姿の見えない犯人を追った30年

今朝は文字通り「春の嵐」。雨と風が強かった。これからは少しずつ、
春めいて来るんだろうな。

『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(樋田毅 岩波書店
読了。

1987年5月3日20時15分。散弾銃を持った男が朝日新聞阪神支に
侵入し、小尻知博記者と犬飼兵衛記者に銃弾を浴びせ、小尻記者
の命を奪い、犬飼記者に重傷を負わせた「赤報隊」。

事件直後、朝日新聞社内に結成された特命取材班に名を連ね、公訴
時効後も姿の見えない犯人を追い続けたのが本書の著者である。

取材し書くことが仕事であるはずの記者が、書くことを許されない
特命取材班に籍を置き、ひたすら事件に関係すると思われるメモを
残す作業に従事するのは辛いことだったのではないかと思う。

ましてや同僚のひとりは重傷を負い、ひとりは殺害されているのだ
から。

それでもひたすらに「赤報隊」を名乗る犯人を追い続けた30年の
集大成が本書なのだろう。きっと、書けないこと・書かないことも
山のようにあったのだと感じる。

旭市新聞を敵視する右翼との対峙、系列の週刊誌が批判記事を書いた
新興宗教団体とその別動隊(霊感商法の、韓国発祥のあの宗教団体)、
絵画盗難事件に係わった人物。

何度も足を運び、時には会うことさえ拒否されながらも僅かでも犯人に
繋がる可能性を見出しながら取材を続けた年月だった。

そればかりではない。朝日新聞社上層部の問題点、警察への批判など、
公表しにくなっただろうと思われることも綴られている。

既に朝日新聞社を退職している著者であるが、この方は今後も同僚の
命を奪った「赤報隊」を追い続けるのだろうな。

主義主張が違うからって命を奪っていいなんてことはない。なのに、
「〇〇を殺せ!」なんて言葉が巷には溢れていやしないか?