『トラ・トラ・トラ!』

今週末は、日米開戦70周年に鑑みて、戦争映画の大傑作『トラ・トラ・トラ!』をブルーレイで見た。

1970年の作品である。
僕は小学生の頃に、テレビでこの作品を見た記憶があるが、久々にきちんと見返した。
この映画は日米合作である。
日本側とアメリカ側にそれぞれ監督を立て、両方の立場から戦争に突入するに至った過程を、できるだけ史実に基づき、公平かつ客観的に描いている。
その点だけでも、映画史に残る稀代のクソ映画、便・溢れック主演の『パール・ハーバー』とは全く違う。
監督は、アメリカ側がリチャード・フライシャー、日本側が舛田利雄深作欣二である。
日本側の監督は、当初黒澤明であったが、製作側と衝突したため、降板した。
確かに、余計な人間ドラマなどは一切ないため、前半は冗長である。
しかし、山本五十六を始め、歴史上の人物がどのような人柄であったかは充分伝わってくる。
そして、この映画のスゴイところは、「実際の真珠湾攻撃よりもカネが掛かった」と言われるほどの、戦闘シーンにおける圧倒的な物量である。
飛行シーンは、本物の戦闘機を可能な限り集め、改造して撮影した。
戦艦は全長200メートルに及ぶ実物大のセットを組んでいる。
また、アメリカ軍の全面協力を仰ぎ、基地や軍艦を借りて撮影したそうだ。
記録フィルムとみまがうばかりの大迫力の爆撃シーンの撮影では、死者まで出ているという。
細君は本気で心配しながら見ていた。
当時のハリウッドには、まだこういった超大作を作れるだけの体力と映画人の気概があったということか。
正に「これぞ映画!」という感じがする。
昨今のハリウッド映画はなぜダメになったのか。
それはやはり「CGの濫用」にも大きな原因があると思う。
CGでは一見、何でも再現できる。
でも、そのために内容が顧みられなくなり、映画は単なる遊園地のアトラクションに成り下がってしまった。
こういった硬派な戦争映画は、もう二度と撮れないだろう。
ブルーレイの特典映像は、実際の真珠湾攻撃の記録フィルムや、メイキング映像など、とても充実していて見応えがある。
アカデミー賞特殊視覚効果賞受賞。