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2016-04-18 ビジネス・ロー・ジャーナル様に連載を持たせて頂くことになりました

[][]ビジネス・ロー・ジャーナル様に連載を持たせて頂くことになりました! 08:08 ビジネス・ロー・ジャーナル様に連載を持たせて頂くことになりました!を含むブックマーク ビジネス・ロー・ジャーナル様に連載を持たせて頂くことになりました!のブックマークコメント



ブログは、客観的に見ると、多分


アニメ・漫画・ゲーム7割

企業法務1割

その他2割


ブログです。


しかし、そのうちの「企業法務」の部分をご評価頂き、2014年12月及び2015年12月に連続してBLJのブックレビュー企画に原稿をご掲載頂きました。



そして、その双方の企画がご好評ということで、



なんと、ビジネス・ロー・ジャーナル6月号(4月21日発売)から、3ヶ月に1度、ブックレビューをご掲載頂くことになりました!!


有名法律実務雑誌に連載をさせて頂けること、心より感謝しております。


なお、今回も、「企業法務ブロガーという名称での寄稿になったので、



そろそろ企業法務系の記事を書かないとまずいな


と考え、外資系企業法務部における電話会議の実務を記事にしたところ、予想外のご好評を頂きました。


外資系企業における電話会議サバイバル術〜法務部を念頭に - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


まとめ

 ビジネス・ロー・ジャーナル様でのブックレビュー連載が決まり、心より感謝しております。


 なお、今後も、「企業法務ブロガー」の名に恥じないよう、このブログでは企業法務系エントリ「も」アップしていくつもりですので、何卒よろしくお願いします!

2016-04-02 外資系企業における電話会議サバイバル術

[][]外資系企業における電話会議サバイバル術〜法務部を念頭に 01:13 外資系企業における電話会議サバイバル術〜法務部を念頭にを含むブックマーク 外資系企業における電話会議サバイバル術〜法務部を念頭にのブックマークコメント


【注:本ブログは、あまり知られていないのですが、「企業法務ブログ」です。】



1.はじめに

 4月1日から新しい会社で働き始める人も多いだろう。そして、例えば外資系に転職する人もいるのではなかろうか。

 外資系といっても各社により様々であるが、例えば、一定以上の重要案件は、本社ないしはAsia Pacific(シンガポールとか香港とか)の決裁が必要な会社も結構あるように思われる。

 このエントリでは、そのような外資系企業において、頻繁に日本人、特に純ドメといわれる日本で英語教育を受けた日本人が苦しむ、英語での電話会議をサバイバルする方法をお伝えしたい。


 そもそも、なぜ電話会議がしんどいかといえば、(1)電話なので、face-to-faceよりもコミュニケーションが取りにくい(2)読み書きではなく、話す聞くという、日本人の概して不得手なスキルが試される(3)外国人と議論をしなければならない*1という3要素があるからではなかろうか*2


 このような電話会議において、「どうすれば完璧な対応ができるか」を私は全く知らないのであるが、「どのようにサバイブするか」の試論を公開させて頂き、この4月から外資系企業で働かれる方、特に外資系法務部で働かれる方の少しでもお役に立てればと思う。



2.シチュエーション

 具体的に想定されるシチュエーションを提示した方が分かり易いだろう。なお、以下は完全な創作である。

 あなた(山田太郎)は、日本企業法務部(@東京)で3年間働いた法務パーソンである。

 少し前に転職し、同業の外資系企業の法務部(@東京)で働き始めた。

 あなたが働いているのはハゲタカジャパン株式会社(「ハゲタカ・ジャパン」)であり、ハゲタカ・ジャパン法務部は、一定以上の重要事項について、米国の親会社であるHagetaka Ltd. (「ハゲタカ・グローバル」)の法務部の決裁を得なければならない。


 ハゲタカ・ジャパンは、過去に納入した商品に問題があるとして、ユーザーで上場企業であるフジヤマ産業株式会社(「フジヤマ」)からクレームを受けていたが、この問題を訴訟外で解決できず、東京地方裁判所において訴訟が係属していた。フジヤマはハゲタカ・ジャパンに対し、5億円の支払を請求しており、ハゲタカ・ジャパンは顧問事務所であるスキヤキ法律事務所の弁護士に委任し、被告として応訴を続けていた。


 あなたは、ハゲタカ・ジャパンに転職後、この案件を引き継いでいたが、前々回の期日で、裁判官から和解の勧試があった。それを受けて前回期日において、フジヤマが、ハゲタカ・ジャパンがフジヤマに2億円の解決金を支払うことで本件を解決する」という内容の和解を提案したことから、次回期日まで、ハゲタカ・ジャパンとしてこの和解提案に対する対応を決定する必要がある。しかし、この対応は、ハゲタカ・ジャパン限りで決めることができず、ハゲタカ・グローバル法務部の決裁を得る必要がある。


 あなたは、これから、あなたとハゲタカ・ジャパンの法務部長が日本から、ハゲタカ・グローバルのジェネラル・カウンセル及びアジア・パシフィック担当者(John Smith)等がアメリカから参加する電話会議を乗り切らなければならない。もちろん電話会議は英語で進められる。


 さあ、あなたは、どうすればいいのだろうか?


3.事前にアジェンダを作る

 まず、電話会議を乗り切るコツは、「事前にアジェンダを作ってしまう」ことである。アジェンダとは、要するに、電話会議のロードマップである。これがないと会議が迷走する。会議をきちんと正しい方向に進め、コントローラブルなものにするため、事前にアジェンダを作ってメール送付することがお勧めである。


Agenda of the Telephone Conference - Fujiyama Litigation(電話会議アジェンダーフジヤマ訴訟)

1. Whether to settle this case(1.本件を和解で終了させるか)

Hagetaka Japan: We should settle this case because there are substantial risks of losing.(ハゲタカ・ジャパン:敗訴リスクが大きいので和解すべきである)

See Sukiyaki Law Firm’s Opinion : The judge mentioned that the existence of defect itself seems to be indisputable and the only issue is the amount of the damages.(スキヤキ法律事務所の意見:裁判官は瑕疵そのものがあること自体は争いようがなく、問題は金額であると言及した。)


2. How much we should pay(2.支払うべき金額

Hagetaka Japan: JPY 200 million is reasonable.(ハゲタカ・ジャパン:2億円は合理的である)

See Sukiyaki Law Firm’s Opinion : The court is likely to order Hagetaka to return JPY 150 million which Hagetaka received from Fujiyama. Also, Fujiyama's position is stronger regarding substantial parts of the JPY 200 million out-of-pocket repair costs. Hagetaka’s position is stronger regarding the JPY 150 million internal labor costs of Fujiyama.(スキヤキ法律事務所の意見:代金としてハゲタカが受け取った1億5000万円は返還を余儀なくされるだろう。追加で必要となった外部に支払った修理費用である2億円の相当部分についてもフジヤマの方が有利である。フジヤマ内部人件費である1億5000万円についてはハゲタカの方が有利である。)


3. Other issues?(3.その他)

Confidentiality?(守秘義務

See Sukiyaki Law Firm’s Opinion : As Fujiyama is a listed company, Fujiyama needs to disclose the fact of settlement. But it is negotiable as to what can be disclosed and what should not be disclosed.(スキヤキ法律事務所の意見:フジヤマが上場企業であるから、フジヤマは和解の事実を公表しなければならない。ただ、何を公表し何を公表しないかについては交渉可能である。)


このようなAgendaを簡単にまとめた上で、事前にメール送付しておけば、会議参加者にとって、あなたが何をやりたいかは明確となる。


4. 議論をリードする

 少なからぬ日本人が、「英語力がないから、電話会議は聞き役に回ろう」と考える。しかし、それでいいのだろうか?


 例えば、ジャパンとして考えがあり、それについてグローバルの決裁を取りたいという場合、「聞き役」をやっていては、説得はおぼつかない。



 私は、英語力がないからこそ、議論をリードする必要があると考えている。自分のペースで電話会議を進めることで、電話会議の内容を理解し、電話会議の目的(グローバルの説得等)を達成しやすくなる。


 そこで、最初の挨拶が終わったら*3This is Taro, I already circulated the Agenda for today’s telephone conference. I would like to go through each of the points in the Agenda.(太郎です、今日のテレコンのため、アジェンダを配布させて頂きました。このアジェンダに沿って進めたいと思います。)のように言って、アジェンダどおりで進めさせてもらうようにお願いするのである。


 まあ、私の経験からすると、大体の場合はこのような進め方にアグリーしてもらえるという感じである。なお、Other Issuesという欄をAgendaに入れておくと、「このテーマも論じるべきではないか」という人や、議論から脱線した話をし出した人がいた時に「そのテーマはOther Issuesで議論しましょう」と返せるのでオススメである。



5. 自分の言いたいことを伝える

 まず、自分の言いたいことを伝える方法は、何度でも繰り返すことである。

 相手がそもそも、自分が何を言いたいか分からないというシチュエーションは多い。特に、反応が勘違いをしているらしいという場合も多い。



 そう言う場合には、


Let me put it in another way. (言い換えさせてください。)


 等と言って、何度も言い直そう。表現を変えるだけではなく、説明の方法そのものを変えると良いと思われる。


 例えば、判決までいった場合に払わせられる金額よりも和解金の方が安い」という意味で、あなたがこう言ったとしよう。


Taro:We believe that it is reasonable for Hagetaka to settle because Hagetaka can save money.(太郎:ハゲタカはお金を節約できるので、ハゲタカにとって和解するのが合理的だと思います。)



そういう趣旨で言ったのに、ハゲタカ・グローバルが、「弁護士に払うお金を節約できる」という意味に取ってしまうこともある。



John:Yes, we can save the lawyers’ fees, but why we should pay JPY 200 million? Can't it be JPY 50 million or less?(ジョン:確かに(和解によって)弁護士費用は節約できるんだろうけど、なんで2億なんだね、5000万円とかでもいいじゃないか?)



こういう場合、


Taro:Let me put it in another way. According to Sukiyaki Law Firm, we are likely to lose, and we are likely to have to pay more than JPY 200 million in the judgment. So, what I mean is that we are better off by settling now than continuing this litigation until the final judgment.(言い直させて下さい。スキヤキ法律事務所によると我々は負けそうなので、判決では2億よりも多く払わされる可能性が高いです。そこで、今和解した方が判決まで待つより経済的に有利だと言っているわけです。


のように、言い方を変えて説明を繰り返す訳である。


 なお、私は日本人なので、表現が下手で混乱を招いた場合は、結構Sorry for making you confused. (混乱させてしまいすみません。)とか言って謝ってしまうが、これは人によって対応は若干違うかもしれない。


なお、こちらの質問に対してとんちんかんな回答をする場合には、


Let me ask this question in another way.(質問の仕方を変えさせてください。)


という表現が使える。



6.相手の言っていることを理解する

 時々、ハゲタカ・グローバルの人同士で話が始まり、ものすごく速くかつ聞き取りにくい英語が交わされることがある。


 全く分からない時は、自信を持って、Sorry, could you repeat?(すみません、もう一度言って頂けますか?)と言おう。知ったかぶりで進んでしまうことが最大の恥であり、聞くことは恥でもなんでもない。



 これに対し、大体分かったつもりだが、心配な場合には、自分の理解を伝えよう


If I understand correctly, you are saying that the settlement amount should be JPY 100 million.(えっと、いまおっしゃったのは、和解金は1億でなければならないということでしょうか?)



この”If I understand correctly,(直訳すれば「もし私が正しく理解していれば」)"という表現を使って聞き返すと、理解を確かめることができる。



なお、明らかに勘違いしている人がいる場合、



"Sorry to interrupt…”(ちょっと失礼します。。。)


といって途中で介入して止める必要があることもあるし、逆に、(電話会議なので)自分と同時に他の人が発言を始めた場合、



"Go ahead.”(どうぞ)


といって譲るべき場合もあるだろう。



7.自分の意見を堅持する

 (人にもよるが)外国人と議論する時の辛さは、外国人が議論慣れしている、つまり議論を尽くすことをストレスに感じないということであろう。



 純ドメの日本人は、英語を話すだけで大変で、その中で議論をするのはもっと大変である。



 バイタリティがあふれる外国人と議論する場合、「議論が大変」というだけの理由で、ついつい同意したくなる。例えば、アメリカ時間の深夜までかかったロングランの電話会議が終わった後、「やはりグローバルとしてはこれこれこうこうすべきである」というメールが届き、その中に「I will stay up to talk with you.((もし異議が有るなら)あなたと話すためにこれからずっと起きてるよ。)」とか書かれていると、「はい。。。もう、それでいいです。。。」という気持ちになる。


 しかし、自分の意見を堅持する必要がある場合もある。



その場合、YES BUT法が有効である。要するに先に共感を示してから、後で自分の意見を述べる訳である。



“I fully understand your point but please consider the reputation risk when Tokyo district court rules against us.”(おっしゃることは分かりますが、東京地裁が不利な判決を下した場合のレピュテーションリスクをお考え下さい。)


みたいに、「あなたのおっしゃっていることはよく分かります。しかし〜」という言い方をすることで、角が立たなくなる。



 なお、コツとしては、「グローバルな会社だと、日本の地域的特性説明すると効くことがある」ので、例えば、「ディスカバリーでフジヤマの弱みを見つけられないか?」という質問に対しては、



“This is Japanese litigation, not USA. We do not have American style full discovery!”(これは日本の訴訟なのです。アメリカ式の完全なディスカバリーはありません。)



みたいに、日本の事情を説明するといけることもあるだろう。



また、アメリカの法務部だと、「ローヤー」の発言であることにどうも説得性があるようなので、



Sukiyaki’s Lawyer opines that… (Sukiyaki’s Lawyer is of the opinion that…)”(スキヤキ法律事務所はこう言っています。)



のように「これは弁護士の意見です」と言って説明すると説得できることがある。



8.議論を整理する

 このような過程を経て議論を尽くしたら、最後は、議論を整理する必要がある。


”Let me summarize today’s discussion."(それでは、今日の議論を要約させてください。)


 のように言って、その段階で決まったことと、これからどの人が何をすべきかを検討することになる。


 この場合にはAgendaが効く。アジェンダに沿って(自分の理解する)、決まったことと、会議終了後に、各人がやるべきことを説明しよう。


 そして、私は、会議の場で口頭で説明した後、その内容を簡単な議事録(minutes)としてメール送付することをお勧めしている。


そもそも、事前にアジェンダを用意しておけば、これをベースに、一言ずつ追加するだけでいいはずである



Minutes of the Telephone Conference - Fujiyama Litigation(電話会議議事録ーフジヤマ訴訟)

1. Whether to settle this case(1.本件を和解で終了させるか)

Hagetaka Japan: We should settle this case because there are substantial risks of losing.(ハゲタカ・ジャパン:敗訴リスクが大きいので和解すべきである)

See Sukiyaki Law Firm’s Opinion : The judge mentioned that the existence of defect itself seems to be indisputable and the only issue is the amount of the damages.(スキヤキ法律事務所の意見:裁判官は瑕疵そのものがあること自体は争いようがなく、問題は金額であると言及した。)

Decided : Hagetaka Japan will settle this case by paying substantial amount to Fujiyama.(決定事項:ハゲタカ・ジャパンはフジヤマに相当額を支払って和解する。)



2. How much we should pay(2.支払うべき金額

Hagetaka Japan: JPY 200 million is reasonable.(ハゲタカ・ジャパン:2億円は合理的である)

See Sukiyaki Law Firm’s Opinion : The court is likely to order Hagetaka to return JPY 150 million which Hagetaka received from Fujiyama. Also, Fujiyama's position is stronger regarding substantial parts of the JPY 200 million out-of-pocket repair costs. Hagetaka’s position is stronger regarding the JPY 150 million internal labor costs of Fujiyama.(スキヤキ法律事務所の意見:代金としてハゲタカが受け取った1億5000万円は返還を余儀なくされるだろう。追加で必要となった外部に支払った修理費用である2億円の相当部分についてもフジヤマの方が有利である。フジヤマ内部人件費である1億5000万円についてはハゲタカの方が有利である。)

Decided: Hagetaka would accept JPY 200 million settlement amount. But Taro Yamada will ask Sukiyaki Law Firm whether it is practically feasible to propose JPY 150 million at first.(決定事項:ハゲタカは2億円の和解金を受け入れるが、山田太郎はスキヤキ法律事務所に、最初に1億5000万円を提案するのが実務的にあり得るか尋ねる。)



3. Other issues?(3.その他)

Confidentiality?(守秘義務

See Sukiyaki Law Firm’s Opinion : As Fujiyama is a listed company, Fujiyama needs to disclose the fact of settlement. But it is negotiable as to what can be disclosed and what should not be disclosed.(スキヤキ法律事務所の意見:フジヤマが上場企業であるから、フジヤマは和解の事実を公表しなければならない。ただ、何を公表し何を公表しないかについては交渉可能である。)

Decided: Hagetaka and Fujiyama should agree on the contents of the disclosure of the settlement as the condition for the settlement. Taro Yamada will prepare the draft of the contents of the disclosure with the help of Sukiyaki Law Firm. Then John Smith will check the contents before proposing to Fujiyama.(決定事項:ハゲタカとフジヤマは、和解の条件として、和解についての開示内容について合意しなければならない。山田太郎はスキヤキ法律事務所の援助を得て開示内容の草案を準備し、ジョンスミスはフジヤマに提案する前に内容を確認する。)


 上のAgendaと比較して頂くと、それぞれ決定事項の行が追加されていること、誰が何をするのかが記載されていること等がわかるだろう。


 これをメールで送付しておけば、後でグローバルに「ちゃぶ台返し」をされるリスクは低下するし、今後誰が何をするかが明確に分かる


まとめ

 以上は、個人的経験(なお、具体的事案は完全に変えており、上記の訴訟事案の電話会議の内容は100%創作である)をもとにした「英語の電話会議をいかにサバイブするか」の試案である。


 あくまでも「試案」であるし、英語はめちゃくちゃだと思う。


 その意味では、「参考」にしかならないものであるが、英語の電話会議に苦しむ(外資系法務パーソンが一人でも減るよう、これを作成した次第である。

*1法務を想定すると、「外国人上司を説得しなければならない」という課題があるシチュエーションと、「英語で繰り広げるディスカッションに参加させられ、沈黙が『法務の承認』と取られる」リスクがあるという課題があるシチュエーション等が想定される。

*2:ツイッターではそれ以外にも、電話回線が悪い、時間帯が早朝深夜に設定される、インド人等聞き取りにくい英語等がある旨の補足を頂いた。まさにそのとおりである。

*3:実は、純ドメにとってかなり難しいのは、電話会議にジョインするのが遅れる人を待つ間の「何気ない会話」であって、これが一番難しいという印象です。

2016-03-31 秘密保持義務に関する例外条項のドラフティングの困難性

[][]秘密保持義務に関する例外条項のドラフティングの困難性 22:01 秘密保持義務に関する例外条項のドラフティングの困難性を含むブックマーク 秘密保持義務に関する例外条項のドラフティングの困難性のブックマークコメント


 本ブログは、あまり知られていないが、実は企業法務ブログであるので、企業法務の日常において悩んでいることを綴ってみたい。


 企業法務において日常的にチェックする契約に、秘密保持契約がある。


 秘密保持契約(条項)というのは、NDAやCAと略称されるが、当事者が開示された秘密を厳守し、当該契約の目的の為にのみこれを用いるといったことを約する契約(ないしは契約書における特定の条項)である。

事例1 XとYは、共同開発を行うこととし、そのために、XはYと秘密保持契約を結び、YからYが秘密として管理する甲ノウハウの開示を受けた。


このような場合、甲ノウハウは秘密であり、これを保護するため、秘密保持契約が締結される。


ここで、秘密保持契約における秘密の定義については、以下のような例外規定を設けるのが通常である。


ただし、以下のいずれかに該当する情報は、秘密情報には含まれないものとする。

(1)開示された時点において、受領当事者がすでに了知していた情報

(2)開示された時点において、すでに公知であった情報

(3)開示された後に受領当事者の責に帰すべき事由によらずに公知となった情報

(4)開示当事者に対して秘密保持義務を負わない正当な権限を有する第三者から、受領当事者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報

森本大介ほか『秘密保持契約の実務』29頁

*1


このような内容が、秘密保持義務の例外事由として比較的頻繁に見られる。


ただ、実務で疑問が生じるのは、「?開示当事者に対して秘密保持義務を負わない正当な権限を有する第三者から、受領当事者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報」である。

事例2 ZはYと独立に甲ノウハウを開発していたところ、XはZとも共同開発を行うこととし、そのために、XはZと秘密保持契約を結び、YからZが秘密として管理する甲ノウハウの開示を受けた。

この場合、Zは、甲ノウハウを独自に開発したのであって、Zは甲ノウハウに対する完全な権限を有している。


そしてZとXの間の関係では、甲ノウハウは「受領当事者(X)が既に了知していた情報」である。


そこで、Xは甲ノウハウについてZとの間の秘密保持契約上の秘密保持義務を負わないということになりそうである。



そうすると、Yとの関係で甲ノウハウが「(4)開示当事者に対して秘密保持義務を負わない正当な権限を有する第三者(Y)から、受領当事者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報」になってしまいそうである。このように解されれば、Xは甲ノウハウを、Yとの関係でもZとの関係でも自由に利用できることになりかねない。



しかし、その結論はいかがなものだろうか。


開示当事者に対して秘密保持義務を負わない第三者から秘密保持義務を課されずにその情報を受領した以上は、その情報はもはや要保護性が低く、開示・使用を制限されるべきではない


(中略)


受領当事者が第三者との間で秘密保持義務を負うことなく取得した情報に限られる。受領当事者が、開示当事者と第三者の双方との間で秘密保持義務を負っている情報は、三者間で依然として秘密として取扱われている情報であり、依然として要保護性が高いからである。

森本大介ほか『秘密保持契約の実務』33頁



といった議論を参考にすると、事例2の場合でもやはり甲ノウハウの要保護性は高く、甲ノウハウは秘密とされなければならないだろう。


すると、(これを実際のドラフトに使うかはともかく)Yの合理的意図を文言に無理矢理落とし込むと「(4)開示当事者に対して秘密保持義務を負わない正当な権限を有する第三者から、受領当事者が秘密保持義務を負わず適法に取得した情報(既了知の例外により秘密保持義務を負わない場合を除く)」という趣旨であると理解される。


 (逆にわかりにくいといった批判もあるだろうが、)それはそれで、Yの合理的意図は達成できるかもしれないのだが、逆にこのような合意の内容は、XがZと行う共同開発に支障をきたす可能性を含むように思われる。すなわち、秘密保持契約においては、単に第三者に開示しないという条項だけではなく、当該契約の目的のためにのみ利用するという条項が通常入っている。



事例3 事例2の背景は、Xは薬の材料となる化学物質乙及び丙を製造していたが、乙や丙は従来の剤型ではなく新しい剤型にして投与する方が効果が高まり、市場価値が高まる。ところが、乙や丙を新しい剤型にするためには特殊なノウハウが必要であり、それが甲ノウハウであった。Yは丁という化学物質について、Zは戊という化学物質についてそれぞれ甲ノウハウを使って新しい剤型の薬品を作っていたところ、YはXの有する乙、ZはXの有する丙という化学物質に着目し、自社の持つ甲ノウハウを利用して新剤型の薬品を製造することで相乗効果があると考え、それぞれ独立してXに対してアプローチをして共同開発に合意したものであった。



このような場合に、Yが先にXとアプローチし、甲ノウハウを開示してしまい、かつ、上記のとおり、Zとの契約に基づく甲ノウハウの開示後も、XY間の秘密保持契約の義務が甲ノウハウについて及ぶとすると、Zからの甲ノウハウの開示後もXは、なおYとの共同開発のためにのみ利用しなければならないことになりかねない。その意味では、過度に厳しいという面もあるように思われる。


だからといって、全く秘密保持義務の対象にもならないというのも言い過ぎであり、そうすると、Yとの関係でもZとの関係でもそれぞれの契約の目的のためには甲ノウハウを利用してよいという契約内容とするべきであるように思われる。



この点は、例外規定ではなく「目的外使用の禁止」の解釈にもよってくるように思われる。


(目的外使用の禁止)

受領当事者は、開示当事者から開示された秘密情報を、本目的以外のために使用してはならないものとする

森本大介ほか『秘密保持契約の実務』44頁



これは一般的な規定だが、この「開示当事者から開示された秘密情報を、本目的以外のために使用してはならない」というのを「Xから開示された甲ノウハウはXとの共同開発以外のために使用してはいけないのであって、Zから開示された甲ノウハウはZとの共同開発に利用してもよい」と解することができれば上記の問題はなくなると思われる。しかし、ここまで詰めた議論はあまりされていないように思われる。


企業法務の先輩の皆様はどのようにお考えでしょうか?


まとめ

秘密保持義務に関する例外条項のドラフティングはなかなか難しく日々苦労している。

森本大介ほか『秘密保持契約の実務』を購入した際には、このような実務上苦慮する点(上記の過剰包摂・過少包摂の問題をどうするのか、文言で対処しているのか、それとも、契約以外の方法で対応しているのか等)についての著者なりの回答が存在するのかと思って期待していたが、その点についての言及はみつけられなかったのは残念であった。

*1:なお、独自開発の例外については、同書34頁参照

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