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2016-07-26 ポケモンGOのあんまり実用的ではない法的分析〜ポケモンHOの研究

[]ポケモンGOの法的分析〜ポケモンHOの研究 00:10 ポケモンGOの法的分析〜ポケモンHOの研究を含むブックマーク ポケモンGOの法的分析〜ポケモンHOの研究のブックマークコメント

マルチラテラル民法

マルチラテラル民法


1.はじめに


 ポケモンと法律、この2つに関係性を見いだせない人も少なくないだろう。

 しかし、約15年前、この関係を見い出した法学者がいた。


民法は、ポケモンワールド。百数十のポケモンの名前や性質・得意技などを覚えたように、民法ワールドに潜む、できるだけ多くの概念や制度をゲットし、その制度理解や解釈技法に習熟することによって、民法マスターへの道をめざそう。君のピカチュー(ママ)は何かな?」

松本恒雄他『マルチラテラル民法』v頁


 民法学者も認めるように、ポケモンは、法律と密接な関わりを持っている。



 ここで、大ヒット中のポケモンGOについては、既に実用的な側面から、法的分析が展開されている。



 例えば、町村泰貴教授の「ポケモンGOと法的問題」



ポケモンGOと法的問題: Matimulog


は、人の動きをコントロールできるといった側面等から様々な法的問題を検討している。



 また、橋詰先生の「Pokémon Goの利用規約を分析してみた」


企業法務マンサバイバル : Pok&#233mon Goの利用規約を分析してみた


は、法務パーソンらしい観点から、利用規約を分析されている。



このように充実しているこれまでの法的考察において唯一足りないのは、非実用的な法的分析である。つまり、ポケモンの世界に対して現実の法律を適用するとどうなるかをギリギリまで詰めて考える、いわば「ゲーム世界の出来事の法的分析」は、これまであまりされてこなかった。


筆者は、これまでも、アニメやゲームの法的分析ということで、例えば艦これについて


艦隊これくしょん法学(艦これ法)研究序説〜艦娘被害対策弁護団設立宣言 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


といった分析をしてきた。また、ポケモンGOについては、ツイッター(@ahowota)上で、 #ポケモンHO というタグで若干の検討を進めてきた。そこで、現段階までのテンタティブな見解を簡単にまとめたい



2.ポケモンの捕獲に関する問題

 そもそも、ポケモンの捕獲は自由なのだろうか。


 ここで、鳥獣保護法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)第8条柱書は「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。以下同じ。)をしてはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。」として「鳥獣」の捕獲等を原則として禁止する。


 つまり、ポケモンが「鳥獣」であれば、捕獲は禁止されるのである。*1


 さて、鳥獣保護法第2条1項は「この法律において「鳥獣」とは、鳥類又は哺乳類に属する野生動物をいう。」と鳥獣を定義する。


 そしてポケモンには、多くの種類があるところ、その中には、「鳥類又は哺乳類に属する」ものとそうではないものがあるだろう。


 例えば、コラッタ、ポッポ、オニスズメ等は「鳥獣」と言わざるを得ない反面、ナゾノクサコイキングは違うといった形で、鳥獣該当性はポケモンの種類毎に個別具体的に判断されるだろう。



 ポケモンを見つけたらすぐにモンスターボールを投げるのではなく、それが「鳥類又は哺乳類に属する」かを検討してから捕まえるべきである!


3.ポケストップにおけるアイテム等の取得

 ポケストップでは、様々なアイテム等を取得できるが、これはどのように判断すべきだろうか。


 もしこれが誰のものでもないことが確定していれば、無主物の先占により、そのポケモントレーナーが所有権を取得する(民法239条1項「所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。」)。

 ただ、本当に誰のものでもないのだろうか。


 この辺りは、微妙なところがあるところ、もし本当は誰かのものであれば、それを自分のものにしてしまう行為は占有離脱物横領罪という犯罪になってしまう(刑法254条「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」)。


 そのリスクを取れないということであれば、なすべきことは、遺失物の拾得に準じた手続を取ることである。


 つまり、遺失物法第4条に従い、これを警察署長に提出しなければならないだろう。その後、公告後3ヶ月以内に所有者が判明しない場合にはじめてトレーナーのものとなる(民法240条)。


4.ゲットしたモンスターを博士に送る

 ゲットしたモンスターは、ウィロー博士に送ると、「アメ」が届く。


 この「博士に送る」行為がどのような法的意味を持つのかは、なかなか難しいところである。


 1つの説は、交換契約説であり、アメとポケモンを交換(民法586条)しているという見解である。これは一見自然なように思われる。



 しかし、アメはどこから来るのかという問題がある。ポケモンを捕まえる元からポケモンが持っていることもあること、当該ポケモンの種類に対応したアメがあること等に鑑みると、2つ目の説として、ポケモンからアメが出て来るのではないかという仮説が成り立つ。それがポケモンに苦痛を与えて体内から吐き出させている*2のか、それとも、ポケモンの体を煮詰める等の加工をすることで生産しているのか*3等は分からないものの、この場合には、準委任契約(民法656条)ないしは請負契約(民法632条)に基づく加工がなされたといえるだろう。原則として加工後に生じたアメも元のトレーナーの所有物である(民法246条)。


 なお、博士がアメを作るにあたり食品衛生法52条1項の許可を得ているかも問題であろう。


5.ゲットしたモンスターでのバトル

 ゲットしたモンスターでバトルを繰り広げるのは、決闘罪決闘罪ニ関スル件参照)にはならないとしても、「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた」(動物愛護法44条1項)として、刑罰を科される恐れがある。ここでいう「愛護動物」は「牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」(動物愛護法44条4項1号)または「前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」(動物愛護法44条4項2号)である。闘犬については、伝統行事として社会的に認容されているならば禁止されないと考えられているようであるが、流石にポケモンのバトルは伝統行事とは言えないだろう。


 さらに、各地では、動物の戦いを規制する条例を設けているところもある。東京都であれば闘犬・闘鶏・闘牛取締条例が「犬、鶏、牛その他の動物を互に闘わせてはならない。」(闘犬・闘鶏・闘牛取締条例1条)としており、動物ポケモン全般におけるバトルが禁止されている



まとめ

 コンプライアンスを重視する遵法精神溢れるポケモントレーナーは、

ポケモンをゲットする前にポケモンの種類を確認し、

・ポケストップで獲得したアイテムについて遺失物法所定の手続を取り、

・バトルをする際にも、ほ乳類、鳥類、爬虫類を避ける

等の措置を講じることになるだろう。



これは一見煩瑣だが、今や弁護士が手に手にスマホを持ってイノシシ狩りならぬポケモンGOに興じる時代である。

Schulze BLOG:日弁連臨時総会潜入レポ19

日弁連臨時総会,イノシシに罠をしかける若手弁護士 : 弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

https://www.bengo4.com/other/1146/1305/n_4403/

今後は、法クラポケモントレーナーポケモンGOにおけるコンプライアンスの徹底を先導することを期待したいところである。


いずれにせよ、ポケモンGOの法的考察は始まったばかりである。今後も皆様にご指導を賜りながら、考察を進化(ママ)させて行きたいところである。よろしくお願いしたい。

*1:なお、弓矢を射掛けたが、当たらなかった場合でも弓矢による捕獲とする最高裁判例(最判平成8年2月8日刑集50巻2号221頁)によれば、モンスターボールの投擲が下手で、ポケモンを発見したのにHITさせられず、捕まえることに失敗した場合であっても、鳥獣保護法によって原則として禁止される「捕獲」行為に該当するだろう。

*2https://twitter.com/terayasan/status/757208653736792066参照

*3:この場合、ポケモンの種類によっては化製場等に関する法律の許可を得る必要があるかもしれない。

2016-07-25 ビジネスロージャーナル9月号が刊行されました

[]辛口法律書レビュー連載第2回が掲載されたビジネスロージャーナル9月号が刊行されました 01:23 辛口法律書レビュー連載第2回が掲載されたビジネスロージャーナル9月号が刊行されましたを含むブックマーク 辛口法律書レビュー連載第2回が掲載されたビジネスロージャーナル9月号が刊行されましたのブックマークコメント

 辛口法律書レビュー連載第二回が掲載されている、ビジネスロージャーナル9月号が刊行されました!

 連載第1回は、

遂に始まった“刺客”の連載。 - 企業法務戦士の雑感

 等、様々な方に取り上げて頂き、大変感謝しております。

 9月号は、より多くの判断材料を提供するという観点から、これまでのような10冊の紹介ではなく、メインの10冊に加え、「人によっては参考になるかも」というプラス10を提供しています。

 

 皆様からは異論・反論等もございますでしょうが、大歓迎ですのでメールアドレス(ronnor1あっとgmail.com)かツイッター(@ahowota)までよろしくお願いします。

まとめ

連載第2回が終わり、現在の予定の半分まで来ました。残り2回も、定番だけではなく、「こんなのがあったのか!」という驚きを与えられる本を広くご紹介して行きたいので、どうぞよろしくお願いいたします!

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/ronnor/20160725

2016-07-18 外資系法務の憂鬱

[]外資系法務の憂鬱〜国内系企業の法務との相違点と乗り切り方のコツ 23:58 外資系法務の憂鬱〜国内系企業の法務との相違点と乗り切り方のコツを含むブックマーク 外資系法務の憂鬱〜国内系企業の法務との相違点と乗り切り方のコツのブックマークコメント


国際法務の技法

国際法務の技法


1.はじめに

外資系法務は憂鬱である。


国内系企業と共通する部分もあるが、それにプラスして、様々な追加的な事項・要素が存在する。



外資系法務については、


外資系企業における電話会議サバイバル術〜法務部を念頭に - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


で、電話会議のサバイバル術に限定して、私の経験を少しだけ公開したところ、思わぬ好評を頂いた。


また、最近は法務系LTに130人もの参加者が申込み、参加枠に入れなかった人が補欠待ちをする大人気ぶりと聞く。


法務系ライトニングトーク(第4回)@阿佐ヶ谷ロフトA : ATND


これは、法務において、社内では相談しにくいテーマについて、外部の人と情報交換したいというニーズがあることの現れであろう。


このような点を踏まえ、以下、外資系法務一般について、国内系企業の法務との相違点と乗り切り方のコツという観点から、簡単に経験をお話ししたい。




前回とほぼ同様の想定事例を挙げよう。

 あなた(山田太郎)は、日本企業法務部(@東京)で3年間働いた法務パーソンである。

 少し前に転職し、同業の外資系企業の法務部(@東京)で働き始めた。

 あなたが働いているのはハゲタカジャパン株式会社(「ハゲタカ・ジャパン」)であり、ハゲタカ・ジャパン法務部は、一定以上の重要事項について、米国の親会社であるHagetaka Ltd. (「ハゲタカ・グローバル」)の法務部の決裁を得なければならない。

 法務部の伊藤部長は、帰国子女でJackというアメリカンネームを持っている。法務部には元々大手事務所所属で、米国留学を終えて戻ってきた後、ハゲタカ・ジャパンに転職したインハウスの佐藤洋子先輩がいる。佐藤先輩は元々は契約法務を中心に全てを担当していたが、最近、訴訟が起こって、佐藤先輩一人では到底対応できないため、訴訟担当としてあなたが三人目の法務部員として入ってきた。


以上は、 #外資系法務の憂鬱 タグで@ahowotaアカウントからつぶやいたツイッターの投稿をベースに、dtk1970様をはじめとするフォロワーさんからの助言を踏まえてまとめなおしたものになります。色々とご助言ありがとうございます。(ただし内容の誤りについてはすべて私、ronnorの責任です。)


2.レポートラインとジョブディスクリプションの重要性

 まず、入社にあたって気をつけるべきは、レポートラインとジョブディスクリプションである。

 レポートラインというのは、「誰に報告・連絡・相談しながら仕事を進めて行くのか」ということだが、外資系の場合そのレポートラインに対して責任を持って仕事をするという要素が非常に強い。この場合、あなたは伊藤部長に対してレポートをしなければならない、つまり伊藤部長があなたの「上司」ということになるだろう。この程度であれば、そんなに難しくないが、例えば伊藤部長は、ハゲタカ・ジャパン社長にレポートするだけではなくハゲタカ・グローバルのジェネラル・カウンセル(GC)にもレポートしなければならないかもしれない。

 

 ジョブディスクリプションというのは、あなたが責任を持つべき業務は何か、ということである。契約書上に通常これが明記されているが、あなたをハゲタカ・ジャパンで受け入れた経緯に鑑みると、基本的には、トランザクションは佐藤先輩、訴訟等の紛争対応は、あなたということだろう。外資系でも日本のオフィスだと、これが多少緩く、佐藤先輩はあなたを優しく助けてくれるかもしれないが、特に外国では厳格に「自分はジョブディスクリプションにある仕事しかしません」という人が多い印象である*1


3.上司の立場を考える

 このような外資系法務では、常に上司に気に入られるよう、仕事を進めていかなければならない。ここで、上司に気に入られるというのは、別に上司と同じ趣味を持つとかそういうことではない。


 要するに、上司の立場を考えて仕事をするということである。


 伊藤部長は、ハゲタカ・グローバルのGCという、日本法や日本の訴訟について何も分かっていない人にレポートしなければならない。レポートをする際には、「自分は何も分かっていない」というのではダメであって、「自分はハゲタカ・ジャパンの法務においてそつなく重要な問題とそのポイントをつかんでおり、その処理も適正である」ということを常に証明し続けなければならない*2。そのためには、各案件の処理状況に関する十分な情報を知っておく必要があり、また、当該処理が適正であることについて実体及び手続の双方につき説明できなければならない。


 この観点からは、伊藤部長への報告の頻度や内容は、どうすれば、伊藤部長がハゲタカ・グローバルのGCへの報告等をしやすくなるのかという観点から配慮することが望ましい。各案件の重要性や、案件の数にもよるが、いつも詳細な報告をするのではなく、例えば、「エグゼクティブサマリー」といって1枚ものくらいの英文で要点をまとめた資料を作り、伊藤部長がそのままこれをハゲタカ・グローバルのGCに送って説明できるような形にしてあげると喜ばれるかもしれない。こういうことを「想像」した上で、上司には「こんな形で報告するということではいかがですか?」と聞いてみよう。


 部下は上司のことを気にかけているが、それと同様に上司もその上のことを気にかけているのであり、そのような上司の「気持ち」ないしは「立場」を汲み取って対応をすることが、外資系法務において重要と言えるだろう*3



4.内容・形式・期限の確認

 外資系であれば、基本的にはレポートライン基づいて指示が降りて来る。要するに、伊藤部長が指示をして、あなたがその指示に従うということである。

 これは、国内系でもあまり変わらないかもしれないが、指示があれば、その場でその指示の内容・形式・期限を確認すべきである。


 ハゲタカ・ジャパンのような法務部の三人全員が日本人という環境であれば、日本語で指示がされることが想定されるが、例えば社内ルールで「メールは全て英語で行う」というルールがあれば、英文メールで伊藤部長から指示がされるかもしれない。

 こういう場合に、あなたの英語力によっては、その指示が十分に理解できないこともあるかもしれないが、その場で即確認をすることで、後で「そういえば、あの指示っていつまでに何をどうすればいいんだっけ。。。」という状況を作らないようにしなければならない*4


5.根回し

 3年目で転職したという状況であれば、まだあまり社内政治に本格介入する必要はないかもしれないが、それでも初歩的な「根回し」はできるようになっておく必要がある。このような根回しの重要性は、国内系でも外資系でも変わらない。


 例えば、日本人(例えばハゲタカ・ジャパン)と外国人(例えばハゲタカ・グローバル)の双方が参加する会議(電話会議を含む)で、事前にハゲタカ・ジャパン内で意思を統一せず、「出たとこ勝負」で対応すると、あなたの発言について会議の中でハゲタカ・ジャパンの他の部門から異論が出る等「後ろから鉄砲を撃たれる」状況になることもある。


 特に、「日本法上の特殊な問題があるからハゲタカ・グローバル(及びハゲタカ・ジャパンの営業)がやりたい形でビジネスを進めることができず、方針を修正せざるを得ない」ということをハゲタカ・グローバルに説明し、説得するというシチュエーションでは、ハゲタカ・ジャパンの営業は、実は内心ではハゲタカ・グローバルのやり方でビジネスを進めたいのかもしれない。事前に詰めておかないと、会議で、ハゲタカ・グローバルがハゲタカ・ジャパン法務部の説明に異論を示した段階で、ハゲタカ・ジャパン営業がハゲタカ・グローバルに同調し、ハゲタカ・ジャパン法務部が孤立するといった状況もあり得る


 そこで、まずは事前にハゲタカ・ジャパン営業部と話をつけ、「ハゲタカ・ジャパン」が一丸となってハゲタカ・グローバルに対応するという形を取れるようにしなければ、うまく説得できないことも多いだろう。



6.法律事務所の活用

 ハゲタカ・ジャパンは多くの場合国内系の法律事務所と、外資系の法律事務所の双方を活用することになるだろう。

 外資系といっても様々であるが、ハゲタカ・グローバルと強い信頼関係*5を持ってやっていることから、「日本であれば通常こういう処理になるが、それをハゲタカ・グローバルに説得するのは容易ではない」といった状況で、当該事務所の東京オフィスに意見書等を依頼することで、「ほら、●●事務所もこのようにおっしゃってますよ」等として、説得をしやすくなるという効果があるだろう。また、日本法だけではなく、外国法の問題も生じている場合、一般論としては外資系事務所が相対的に強いと言えるだろう。



 これに対し、一般論としては、純粋な日本法の問題、特に訴訟等は国内系の法律事務所に強みがあるように思われる。

外資系企業における電話会議サバイバル術〜法務部を念頭に - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

 において、スキヤキ法律事務所という国内系法律事務所が登場していたのは、そのような理由からであろう。

 なお、ハゲタカ・グローバルが、国内系法律事務所をなぜ使うのか等と利用に難色を示す場合には、外資系法律事務所からも一人入ってもらって監督・助言をしてもらう等色々な対処方法があり得るだろう*6



7.英語

 ハゲタカ・ジャパンの環境であれば、日常的に英語でのリーディングとライティングが発生する(報告書等)だろうが、スピーキングリスニングが発生するのは、主に会議(電話会議)の場合と、ハゲタカ・グローバルの重役による東京オフィス訪問*7といった場合と思われる。

 このような、スピーキングリスニングの機会があまり多くないものの重要な機会である場合には、「今ある現状の英語力でなんとか通じさせる」ことが重要である。

 その際には、


・ゆっくりと話す

・はっきりと話す

・大声で話す

・身振り、手振りを交えて話す

・結論を先に説明し、それから理由を説明する


といった方法が推奨される。


 なお、英語力の度合いにもよるが、英語で一番苦しむのが「謝罪文」である。そもそも、外資系では言質を取られる文書を出したくないという意向が強いので、そういう方向の文書を出すことそのものについて否定的なことを言われる場合も多い。日本では、この種のトラブルを穏便におさめるためには、事情を説明し、相互に協力を求める必要があるところ、そういう趣旨のものであり、法的責任を認めるものではない等々散々言ってなんとか出すことを説得すると、後は「何を書くか」である。

 これは、本当に英語力と日本語力の双方が問われる「総合芸術」だと思っている。何しろ、社内向けには英文で「我々は責任を認めていません!謝っていません!」と説明すべきであるが、逆に相手との関係ではできるだけ謝罪的なニュアンスの強い和文を作らなければならない。その英文と和文の間において「誤訳」と言われない程度の関係を保ち続けるのはまさに芸術の域であり、ノンバイリンガルにとって、これほど難しい業務はないと思っている。

まとめ

外資系法務の憂鬱ということで、国内系を少しやって外資系に転職する方を想定して、色々と外資系法務を回して行く上で重要そうなことをまとめてみた。

考えてみると、これらは「コミュニケーション能力」と総称することができるだろう。

国内系で求められる日本法の理解や日本における契約実務の理解に更に上乗せしてこのようなコミュニケーション能力を求められ、しかも強いプレッシャーの下にある外資系法務はまさに「憂鬱」であるというのが個人的実感であるが、インターネット上では同業者の方や隣接業種の方にいろいろとアドバイスを頂いている。今後とも引き続きご指導の程をよろしくお願いしたい次第である。

*1:日本ではそこまで大きな問題にならないことが多いものの、例えば、ジョブディスクリプションと異なる仕事を行って、それがトラブルになった場合、上に説明できないという状況が生じることもある

*2:さもなくば。。。

*3:そういう意味では外資系でも「空気を読んで仕事をする」ことが求められるのである。

*4:なお、御前会議で英語で指示された場合等でも、「自信を持って」確認をするのがよい。自信ない感じで話すと、「できない」という印象を与えるので注意が必要である。

*5:グローバルに一定量の仕事の発注を約束した上でボリューム・ディスカウントをもらっていることもある

*6:これは予算等とも関係するだろう。

*7:これが、最初はアメリカ本社、次はアジアパシフィックGCが来たと思ったら次はLitigationのトップが来て等々なかなか接待側が大変なことがある。