龍神沼の自由帳

気が向いたら更新しますわ

 なんちゃって"アルプス級空母*1"を考察する

  アルプス級
  艦橋付近 これらの画像の権利は中央公論新社、らいとすたっふに所属します。
 あれって線図は伊吹型空母を参考にしていますね。高角砲の配置を換えて煙突をアイランド一体型の傾斜形式に変えた物に見えます。*1そこでひとつ疑問、煙突低すぎませんか?排煙が逆流して艦橋がスモークされちゃうんじゃないでしょうか。航行中はいいとして停泊時に右舷斜め後方から風が吹いていたら、確実に艦橋は排煙に覆われると思いますがどうなんでしょう。
 それにしてもアルプス級空母は使えない奴にしか思えません。排水量が13200tで全長が210.5m全幅21mたぶん格納庫は2層式、搭載機は戦闘機40機と対潜哨戒用攻撃機6機、航空魚雷運用能力なし、速力はたぶん29〜30ノットぐらい、長8㎝連装高角砲を艦橋直前に一基搭載、瑞鳳クラスの軽空母と伊吹型空母をミックスしたような性能です。対艦対地攻撃力が非常に低いので使い道が少なく、機動部隊の直掩専任艦として使うか、輸送船団の直衛に使うには高性能すぎるので潜水艦狩り専任部隊として松型駆逐艦とチームを組んで使うか、航空機輸送艦にするか、暇なときは高速輸送艦代わりに使うか、あれっ、結構使えるじゃん。だがしかし、雲龍型空母をより簡易型にしたものを作ったほうがはるかに役に立つと思います。昭和19年12月くらいだったら、資材の調達が順調なら建造期間1年8ヶ月として、伊吹も雲龍型で建造していれば4隻が戦列に加わっており、2隻がほぼ完成状態(笠置、阿蘇)、更に川崎、三菱、呉、横須賀でそれぞれ1隻が工程60〜80%の進捗状態になっていたはずです。雲龍型は60機あまりの搭載機を運用できましたから4隻合計240機、それに対してアルプス級は戦闘機中心に一隻46機、烈風等の新型機の場合は更に搭載機が減り42機ぐらいでしょうから5隻合計で220機で、しかも対艦攻撃力は戦闘機による爆撃でもしない限りはほぼ皆無、どっちがお徳でしょうか。
 まあ昭和19年6月時点では雲龍型は無理しても2隻しか出せなかったでしょうから、その部分ではメリットがあったかもしれません。だがちょっと待って欲しい、昭和19年の6月に米軍がマリアナに来ると誰が決めましたか、それ以前の日米空母比は日本軍に有利でした。マーシャル攻防の時点でもまだ日本軍の機動部隊が優勢でした。日米の空母戦では2度とも日本軍が勝っていました。つまり昭和19年6月の時点でアルプス級などなくても、日米の空母比が米軍に大幅に有利な状況でないことは充分に予測することができるわけです。拙速で使いどころに困るチープな空母を大量建造しなくても、雲龍型の工程の簡略化を進めることで米機動部隊に対抗することができたのではないかと、仮想戦記とは言いながら龍神沼は考えるわけです。まああくまでも空母数と搭載機数の話ではありますがね。っていうか、千歳型とか瑞鳳型が意味不明に沈められてなければ、アルプス級の代わりを充分果たせるわけですよ。あの4隻を(+日進と龍鳳)を直掩機用の専任空母に使うという考えは、アルプス級を計画する時点で発想できたわけだから、実はアルプス級なんて建造する必要はなかったんだよ。    ・・・・・ \な、なんだってー!/ Ω ΩΩ
 戦後のアルプス級空母予想、ヘリコプター搭載空母、復員艦、ミサイル母艦、ヘリコプター搭載強襲揚陸母艦、練習空母、まあそんなとこか、こんな奴ね。

*1:伊吹型の線図は光人社日本海軍艦艇写真集−7の91Pを参照

海の牙城第5巻"真珠湾の凱歌"を予想する

 第2部完結篇らしいので、今回でたぶん最後の予想になると思います。ちゃちゃっと行きます、
 第一章 牙城を撃つ        9P〜
第8艦隊の真珠湾空襲、米軍レーダー手の誤認により奇襲となる。   約20ページ分
 第二章 巨鳥爆砕         29P〜
ヒッカム、ホイラー飛行場に分散集結中のB29が第8艦隊艦載機の空襲で壊滅する。ついでにフォード飛行場に配置されていた米機動部隊の交替用の艦載機も迎撃行動を取れないまま撃滅される。たぶん何機かは離陸に成功するがあっというまに落とされる。ルメイ呆然としているところを烈風の掃射で戦死。真珠湾上空の制空権を確保した戦闘機隊は更に周辺飛行場を攻撃。第一次攻撃隊はここまで。入れ替わりに第2次攻撃隊到着    56ページ分
 第三章 反復攻撃        85P〜
第2次攻撃隊の攻撃が在港中の艦船に対して行われる。艦爆隊と戦闘機隊の一部は取りこぼしの飛行場の攻撃へ。補給艦艇や護衛空母など、マリアナ攻略戦の増援として集結中の艦船多数が在泊していたため撃ち漏らし多数有り。第三次攻撃隊の必要あり。第一次攻撃隊帰還語直ちに準備に入る。烈風も爆装。更に第四次攻撃隊も編成する覚悟で。     42ページ分
 第四章 湾口の老兵       127P〜
反復攻撃の間に真珠湾に接近する第8艦隊、搭載機の損耗により攻撃力低下。ハルゼー艦隊の東京砲撃を知り復讐に燃える山口多聞*1は大和及び利根筑摩とともに真珠湾砲撃に向かう。翌日早朝、戦闘機に護られた大和以下の艦隊は真珠湾に到達、真珠湾に潜み待ち受けていた米旧式戦艦アイダホ、ミシシッピニューメキシコオクラホマネヴァダの内の戦闘可能な艦数隻との間に真珠湾湾口で砲撃戦が行われる。真珠湾の水道内で砲撃、爆撃、雷撃を受け壊滅する米戦艦群、真珠湾閉塞。       34ページ分
 第五章 終局の劫火       161P〜
大和の巨弾が真珠湾に向かって放たれる。生き残っていた艦船は次々と粉砕され、飛行場には巨大なクレーターが生じ、工廠は瓦礫と化し、破壊され燃料タンク群から重油真珠湾に流れ込む、炎上する艦船により引火した重油真珠湾内のあらゆるものを焼き尽くしていく。       56ページ分
 終章              217P〜
第三部"天穹の戦神"に続かなければ、マリアナで補給が続かず立ち往生した第5艦隊と帰る場所をなくした燃料切れのハルゼー艦隊のエピソードが語られ、サイパンで内線防御に徹しアスリート飛行場に米軍を引き込んだところで大反撃に転じた陸軍が語られ、東海地震が語られ、対独戦に集中する為、無条件で日本軍と講和する連合軍が27ページに亘って語られる。
 

*1:山口多聞は東京出身

命名王

1) 
 立花龍人が物心ついた頃、世間ではビートルズに端を発したGSブームなるものが大衆の注目を浴びていた。横文字の動物やら昆虫やらを使った耳慣れないグループ名は、ろくに英語も知らなかった彼の好奇心の対象物だった。次に彼の興味を引いたのは、モータリゼーションがいよいよ身近になり、彼の住んでいた田舎町でも交通渋滞を引き起こすようになっていた自動車の名前だった。王冠だの花冠だの稜線だのその意味を知るにしたがって、彼の興味はその元になった言語にはむかわず、名前をつけるという行為に引かれていった。お絵描きで車を描くと、彼は必ずそれに名前をつける習慣を持つようになった。彼は自分の身近にあるものに、自分だけに通じる名前を付け始めた。初めて買ってもらった自転車、文房具、田舎ではまだ珍しかった電話、次々とその種類を増やし始めていた電気製品。
 初めて自分のつけた名前が、他の人間からもそう呼ばれることになったのは、家に貰われてきた子犬の名前を考えたときだった。家族でなんて名前で呼ぼうかと夕食の話題に上がったとき、思わず彼の口から出た名前に家族の誰もが賛成してくれたのだ。彼は気持ちがよかった、何か周りの世界が急に明るくひろがった気がした。今まで、誰にも知られることも無く続けていたものに名前をつける行為が、みんなに認められることもあるのだと彼は気がついた。ただ普通の家庭では、家電や車に名前をつけて呼んだりしない。ペットだって名前をつける機会なんてそう有りはしない。庭の池で泳いでいる金魚やフナに名前をつけたって、誰もその名前を使うことなんてない。彼の内なる欲求、自分のつけた名前をみんなに使って欲しい、それはそう関単に叶うものではないことに、幼いながらも彼は気がついた。
 彼が小学生になったとき、彼の体は標準よりだいぶ小さかった。当時坊主頭だった彼は級友から、その頃はやっていたTV漫画の登場人物の名前をあだ名にされた。そうか、そんなやり方があったのか、彼は自分があだ名を付けられてから3日後には先生も含めてクラス全員のあだ名をつけていた。自分のつけたあだ名をみんなに知ってもらいたい、しかしその頃、どちらかというと一人でいつも何かを考えていることが多かった彼には、中のいい友達とか一人もいなかった。あだ名を使うきっかけがないことに、彼はいっとき呆然となった。どうすればいい、みんなと友達になって認めてもらえないと、あだ名をくちにするきっかけさえ作り出せない。仲良くなるしかない、彼は決心した。クラスの誰もと仲良くなるなんて、面倒な上に時間がかかる。手っ取り早いのはクラスの人気者と友達になることだ。彼は必死に考えた末行動を開始した。これは、と目をつけた級友の好きなこと苦手なものなどいろいろと調べ、共通の話題を作り、相手の苦手なものについては自分がフォローできるよう努力して身につけた。相手の気持ちを読んで、行動することもいつの間にか学んだ。全てはあだ名を使う機会を得るためではあったが、それを続けているうちに自然と彼はクラスの中に溶け込むことができるようになっていった。彼が教師たちのあだ名をみんなの前で口にしたのは、そろそろ梅雨が始まりそうな5月初めごろだった。受けた、まだまだ幼い級友たちは、彼のつけた教師の特徴をよく取り込んだあだ名を、大きな笑い声とともに受け入れてくれた。夏休みが来る頃には、クラスの誰もが彼がつけたあだ名で呼ばれるようになっていた。彼のクラスで自分のあだ名に不満を持つものは誰もいなかった、その頃急に背が伸びた彼だけを除いて。