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2008-06-07

『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない 金の値段の裏のウラ』鬼塚英昭


 そして、この本を読んでもわからない(笑)。デル・バンコ一族ってえのあ初耳。この連中が世界の金を牛耳っているんだってさ。ただし、著者の推測・推理に過ぎない。「凄いことを書いてやるぞ」と力み過ぎて、わけがわからなくなっている。孫引きも多過ぎる。マーケット以外で価格が決められていることが書かれているが、根拠が殆ど示されていない。その点において陰謀史観と大差ないと思われる。それでも、金は上がりそうな気がする。国際機軸通貨のドルが弱くなっているよーな感じ。通貨というのは約束事に過ぎず、所詮紙っぺらだ。資本主義経済が打撃を被ることがあれば、金は暴騰することだろう。そうかといって、金先物なんぞに手を出すのは早計だ。リスクの少ない純金積立あたりが好ましい。使う予定のない金がある人は、金を買っておいた方がお得だろう。


 致命的な部分を一つだけ指摘しておこう。


 BIS規制こそが日本のバブルをはじけさせた要因である、そう解説する経済書が多い。だが、銀行の自己資本率8%を定めたBIS規制ゆえに日本の銀行がおかしくなり、バブルがはじけたのではない。(150ページ)


 と書いておきながら、終章ではこうだ。


 私たちはBIS規制の恐ろしさを思い出さねばならない。バブルの崩壊はBIS規制によったと私は書いた。(228ページ)


 書いてねーだろーが(笑)。ためになったところは以下――


〈金の戦争〉どころか、金そのものについて語ったり、書いたりする経済学者もいない。ケインズフリードマンサミュエルソン、そしてガルブレイズにいたるまで一人もいない。未来学者も語らない。グローバリズムを否定するノーベル賞学者のスティグリッツも金に関しては沈黙を守っている。


 だが、巻末近くで何とリチャード・コシミズという名前が出てきて、元も子もなくなっている。


日経新聞を死ぬまで読んでも解らない金の値段の裏のウラ

『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』高木徹


 米国民間企業がPR手法を駆使して、国際世論を動かした。いまだに多くの人々が、セルビア人が加害者でムスリム人が被害者だと思い込んでいるはずだ。ミロシェビッチは悪の権化とかね。国際世論を見方にした方が勝つという、戦争の新たな次元を示している。ただ、テーマは秀逸なのだが、文章に勢いがないのが難点。新しい戦争のカタチは情報戦だ。講談社ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブルで受賞。


ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)

『やっぱり変だよ 日本の営業 競争力回復への提案』宋文洲


 フリーライターの前原政之さんが褒めていたので読んでみた。宋文洲(そう・ぶんしゅう)氏は1985年に国費留学生として中国より来日。その後、天安門事件で帰国できなくなり、日本でソフトを開発して会社を興す。ソフトブレーン(株)は東証マザーズに上場し、現在は東証一部。見事なサクセスストーリーといってよい。その上、私と同い年。


 異国から来たこともあって、日本の営業スタイルを客観的に見つめ、おかしなところをズバズバ指摘している。


 最初は、この日報は何らかの法的規制かと思いました。何か問題があったら調べられるように、国から義務化されているかと思ったのです。しかし、驚いたことに、単なるこの会社の十数年来の慣習でしかありませんでした。

 日報を書く人件費、紙代、そして集める人件費、倉庫の保管料などのコストパフォーマンスを考えると、とても経済活動の一環とは思えない業務です。


 日報の目的は、管理職の監視を再確認するだけの行為である。作文している営業マンも多いが、日報を介して上司とやり取りする場合、「お前は本当にちゃんと仕事をしているのか?」というレベルの疑惑に過ぎない。つまり、社員を信用してないからこそ書かせているといえよう。


 日本には技術力はあるが営業力はない、との指摘も新鮮だ。基本的に日本人はコミュニケーション能力が低いことを実感する。土地や会社といったものに対する帰属意識も薄らいでいる昨今、コミュニケーション能力を身につけなければ、多数の引きこもり現象が生じることだろう。


 後半は自社ソフトを宣伝しながらのIT指南。「ちょっとなあ」って感じは拭えない。それでも、さほどあざとさ感じないのは、宋社長の志が高いためだろう。


 もう一つ難を言えば、文体がとっつきにくい。多分、この人は話すことの方が得意なのだろう。ついでにもう一つ言えば、本文全体のセンタリングがちゃんとできていなくて、下に偏っているのも気になってしようがない。


 コスト意識を持つには非常に有益な書である。


やっぱり変だよ日本の営業―競争力回復への提案