「プラハの春」♪の『我が祖国』コンサート

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みなさまご無沙汰しております。日本から美しい桜の写真などを送ってくださった方々、懐かしくてウルっときちゃいました、ありがとうございます! 桜の季節はここプラハでもとっくのとうに終わっておりますが、プラハにも桜があるのよ!ってコトで、少し写真なぞ。

近所のお墓の駐車場(笑)に咲いてた桜。

こないだ建築巡りのお散歩で歩いたプラハ10区の桜ごしに見る聖ヴァーツラフ教会。これはあのキュビズム博物館の建物の建築家、ヨゼフ・ゴチャール(Josef Gočár)作の教会なのでゴチャールファンは必見の教会。ちなみに中には国立図書館のデザインですったもんだしているフューチャー・システム主宰のヤン・カプリツキー(Jan Kaplický)さんのお父さんが作った美しいステンドグラスがあります。どうやらあのタコ図書館は実現しなさそうです。。。ものすごく残念。

さて、今日のお題はプラハの春
プラハの春」(Pražské jaro)と聞いてチェコ人が思いつくものには二つあります。ひとつはもちろん1968年のチェコ事件。ドゥプチェク(Alexander Dubček、スロヴァキア人)率いる当時のチェコスロヴァキア共産党が「人間の顔をした社会主義」を目指した改革に危機を感じたソ連およびワルシャワ条約機構軍が軍事介入した事件のこと。

で、もうひとつの「プラハの春」は、スメタナ(Bedřich Smetana)の命日である5月12日に市民会館スメタナ・ホールで始まる「プラハの春音楽祭」。会場の市民会館(オベツニー・ドゥーム=Obecní dům)はプラハのアール・ヌーヴォー(セセッション)建築の代表的存在。

ちなみに、いわゆる大統領が臨席する初日のオープニングコンサートは、チェコ国歌「我が家(祖国)はいずこ」(Kde domov můj)も演奏され、ナショナリズム溢れる内容。チェコ政府関係者やスポンサー企業、政府から招待されたVIPで埋まります。でも残りの空席目指して半年前から争奪戦、チケットが高騰し、チェコ人よりもアメリカ人、ドイツ人、あるいは日本人に占められ、肝心のチェコ人は少ない、という状況。。。そこで普通の音楽好きのチェコ人も行けるよう翌日も全く同じプログラム、指揮者の「我が祖国」が演奏されるようになったのだとか。ここが会場のスメタナ・ホール。

この「プラハの春」音楽祭は、1946年、マサリク大統領の次の大統領、エドワード・ベネシュ(Edward Beneš)大統領の時代にチェコフィル設立50周年を記念して始まった歴史あるフェスティバル。活躍した指揮者としてカレル・アンチェル(Karel Ančerl)、ヴァーツラフ・ノイマン(Václav Neumann)、レオナルド・バーンシュタイン(Leonard Bernstein)、ビロード革命の直後、亡命生活42年後にタクトを振ることになったラファエル・クベリーク(Rafael Kubelík)、ウラディミール・アシュケナージ(Vladimir Ashkenazy)、「のだめ…」で日本でもすっかり有名になったズデニェク・マーツァル(Zdeněk Mácal)、ピアニストにはルドルフ・フィルクシュニィ(Rudolf Firkušný)、パヴェル・シュチェパン (Pavel Štěpan)などがいます。


スメタナ・ホールのロジェ席。

入口の階段も素敵でしょ?

物語の中に入ってしまったような気分になるこの廊下が好き。

この市民会館、すごいのは館内あちこちにあるステンドグラス、階段の装飾細部や各ホールや部屋の名前のロゴに至るまでアール・ヌーヴォー三昧なこと。コンサートに興味ない方でも、建築やデザインに興味ある方は内部をのぞいてみることをおすすめします。

アール・ヌーヴォーの始まりはベルギーだそうですが、ベルエポック時代のジャポニズムの影響(浮世絵の構図や独特の遠近法など)を受けているからか、一番見てて安心?できる建築スタイルな気がします。優雅で丸みを帯びてて、自然のモチーフがたくさんあって。パリで有名になったチェコ人画家、アルフォンス・ミュシャ(Alfons Mucha)(チェコ語ではムハと読みます)が手がけた「市長の間」は、パリ時代とかなり違う、彼の愛国心溢れるモチーフの絵が見られますが、市民会館の見学ツアーに参加しないと通常は見られません。

でも今(9月終わりまで)ちょうど旧市街広場のティーン教会前(Staroměstské náměstí 15番地)の「白い一角獣の家」(Dům U Bílého jednorožce)でここにある絵のリトグラフが見れます。

プラハの春」に話を戻すと、オープニングはいつもスメタナの連作交響詩『我が祖国』(Má vlast)で始まるのは1952年から変わらないのですが、クロージングコンサートは最近ドヴォジャーク(Antonín Dvořák)の曲に変わったみたいです。2003年まではベートーヴェンの第九で終わるっていうお決まりだったのですが(カレル大のチェコ語の授業でもそう習ったのに…教科書がもう古いみたい)。。。やっぱりベートーヴェンチェコ人じゃないから…? 
演奏はいつもチェコフィルというわけじゃなくて、例えば今年はブルノフィル(ブルノBrnoは、プラハに次ぐチェコで二番目に大きな街)。指揮者のペトル・アルトリヒテル(Petr Altrichter)は今年56歳のブルノフィル主席指揮者で、「プラハの春」デビューは1977年。随分若いころから活躍していた方のようで楽しみです。今年は12回目の出演を数えるそう。
外国のオケが演奏することもあって、例えば今年のクロージングはブタペスト・フェスティバル・オーケストラ、2005年のオープニングはロンドン交響楽団、といった具合。国際音楽祭として(観客はすでにチェコ人より外国人のほうが多いですが)演奏する側の出身国もバラエティに富んできているようです。

1968年の「プラハの春」も音楽とは切り離せないものがあります。

ビロード革命の際のヴァーツラフ広場でも歌われたマルタ・クビショヴァー(Marta Kubišová)の『マルタの祈り』はじめ、カレル・ゴット(Karel Gott)やイジー・スヒィ(Jiří Suchý)などの関連したチェコの名曲が聴けるコンピレート(なんとたったの39kcで音楽好きへのおみやげに最適?)も出ています。