描かれた猫…4「猫又または化け猫」

【描かれた猫…4「猫又または化け猫」】
 猫股(ねこまた)は、日本の民間伝承や古典の怪談、随筆などにあるネコの妖怪。 大別して山の中にいる獣といわれるものと、人家で飼われているネコが年老いて化けるといわれるものの2種類がある。『本朝食鑑』には、おおよそ雄の老猫は妖怪となる。その変化のしかたは狐狸と変わらず、よく人を取って食う。俗にこれを「ねこまた」という、とある。また『和漢三才図絵』には、おおよそ10年以上生きた雄猫には、化けて人に害をなすものがある。言い伝えによれば黄赤の毛色の猫は妖をなすことが多い、と書かれている。

 犬は化けないが猫はなぜ化けるのか? 猫は暗闇の中でも目を光らせて歩いている姿を怖いと思うのは容易に理解できる。「ネコが妖怪視されたのは、ネコが夜行性で眼が光り、時刻によって瞳(虹彩)の形が変わる、暗闇で背中を撫でれば静電気で光る、血を舐めることもある、足音を立てずに歩く、温厚と思えば野性的な面を見せることもあり、犬と違って行動を制御しがたい、爪の鋭さ、身軽さや敏捷性といった性質に由来すると考えられている。」(「ウキペディア」)とあり、猫の特性が、行灯などの薄暗い明りで生活していた時代には、不可解なものだったものと思われる。


《長い尻尾は嫌われ、化け猫は尻尾が2本ある》
 江戸時代には尾がヘビのように長いネコが化けるという俗信があり、尾の長いネコが嫌われ、尾を切る風習もあったようです。
 猫が油を舐めるのを訝しがって、恐れていたのではないかと思われる絵が、歌川国芳「五十三次岡崎」など沢山あるが、これは江戸時代には、行灯などの灯火用に安価な鰯油などの魚油が用いられ、ネコがそうした魚油を好んで舐めたためと思われている。



・写真左=歌川国芳「五拾三駅 岡崎」部分…十二単の老婆に化けた猫が、油をなめています。手前に小さく描かれた又猫の尻尾は2本あります。国芳の絵にはこうした頬被りをして踊るおどけた又猫や、写真下「鎌田又八」のように花などが添えられており、おどろおどろしさを和らげようとしている優しさを感じます。


・右上=歌川芳藤「五拾三次之内猫之怪」



・右下=歌川国芳『鎌田又八」