これも非正規労働問題だった

農薬入り餃子事件の容疑者がつかまったそうですが、犯行動機として待遇への不満を述べているのだとか。

 中国製冷凍ギョーザ中毒事件で、拘束された製造元の天洋食品(中国河北省石家荘市)の元臨時工、呂月庭容疑者(36)が、27日までの中国警察当局の調べに対し「長期間、臨時工として勤務しても正社員にしてもらえなかった」などと勤務先への不満を供述していることが分かった。日本の警察庁が明らかにした。
 天洋食品では、低賃金の長時間労働などに対する従業員らの不満がうっ積していた。中国当局は呂容疑者の犯行の背景に、同社の過酷な労働環境があったとみて詳しい動機の解明を進めている。

 元男性従業員は「工場の幹部らは従業員の管理が厳しく、手洗いを怠っただけで一方的に解雇されるケースもあった。優良企業と聞き、会社関係者にわいろを払ってまで就職したのに、1年足らずでやめてしまう人もいた」と話す。
 同社は07年12月に従業員十数人を突然解雇。従業員の間では、中国政府が翌08年1月、労働者の解雇を制限する労働契約法を施行するのを前にしたリストラとの見方が広がり、労働現場の不満は一層増幅したという。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E0E5E2E3978DE0E5E2E1E0E2E3E29191E2E2E2E2;at=DGXZZO0195570008122009000000

劣悪な労働条件が勤労モラルに悪影響を与えるというのは当然のことで、それが品質にも悪影響を与える極端な例ということになるのでしょうか。非正規労働問題は日本だけの問題ではないということをこれで知った人もいるのでは。
それにしても、食品工場で手洗いを怠るというのは困ったもので(解雇までするかどうかは別として)、あるいはこれも勤労モラルの後退ゆえという部分もあるのかもしれません。労働者を厳しく管理することで怠業を防ごうというアプローチより、適切なインセンティブを与えたほうが効果的だというのは、経営の世界ではかなり認知されているのではないかと思うのですが…。

キャバクラユニオン、デモで気勢

一般紙でも報じられていましたが、ここはスポーツ紙から。

 キャバクラ嬢らによって結成された労働組合キャバクラユニオン」が26日夜、日本一の歓楽街である東京・歌舞伎町周辺でデモ行進を行った。
 組合員ら約150人が参加。トラックに積んだスピーカーから大音量で音楽を響かせながら歩くサウンドデモで、キャバクラ嬢の象徴であるドレス姿の参加者も。「給料ちゃんと払え!」などと叫びながら、キャバクラが多く立ち並ぶ歌舞伎町周辺を約1時間20分にわたり練り歩いた。
 キャバクラ譲やボーイらの労働環境改善を広く訴え、実際に困っている人に対し相談窓口があることを知らせることが目的。キャバクラでは給料未払いや暴力、セクハラ、罰金制度など問題が多数あり、ユニオン代表の桜井凛さん(仮名)は「理不尽がまかり通っている水商売の業界の改善になれば」と話している。
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2010/03/27/07.html

他の報道によれば「メール1通で解雇されたり、説明なく賃金が減らされたりする」ということもあるそうで(まあ、ありそうですが←偏見)、「ユニオンにはこれまで、突然解雇され賃金を支払われなかったという女性からの訴えや、店の幹部から暴力を受けたとの男性店員からの相談もあった。ユニオンが話し合いを促し、都労働委員会へ申し立てるなどして、和解したケースもある」など、労組結成の成果もあがっているようです。
ただ、普通この手の話は労働基準監督署に相談に行くのが通常でしょうし、労基署は相談があれば調査し、問題があれば指導し、是正を勧告し、改善がみられなければ起訴するというのが「仕事」でしょう。もちろん、歌舞伎町でコワモテの経営者相手に「指導」するのはしんどい仕事でしょうが、しかしそれこそが公務員である労働基準監督官が行うべき仕事ではないかと思います。まあ、きちんとやられているのだろうとは思いますが。

大臣遅刻で官僚更迭?

YOMIURI ONLINEから。

 原口総務相が、総務省で国会との連絡・調整を担う原口亮介官房総務課長について、就任からわずか約8か月で情報通信国際戦略局参事官に異動させる人事が波紋を呼んでいる。
 異動は4月1日付で、対象となった原口課長ら4人はいずれも国会担当。省内では、総務相が今月、国会審議に2度遅刻したことの引責による更迭ではないかとの見方が広がっている。
 総務相は26日の記者会見で「定期人事異動で、更迭ではない」と述べ、遅刻とは無関係だと強調した。だが、総務相は遅刻の原因を「事務方のミス」と釈明しており、「更迭と見られても仕方がない」との声が上がっている。
 最初に遅刻した3月3日は、日程を管理する大臣秘書室内の確認が不十分だったとされ、「責めを負うのは大臣秘書室が先だ」(中堅幹部)との声も漏れる。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100326-OYT1T00900.htm

まあ、官房総務課長から情報通信国際戦略局参事官という人事は、役所の組織上の形としてはありうる異動のように思われます。たしかに、その限りにおいては大臣が「更迭ではない」と言うこともできるのでしょう。
ただ、更迭か否かは人事権者が決めることではなく、本人がその人事をどう捉えるかとか、周囲がどう評価するかとかで決まってくるという部分もあるわけで、今回の人事について「引責による更迭ではないかとの見方が広がっている」「「更迭と見られても仕方がない」との声が上がっている」のだとすれば、やはり「更迭」と報じられても致し方のないところでしょう。こういう人事を通してしまえばこういう受け止められ方をするだろうということは容易に想像できたように思うのですが。
いずれにしても、今回の人事で、総務省は官僚が大臣の失態の引責で更迭される組織だという意識が省内にも広がっているのでしょうから、これは人事管理としてはあまり好ましい状況ではないと申せましょう。まあ、市長が貼らせた貼り紙を剥がしただけで懲戒免職という役所もあるらしいので、それに較べればまだマシかもしれませんが。