『わたしが魅せられた漫画』刊行にあたって

清水正への原稿・講演依頼は  qqh576zd@salsa.ocn.ne.jp 宛にお申込みください。ドストエフスキー宮沢賢治宮崎駿今村昌平林芙美子つげ義春日野日出志などについての講演を引き受けます。

清水正の講義がユーチューブで見れます。是非ご覧ください。
https://youtu.be/KqOcdfu3ldI ドストエフスキーの『罪と罰
http://www.youtube.com/watch?v=1GaA-9vEkPg&feature=plcp 『ドラえもん』とつげ義春の『チーコ』


清水正『世界文学の中のドラえもん』『日野日出志を読む』は電子書籍イーブックで読むことができます。ここをクリックしてください。http://www.ebookjapan.jp/ebj/title/190266.html


ここをクリックしてください。清水正研究室http://shimi-masa.com/

デヴィ夫人のブログで取り上げられています。ぜひご覧ください。
http://ameblo.jp/dewisukarno/entry-12055568875.html


清水正監修『わたしが魅せられた漫画』(2015-9-20 日藝図書館)が刊行されました。レポートを採用された下記の学生は江古田校舎図書館へ取りに来てください。二冊差し上げます。

平成26年度「マンガ論」受講者
大西彩瑛(演劇学科) 箱田美優 (演劇学科) 飯塚舞子(文芸学科)新里和朗(映画学科) 梅津滉貴(文芸学科) 佐渡祐彦(文芸学科)飯塚侑里(文芸学科)矢口咲季(映画学科)津久浦真希(放送学科)清田鮎子(演劇学科)大庭彩音(演劇学科)相根美晴(文芸学科)齊藤 俊(文芸学科)土生あかね(演劇学科)千坂 光(文芸学科)大久保佳澄(文芸学科)小野日向子(放送学科 )大西笑生(美術学科)稲葉千誇里(文芸学科)横山翔(文芸学科)神崎千佳(文芸学科)谷 陽歩(演劇学科)遠藤光佑(文芸学科)長島瑞樹(文芸学科)池ヶ谷夕季(映画学科)吉野友規(文芸学科)木崎歩美(放送学科)太田彩香(文芸学科)山田優衣(文芸学科)山口隼(文芸学科)
平成26年度「雑誌研究」受講者
 小野寺莉子(写真学科) 小岩井杏奈(演劇学科) 山脇 智子(演劇学科)長岡璃歩(写真学科) 佐伯侑美 (演劇学科) 細川雷太(演劇学科)佐伯恵理子(音楽学科)

購読希望の方は日藝江古田購買部丸善にお問い合わせください。
連絡先電話番号は03-5966-3850です。
FAX 03-5966-3855
E-mail mcs-nichigei@maruzen.co.jp


B5判上製 本分339頁

『わたしがが魅せられた漫画』刊行にあたって
清水正日本大学芸術学部図書館長・文芸学科教授)


赤塚不二夫を知っている人は手を挙げて」平成26年度の「マンガ論」でのこと。百人を越える授業で、手を挙げた学生は一人であった。私は眼を疑った。十年以上も前、同じ授業で「トルストイ」を知っている学生が一人もいなかったことがあり、それ以来、あまり気にしないようにしているが、大半の学生が赤塚不二夫を知らない現実にはやはり驚いた。
 私が「マンガ論」で重点的に取り上げる漫画家はつげ義春日野日出志で、両漫画家も一部の熱狂的な愛読者は別として、一般的に広く知られているとは言えない。「マンガ論」は文芸学科の専門科目であるから、文学性の高い、つげ義春の『チーコ』、日野日出志の『蔵六の奇病』などを取り上げる。手塚治虫などはドストエフスキー原作の漫画版『罪と罰』しか講じない。白土三平の『カムイ伝』なども取り上げたいが、あまりにも長編で学生が読み切れないということがある。

 さて、つげ義春の名前は知らなくても、手塚治虫の名前を知らない学生はいない。ましてや『天才バカボン』で一世風靡したギャグ漫画の大家・赤塚不二夫を知らない者はいまい。私は、あえて聞くまでもないと思って、冗談で聞いたのだが、その結果に冗談でなく愕然とした。もしかしたら、エンターティンメント漫画は流行が過ぎれば自然と忘れ去られていくものなのか、と改めて考えさせられた。団塊世代赤塚不二夫白土三平を知らない者はいないだろう。しかし、二十歳前後の若い学生にとって彼らはすでに過去の漫画家であり、関心の外にあるのかも知れない。逆に、彼らが夢中で読んでいる漫画を還暦過ぎた老人たちは何も知らないのかも知れない。そこで、学生たちが今、どのような漫画を読んでいるのか知りたくなった。さっそく、担当する「マンガ論」と「雑誌研究」の受講生に「私が魅せられた漫画」という課題レポートを提出してもらった。
 今日、どれくらいの漫画作品が発表され、読まれているのか。その正確なデータを持っている人がはたしているのだろうか。商業誌の他に同人誌などに発表された作品を含めれば、まさに膨大な数にのぼる。仮に専門の漫画研究家がいたとしても、おそらく物理的に読みこなすことはできまい。かつて「マンガ論」を引き受けた時、日本で刊行されている週間漫画雑誌四誌ほどを定期購読したことがある。しかし、これはすぐに諦めた。あっという間に、研究室が漫画雑誌に占領され、足の踏み場もなくなった。今日では電子書籍が普及しているので、保管場所に悩むことはないが、しかしそれでも読み時間の問題を解消することはできない。膨大な作品の中から、なんらかの基準を設けて選択しなければ制限時間内で〈読む〉ことはできない。
 今や漫画はアニメと並んで日本の文化を代表するまでになった。しかし、漫画作品は多くの人たちに読まれることはあっても、文学作品のように研究・批評されてきたとは言えない。漫画は読みっぱなし、読んでいるときだけ楽しければいい、と思っているひとは意外と多い。それに漫画は今や巨大産業化しており、漫画研究・批評における様々な制約もあって、今後解決していかなければならない問題も多い。漫画研究・批評が自由に伸び伸びと展開できる状況を作り上げていくことも必要であろう。
 本書は日芸図書館企画「日本のマンガ家」シリーズの第四弾にあたる。第一弾「日野日出志」、第二弾「つげ義春」、第三弾「○型ロボット漫画」(阪本牙城・森田拳次藤子・F・不二雄)に続くものである。今回の企画は特定の漫画家に絞らず、七十歳代の戦中世代から、六十歳代の団塊世代、五十歳代、四十歳代、三十歳代、そして二十歳前後の学生まで、日本の漫画愛読者たちがいったいどのような漫画作品に魅せられ、読んできたのか、それを客観的に知りたいという動機から生まれた。本書に掲載された課題レポート、エッセイ、論文を通して、日本の漫画作品の多様性が浮き彫りにされたのではないかと思っている。
 本書が一人でも多くのひとの目にとまり、読まれることを願っております。最後になりましたが、原稿依頼を快諾し、執筆に情熱を注いでいただいた本誌掲載者に心から御礼申し上げます。
 二〇一五年八月十一日