アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

当サイトは、法律ヲタ&アニヲタな元法学部生の日常を描くblogです。
QB被害者対策弁護団として、「アニメキャラが行列を作る法律相談所」を総合科学出版様から刊行させていただきました
「QB被害者対策弁護団」として魔法少女まどか☆マギカ同人誌
「これからの『契約』の話をしよう」「ミタキハラ白熱教室」を刊行しました!

C81金曜東へ59bに出展し「見滝原で『労働』の話をしよう(ベータ版)」を頒布します!

弁護士法74条に基づく注記:「QB被害者対策弁護団」は、架空の都市、「見滝原町」において
活動する弁護団であり、現実の世界において法律相談その他法律事務を取り扱いません。

2017-01-15 ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書第3回

[]ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第3回法務の役割? 23:16 ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第3回法務の役割?を含むブックマーク ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第3回法務の役割?のブックマークコメント

1.はじめに

 書き始めてから気付いたのですが、この連載、「時間軸がほぼ現実と一緒のストーリー展開」なのですね。その意味は、連載を休むと「真夏に真冬の話を書く」という非常にお寒いことになるということですので、できる限りオンタイムに書いていきたいと存じます。

 そもそも次何を書くかを全く考えていない*1「行き当たりばったり連載」ですが、第3回は「法務の役割」です。


ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第1回 自分が「即戦力」ではないことを理解する - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第2回依頼・相談を受ける際の対応 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


2.ストーリーパート



登場人物

僕(山田太郎)  1年目のインハウス。修習が終わってそのまま入社したばかり。

井上摩耶先輩   5年目の先輩インハウス。美人だが性格がキツい。

大越課長     我ら法務課の課長。





 12月に入社した後、あっという間に正月休みを経て1月になり、「人事・総務部門の新年会兼忘年会以降入社の新入社員歓迎会」というよく分からないイベントが開催された。そんなに頻繁に新しい社員が入社する訳でもないので、定例の飲み会の際に歓迎会を兼ねてしまえ、ということなのだろう。一次会(歓迎されるはずの僕もきっちり4000円を拠出させられた)が終わった後、井上先輩に近くのバーまで連れ出された。


「キミも入社してもうひと月。法務の仕事にも、もう慣れたかね?」


ウイスキー・ロックのグラスを唇に当てながらそう聞く井上先輩の顔には「ノー」という回答を期待しているかのように、いたずらっぽい笑みが浮かんでいた。


「いえいえ、まだまだ分からないことばかりです。パソコンに向かって契約書を直したりする仕事だと思ってたら、いろんな人とお話をする仕事が多くてビックリしました。」


こういう場所に慣れていないので、とりあえず頼んだハイボールを飲みながら、実感をそのまま口にする。


法務の主な仕事としては、今やってもらっている契約書チェックのような、トラブルを未然に防ぐための予防法務と、トラブル発生後に迅速かつ円滑な解決を図る臨床法務がある。この他に、法務的観点を経営戦略・事業戦略に活かす戦略法務もあるけれども、うちの会社じゃあまりそういう仕事はないし、あってもキミみたいな1年目が担当することはあまりないだろう。」


うんうん、と頷きながら井上先輩は満足そうに言葉を紡ぐ。


「そして、臨床法務でも予防法務でも、重要なのは事業部門の人とのコミュニケーションだ。それは、なぜか分かるかね?」


「えっと、きちんと必要な情報をもらわないと適切な法的対応について判断ができないからですか。」


 前回井上先輩に恐ろしい目にあった時のことを思い出しながら、こう答える。


「それはミクロ的な理由にはなるけど、マクロ的な理由ではない。もっと大きい理由は、法務の役割にある。」


法務の役割、ですか?」


「そもそも、営業にとって、法務の印象としては『うるさい』、『面倒』というのが定番だ。先方の契約雛形でそのままサインすれば一瞬で売上げが立ち、ノルマが実現できるのに、そこに法務が口を挟んで、法的なチェックするとか弁護士先生に見てもらうからといってしばらく待たせた上で『ここはこう直して』と事細かに言ってくる。ビジネスは遅れるし、先方との面倒な交渉が発生する。数は多くないけど、時には営業がやりたいビジネスについて『やめろ』ということだってある。」


営業の立場に立って考えると、確かに「行く手を阻む邪魔者」という印象を持たれてもしょうがないだろう。


「えっと、臨床法務はどうなんですか? トラブルが生じて『困りました、助けて下さい!』と言って駆け込んで来るシチュエーションであれば、法務ありがたみが分かるんじゃないでしょうか?」


ちょっと思いついたことを、口にしてみる。


「確かに、事業部門では到底解決不可能な大きな法的問題が発生してから法務部門が対応にあたるというシチュエーションでは、もしかすると法務に『助けてもらう』という感覚の事案もあるかもしれない。でも、そんなタイミングで相談されても、もはや『手遅れ』で、後はどう『損切り』するかだけの問題という場合も多い。より良い解決を図るという意味では、最善はトラブルの種がまだ芽吹く前、そこまでいかなくともまだ小さい芽の段階で法務に相談してもらうことが望ましい。でも、その段階では、事業部門は『まだまだ行ける、大丈夫』と思っているかもしれない。そこをどうやって相談してもらうか、そして仮に相談してもらえたとしても、『行ける』と思っている事業部門をどう『これはマズイので、手遅れになる前に対応しましょう』と説得するか、という意味では、予防法務に似たところがある。」


「そうすると、法務の役割って、前向きに進もうとする事業部門に逆らって、後ろ向きに進もうとするってことになる訳ですか。」



「キミにしては良い質問だな。確かにそういう認識の事業部門の人も少なくない。でも、そんな足を引っ張るだけの法務部門だったら、会社にとってその存在自体不要ではないかしら?」


井上先輩の口角が少し緩み、また言葉を紡ぐ。


「私は、会社の目的は『健全に発展して行くこと』だと考えている。『持続可能な発展』という言葉を言う人もいる。要するに今だけよければいい、利益だけ上げればよいという短期的なものではなく、長期的に続けられるような発展をすること。これが株主、従業員、取引先等のステークホルダー全員にとって一番有益なはず。そういう中で、事業部門の『今早く売上げを立てたい』というだけの論理で会社を動かしていいのかしら?


「それはだめ、です。」


その答えはすぐに分かった。


「そう。その意味は、法務部門も事業部門も、本当は同じ方向を見ている、ということ。事業部門は会社の『発展』のために頑張るけれど、それが『健全』かどうか『持続可能』かどうかを考えるのはあまり得意ではない。」


だからこそ僕たち法務部門が必要なんですね。」


井上先輩が我が意を得たりとばかりにうなづく。


「そう、法務部門と事業部門が信頼関係を構築して、『健全な発展』『持続的な発展』に向けて手を携えて進んで行んでいくのが法務部門と事業部門の理想の関係。」


「じゃあ、法務コミュニケーションが必要なのも。。。」


井上先輩が僕の言いかけた言葉を引き取る。


「同じ方向を向いてやっていくということは、『健全性』『持続性』の観点から言うべきことは言わないといけないけれども、『ノー』というだけではなく、法務リスクを低減しながらビジネスを前に動かしていける修正案・代替案等はないか』等、ビジネスや会社の『発展』のための前向きな方向性をできる限り考えていかなければならない。それが、事業部門との信頼関係の構築につながる。そのためには、法務知識・経験とビジネスの知識・経験の双方が不可欠で、その際、私たち法務はビジネスの知識・経験が不足しているという現実を正面から受け入れ、事業部門の人達の持つビジネスの知識・経験を借りなければいけない。そして、だからこそ」


「「法務コミュニケーションが必要。」」


思わず二人の声がハモる。「もしかして、自分は今後法務でなんとかやっていけるのではないか。」井上先輩の戦略に乗せられているだけかもしれないが、そんな感覚が芽生えて、胸の奥が熱くなった。



3.解説のようなもの

 「法務の役割とは何か」というのは昔から色々論じられているテーマであって、色々な方がいろいろなことをおっしゃっていますが、個人的に重要だと思うのは、井上先輩のいうように、法務部門も事業部門も同じ方向を向いている」ということです。法務部門は、決して事業部門の足を引っ張る悪い輩ではないんですね。逆に事業部門にそういう風に思われてしまったら、事業部門から気軽に相談をしてもらって問題の芽を手遅れにならないうちに摘み取る、なんてことは到底不可能です。


 問題は、なかなかそのことを事業部門が理解してくれない、ないしは頭では理解していても、具体的な案件で「これは法務的リスクがあるのでダメです」といわれた場合に、そのアドバイスを簡単に聞き入れてくれないということですね。


 それに対する対応策は色々な法務の先輩方がそれぞれにお持ちだと思いますが、私の考えは(できるだけ)「前向きにビジネスを進められる代替案や修正案がないかを一緒に検討する」ということだと思います。そして、法務部門だけで代替案や修正案を考えても、(その法務パーソンのビジネス経験にもよりますが)なかなか有効な案は出てこないので、事業部門がビジネスの知識・経験を、法務部門が法務知識・経験をそれぞれに持ち寄って、「ああでもない、こうでもない」と話しあうしかないのではないかと考えています。そして、このような過程を通じて、事業部門の人に「法務というのは、ビジネスを前に進めようと真剣に考えてくれている」と思ってもらうことこそが、事業部門と法務部門の信頼関係の構築のための王道なのだと思います*2



まとめ

 正月から始めた連載も第3回になりました。皆様、特にdtk様の御指摘を踏まえ、加筆修正をしながらよりよいものとしていきますので、法務の諸先輩方の忌憚なきご意見・ご批判をお待ちしております。


(なお、コミュ障の筆者に言わせれば、「コミュ障な人は果たして、法務の道を進むかどうか真剣に考えた方がいい」です。その理由は上記で述べた通りです。しかも、年次が上がるとマネジメントという問題まで出てきますし。。。)



ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第1回 自分が「即戦力」ではないことを理解する - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第2回依頼・相談を受ける際の対応 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

*1:そもそも何回連載かも考えていない。。。52回ですかね?

*2:実際には、法務の役席者クラスになると、硬軟両面、表裏双方等様々な手法や社内人脈等の様々な資源を使い分けて海千山千の営業部長クラスを説得する手練手管があると聞いておりますが、まあこの連載は「法務一年目」ということで高度に社内政治に入り込んだ手法をご紹介することは遠慮させて頂きます。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/ronnor/20170115

2017-01-08 ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書第2回

[]ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第2回依頼・相談を受ける際の対応 20:16 ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第2回依頼・相談を受ける際の対応を含むブックマーク ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第2回依頼・相談を受ける際の対応のブックマークコメント


1.はじめに

「ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書」と題した、法務パーソン向け記事の第1回につきまして、ご好評を頂きまして、どうもありがとうございます。また、dtk様及び経文緯武様には貴重なコメントを頂きました。どうも、ありがとうございます。



ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第1回 自分が「即戦力」ではないことを理解する - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第3回法務の役割? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


実際の仕事を始める前のロースクール生の方にも、いわばNEW GAME!』の法務*1のような感じで楽しんで頂ければと思っております。



さて、今回のテーマは、依頼・相談を受けた際の対応です。




2.ストーリー


「キミね、まさか、こんなんで給料もらえるとでも思ってるの?」


井上先輩の美貌が怒りにひきつっている。


僕は、司法修習を終えてすぐにIT企業の法務部門に入社した。とはいえ、「法務部」という組織はなく、「総務部法務課」。課長と5年目の井上先輩、そして僕という3人だけの小所帯だ。


法務用の研修プログラムはないということで、1週間、井上先輩に命じられて雛形の読み込みを行った。そしてその次の月曜日に事件は起こった。



井上さん


秘密保持契約の作成をお願いします。


相手方はABC産業(本店所在地東京都●●区××△△代表取締役社長□□□□)で、目的は共同開発です。


できれば本日中でよろしくお願いします。


営業第一部 佐藤



こんな営業からの「よくある」メールを井上先輩に転送してもらい、僕は実質的な「初仕事」を始めたのだった。



秘密保持契約。NDAやCAとも呼ばれるが、どの会社でも使われる比較的オーソドックスな契約形態だ。「研修」用にと、比較的簡単なものを井上先輩が割り当ててくれたのだろう。そう思って、先週読んだ雛形の中から秘密保持契約の雛形を探して、佐藤さんのメールにある情報を埋め込んでいった。そして、「成果物」を井上先輩に送った瞬間、井上先輩に罵倒されたのである。



「は、はあ。何がいけなかったのでしょうか。。。」


「何がって。。。雛形の空欄に固有名詞を入れるだけで仕事をした気になるなんて、それでも法務パーソン!?


鬼の形相を見せる先輩*2


「す、すみません!」


ここはひたすら謝るしかない。


「そもそも、佐藤さんからはこの事案の背景事情とかを聞き取ったの?」


「えっと、まだ。。。です。」


「やっぱりね。」


井上先輩は大きなため息をついた。



法務に相談や依頼する際に必要な情報を全部出してくれる事業部門の人なんていないわ。もしいるとしたらベテラン法務パーソンが事業部門に配転された場合くらいね。必要な情報を聞き出す前に作業をしたって、そんなの単なる時間の無駄。だから、相談や依頼を受けたらすぐに『どんな情報が必要か』を考えて、これを聞き出す。これは法務パーソンが身につけるべき習慣のイロハのイよ。」


具体的には、どういう情報を聞き出せばよいのでしょうか。雛形の空欄のうち、目的も相手の会社の情報も分かってますから、後は契約締結日とかを聞けばいいのかな?」


僕が大真面目にこう言うのを聞いて、井上先輩は頭を抱えた。



「困ったわね。。。抽象的に言えば、法務リスクは何か』を聞き出して、それを成果物、今回の場合は秘密保持契約書に反映する、これが基本。」


「なるほど、佐藤さんに『この事案の法務リスクは何ですか?』と聞けばいいんですか?」


「う〜ん、確かに、最初の質問として『どういう背景でこの案件が発生したのか』とか『何か気になることはあるか』といった5W1Hのオープンクエスチョンから始めて、更なる質問のヒントをもらうことはあり得る。ただ、最終的には、リスクになりそうなところをこちらで想定して、答えをダイレクトに聞くのクローズドクエスチョンで情報を入手することになる。」


「例えば、この事案ではどういうことを聞けばいいのでしょうか。」



「まず、『共同開発』という目的は抽象的過ぎ。大体は何かのきっかけがあって、具体的にこういうものをこういう役割分担で開発しましょうといった『大まかな想定』がされているはず。これを踏まえて、目的を具体的に聞くことは最低限必要。」


「なるほど。」



「その上で、秘密保持契約の法務リスクの高低を決める決定的に重要な要素は『どちらがどのような情報をどちらに渡すのか』。一方的にうちが先方に渡すだけなのか、一方的に先方からうちがもらうだけなのか、それとも相互的なのか、相互的であるとしてどちらの方がもらう量が多いのか。これによって契約条項の書き方が大きく変わる。」


井上先輩はパッと図を書いて情報の流れを示す。


「例えば、うちが一方的に、ないしは大半の情報を渡す側としよう。そうすると、秘密情報の定義はできるだけ広く定義したい、秘密情報の例外はできるだけ狭くしたい、秘密情報の取扱いは厳しく縛って、契約終了後の秘密保持期間もできるだけ長期にしたい。逆にもらう側なら、話は逆になる。」


「そうすると、やりとりする情報の量に応じて雛形の文言を修正すればいいのですね。」


「量だけではなく情報の内容も重要だ。概ね情報をもらう側だとしても、うちが提供する(相対的に)少量の情報が、うちにとって非常に価値が高いという場合には、それをどう守りながら、同時に自社の義務の内容を合理的なものとするかが問題となる。その意味で、量と質の双方から、自社の利益を守り、自社の負担を最小限にする方法を考えて行く。」


「これは頭を使う仕事ですね。」


「それをやってはじめて『給料分働いた』ことになるんだよ、キミ。それに、自分の頭でゼロから考える必要はない。」


「どうすればいいんですか?」


コミュニケーション。要するに、佐藤さんに聞けばいいんだよ。例えば、こっちが提供する情報のうち、保護したいものについてマル秘マークとかを付けることが実務的かどうかを確認してみる。それが可能なら、秘密情報の定義として『秘密であることを明記したもの』という限定を付すことで、こちらの保護したい情報が秘密情報に入ることを確保しながら、相手方から提供を受けた情報のうちこちらとして秘密保持契約に基づき保護すべき情報も明確になる。」


「なるほど、法務コミュニケーションが重要なんですね。」


「こんな感じでイメージがつかめたか。じゃあ、もう一度やり直し!最初からやってみよう!


今度こそ失敗しないぞ、と思いながら、僕は内線番号表から第一営業部の佐藤さんの番号を探し始めた。


3.解説のようなもの


今回は、「事業部門の人から質問・相談を受ける際に当該事案に関する事情を聞きましょう」という基本的な内容を扱っています。


 契約書ドラフト・修正業務といっても、法務パーソンが対応する場合、多くの場合は自社の雛形を修正したり、他社から送られてきた他社雛形を修正する業務であって、スクラッチから(ゼロから)ドラフトすることはあまり多くありません*3


今回は、秘密保持契約ということで会社に雛形がありそうです。しかし、雛形があるからといって、雛形に形式的に固有名詞格等を盛り込んでいけばいいということではありません。受付の際の「前さばき」ないしは「事前確認」をきちんと行うべきです。


会社によっては、

・情報をもらう側

・情報を渡す側

・中立的

の3パターンの秘密保持契約の雛形を備えているところもあるようですが、どうも「僕」の会社は中立的なドラフトが1つあるだけで、これを適宜事案に応じて修正することが求められているようです。


そこで、ストーリーにあるとおり、この事案において法務リスクに関係する事情である、「やり取りされる情報の量と質」等についてヒアリングをした上で、そのリスクに対応した修正をどのようにすべきか、ビジネス部門の方とコミュニケーションを図って行く必要があります*4


これはあくまでも1例ですが、相談や依頼を受けた時に、必要な情報をすぐに聞き出す、というのが法務では重要な「基本動作」と言えるでしょう。

まとめ

 依頼・相談を受けた際の最初の「前さばき」「事前確認」において気をつけていることを簡単にまとめましたが、

 法務の諸先輩方からのご助言を頂戴できれば幸いです。どうぞよろしくお願い致します。



ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第1回 自分が「即戦力」ではないことを理解する - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第3回法務の役割? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

*1:なお、タイトルとして一瞬「NEW HOME!」が浮かんだのですが、最終的には消えました。

*2:ちなみに、作者の脳内では、怒っている時はエルザ=グランヒルテ(ダークサイド)の感じをイメージしております。

*3:なお、自社に雛形がない場合には、顧問先の弁護士の先生にドラフトしてもらう、相手からドラフトを出してもらうという方法以外に「顧問の先生に(顧問料の範囲内で)雛形を提供してもらう」という方法があります。「企業法務やっている事務所なら当然雛形はあるでしょう」というような類型の契約であれば、雛形を提供してもらってこちらで直した方が(法務パーソンの経験等にもよりますが)リーズナブルな場合が多いでしょう。これに対し、そもそも「事務所にも雛形あるのかな?」というくらい複雑で非典型的な案件であれば、最初から顧問先の弁護士の先生にドラフトしてもらうのがよいでしょう。

*4:上記の会話では、やり取りされる情報の質として一定の秘密保持契約上の保護が必要という前提でやっていますが、そもそも、今の段階では秘密保持契約は要らないのではないか、という場合もありますし、逆に営業担当者が「この位の情報なので、NDA要らないですよね?」と言っていても、きちんと話を聞いてみるとNDAが必要な場合もあります。ご参考

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/ronnor/20170108

2017-01-01 ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書第1回

[]ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第1回 自分が「即戦力」ではないことを理解する 00:02 ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第1回 自分が「即戦力」ではないことを理解するを含むブックマーク ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第1回 自分が「即戦力」ではないことを理解するのブックマークコメント







0. 企画趣旨

 あけましておめでとうございます。





 当アカウント(当ブログ及び運営者によるtwitter @ahowota )は、10年前にアカウントを開設した当初は完全な「オタクアカウント」としてアニメの話ばかりつぶやいておりましたが、最近では「企業法務アカウント」の度合いが強まり、昨年は、4回に渡りビジネスロージャーナル様に法務パーソンのためのブックレビュー記事を連載させて頂くことができました*1





 2017年は、(アニメネタも続けながらも)きちんとこのブログを企業法務ブログにしていこうということで、色々考えた結果、ツイッターの企業法務ツイートのうち、一番評判がよい #新人法務パーソンへ を素材に、新人法務パーソン向けに、企業法務の実務の回し方のコツをストーリーで学んでいただこう、というのが企画趣旨となります。





 一応修習終わってそのままインハウスとして入った「僕」が美人だが性格がキツい先輩の洗礼を受けるという基本線ですすめていこうか、とは思っておりますが、資格の有無を問わずに一年目くらいの法務パーソンの皆様にとって役に立つ内容にしていこう、と思っております。





 完全な「不定期連載」となりますが、諸先輩方の忌憚なきご意見を頂戴できれば幸いです。





 なお、応用編としての外資系法務のサバイバル術的なものものも





外資系企業における電話会議サバイバル術〜法務部を念頭に - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常







 等がある程度評判でしたので、続けていこうと思っておりますが、これをどのような形式でやるかはまだ全く未定です。





なお、とりあえず、登場人物をご紹介。



登場人物

僕(山田太郎)  1年目のインハウス。修習が終わってそのまま入社したばかり。

井上摩耶先輩   5年目の先輩インハウス。美人だが性格がキツい。

大越課長     我ら法務課の課長。





2.ストーリー:「自分が『即戦力』ではないことを理解する」







「ぶっちゃけ、つまんないですよ。雛形読んでるだけなんて。」





入社してちょうど丸1週間が経過した金曜日、井上先輩が僕を食事に誘ってくれた。食事が概ね終わった後、先輩の発した





「この会社に入ってちょうど一週間だけど、仕事はどう?」





という、多分儀礼的な質問に、僕はついつい「マジレス」をしてしまった。





「あらあら、やっぱりそう思ってた?」





井上先輩はいたずらっぽい微笑みを浮かべる。





「『やっぱり』って、そりゃあ修習で実務にちょっと触れて、面白そうだなと思って胸をときめかせて仕事始めたら、『とりあえず雛形読んでみて』、ですから、そりゃあ、ずっこけますよ。早く本物の仕事がしたいです。」





僕は、ロースクール卒業後司法修習を終えてそのまま内定していた会社に就職した。わずか3人の法務課に配属され、特に法務に特化した研修制度もないから、ということで、大量の雛形の山を渡され、「これ、うちの会社の雛形だから、とりあえず読んでおいて」と言われたのだ。それ以来、1週間無味乾燥な雛形を読み込むだけの単純作業だけが続き、いい加減仕事をしたい、と思っていたところだった。





で、まさか、キミは自分が現状で『本物の仕事』とやらができるとでも思ってるの?




井上先輩の目が急に真剣なものになる。





「えっと、そりゃあ、司法修習もやってますし。。。」





思わぬ展開に、しどろもどろにならざるを得ない。





「債務整理、交通事故、相続、離婚、訴訟…。これはみんな弁護士の仕事として重要だ。でも、これをやっただけで企業法務は到底できない。弁護士バッジを持っているというだけで仕事ができる気になって、『何でもお任せ下さい!』なんて啖呵を切っても、惨めな結果になるだけだ。





ここまで言うと、一瞬何かを思い出したように、井上先輩の顔が陰った。しかし、それも一瞬だけで、彼女は決然として、言葉を紡ぎ続ける。





「だから、バッジのことは忘れて、1つ1つ謙虚に勉強するしかない。雛形はその勉強の教材として渡したものだ。」





そう言われてしまうとグウの音も出ない。声も出せず、ただ俯いていると、先輩が耳元でささやきかける。





「まあ、これからの頑張り次第だな。来週から少しずつ仕事回すから、頑張ってみなさい。」





そう言うと、井上先輩は僕の返事を聞く前に伝票をサッと取って、レジに向かって歩いて行ったのだった。





4.解説のようなもの





 もちろん、例外はありますが、基本的には、学部卒→ロースクール→司法修習でそのまま企業法務に入った場合、入社時点で「実務では使えない」という場合が非常に多いと思われます。その理由は、以下の2つでしょう。





 まず一番大きいのは、「実務が分からない」ということです。ロースクールや修習で学んできた「法律実務」「裁判実務」というのは必ずしも企業法務実務と無関係な訳ではない(例えば銀行の法務部では親族相続法の勉強はマストでしょう)のですが、やはり、「この会社はどういう仕組みでビジネスが動いているのか」という実務の流れというものや「その全体像の中で法務はどのような役割を果たすべきか」といった法務の立ち位置が分からないと、相談を受けたり、契約書チェック・ドラフト等を依頼されても、どうすればいいのかが分からないのである。





 次に、関連するものの少し違う話としては、「法律が分からない」が挙げられるでしょう。もちろん、業務の中では簡単な民法の相談を受けることもありますが、国際取引の問題だったり、業法の問題だったりと、知らない法令、知らない通達ガイドライン、知らない判例等を問われることも多い訳です。実際には、これらの法令、通達ガイドライン、判例等を踏まえて実務が既に形成されているので、ぶっちゃけ前提となる法律が分からなくてもある程度実務を回して行くことはできる訳ですが、きちんと実務運用についてその理由まで理解しようと考えた場合、前提となる法律が分からないと「なぜここでこんなことをするのか」がよく理解できない訳です。





 そういう状況下において、「即戦力」になり得るのは、多分数年間以上企業法務事務所で実務を行ってきた人くらいで、そういう人でもある程度慣れるまでは勉強の連続だと聞きます。





 逆に言えば、最初からその限界を自覚して、「自分は実務のことは分からないので教えて下さい」という姿勢で臨むことが、いち早く実務(と実務で出て来る法律)を覚えて期待に応えることができるようになるための近道でしょう。





まとめ

 作者である私自身「僕」とあまり変わらない位の能力なので、偉そうなことは言えないものの、企業法務一年目に「こういうことを知っていればもっとよかったのに」と思うような情報を提供していければと思っております。

 もっとも、私自身の経験・能力の限界から、十分なものになっていない可能性も高いことから、是非皆様のきたんなきご意見等を頂戴できれば幸いです。(ツイッターのリプが一番ありがたいです。)


ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第2回依頼・相談を受ける際の対応 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第3回法務の役割? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

*1:それまでに関与した商業作品が『アニメキャラが行列を作る法律相談所』や『100人がしゃべり倒す! 「魔法少女まどか☆マギカ」』でしたので、かなり方向性が変わっているのが見て取れます。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/ronnor/20170101