文庫
- クリック: 14回
- この商品を含むブログ (139件) を見る
1.著者名が読めない!
書籍の著者名が分かりにくい、読めないという事象は、比較的多く発生する。
ラノベ作者の日日日(あきら)、東北大法学部准教授の森田果(はつる)先生等、著者名をどう読むのかわからない人も多い。
そういう場合に、どうやって著者名を知るかについて、苦労している人も多いだろう。
書籍の難読な著者の読み方を調べる方法 | nanapi[ナナピ]
によれば、日本書籍出版協会の「データベース日本書籍総目録」 にアクセスして、著者を検索して調べるといった方法がライフレシピとして提唱されている。
これは、そのような苦労の1つだろう。
しかし、手元にその作者の本があれば、このような迂遠な方法をとらなくとも、まず確実に著者名の読み方がわかるのである。
2.奥付を見る!
奥付というのは、書籍や雑誌等の巻末にある、著者・書名・発行者・印刷者・発行日等が記載された頁である。
本を後ろからめくっていけば、数枚めくれば奥付頁に到達するだろう。
ここで、「著者名」は通常は漢字が書かれているだけである*1。
しかし、通常の奥付をよく読むと、
(C) XXXXX 200X
と書かれている場所があるはずである。
このXXXXXに、ローマ字で、著者名が書いているのである。
著者名の読み方は、奥付の(C)の後を読むことで一発でわかる。
3.その理由ー方式主義
一般的なライフハックサイトであれば、これで終わりであるが、当blogは、「法律ヲタク」によるサイトであるので、もう少し「法学的」な解説をしたい。
著作物が、著作権法により保護されるには、どうすればよいのか?
この問題は、少なくともほんの20年前までは、各国毎に大きく異なっていた。
日本等は、おおざっぱにいえば、「著作物を作れば、それだけで保護されます*2」というスタンスをとっていた。
しかし、アメリカ等の少なからぬ有力国は、最近まで「著作物を作っただけで保護されるなんて、余りにも保護が厚過ぎる! 著作物を保護してほしければ『Copyright(著作権)があります(なお、copyrightの略が(C)である。)』と明示して、更に『誰が著作権者で』、『いつ著作物を発行したのか*3』も明示しなければいけない。さもなくば、著作権による保護はされない。」というスタンスをとっていた。
そこで、アメリカ等においても著作権の保護を受けるため、一時期までは、「(C)+著作権者名+発行年」を明記する必要があったのである。
1989年にアメリカが日本等と同じ考えを受け入れる*4等、現在では、主要国のほとんどが昔からの日本の考え((C)なんて書かなくとも著作権により保護される)を受け入れたため、このような記載をする実益はなくなってきてはいるが、昔ながらの習慣として、今も、このような記載がされることが多いのである。
まとめ
本の奥付には、通常(C)の後に、著者名がローマ字で記載されている。
これは、過去に(c)+著作権者名+発行年を記載しなければ、米国等の主要国で著作権が保護されない時期があったことの名残である。

具体例としては、「Xが組の名前を挙げてYを脅して地上げをしたとして逮捕された」という報道がされたという事案に近いと思います(もう少し詳しく言うと逮捕だけで反社認定してよいかという問題はありますが。)。これにより、「Xが反社会的勢力」ということが公知になり、銀行の反社会的勢力データベースにXが登録されるわけです。そこで、今後Xが銀行取引をしようとすると「お断りいたします」と言われてしまうということです。
山土モデル等の中小企業が実際にそこまで資本を投下してデータベース構築をするかという問題はありますが、大企業等、対応できるところは対応するのが望ましいということは間違いないと思われます。