書物蔵

古本オモシロガリズム

宝石本と図書館本!

まだ現物は未入手だけど,ほぼ手にはいりそう(ネットで)。
 宝石本わすれなぐさ / 小寺謙吉. -- 西沢書店, 1980.1 3千円 安い
 図書館物語 / 竹林熊彦. -- 東亜印刷出版部, 1958  2千円 安い
むぅ,こんなに早く手にはいっていいのかしらん??? 書物の達人 / 池谷伊佐夫. -- 東京書籍, 2000.9  によれば『宝石本〜』は一時,ゾッキで出まわっていたっちゅーけど。けどこの『書物の達人』は,相場を書いていてくれるのがとってもいいよ。

このまえ聞いた紀田順一郎氏の講演で話題になってた人はたしかこの小寺謙吉だったはず。古書蒐集は熱意でなく殺意だ!の人。芋をあらうような古書会館の開場時に,いい年した爺さんや親父たちが,ぐいぐいと「てこでも動かぬ」ってな感じで本をとりあうのにはいつも閉口するけど,これを読めばそんな人たちを笑ってゆるせるようになるハズ。

『図書館物語』はタイトルがなんとも意味不明。けど中身はしっかりした図書館本。ちょうど『図書館年鑑1952』(って知らないよね。中井正一が著者標目に立つんですよ!)とおなじぐらいの大きさ。

カンパネラ書房の支店へいく。すごい。こんな下町にこんな固い本ばかりの古本屋があるなんて。読書論の棚もあるし,北千住の本店の2倍くらいか。でも対応してくれた店員さん曰く「最近はネットばかりで来店してくれる人いないんですよー

 売春の社会史. 上下 / バーン・ブーロー,ボニー・ブーロー[他]. -- 筑摩書房, 1996.9. -- (ちくま学芸文庫)  帯つき ほかに山本夏彦「私の岩波物語」文春文庫も

「売春」ってコトバなくなりましたね。かわりに「援助交際」と「買春」。カイシュンってぇと「回春」しか思いつかないのは古いのかなー。エンコーっても「エンコ(エンジン故障)」しか思いつきません(^-^;)。オートマ車の普及で「エンコ」も早晩,廃語になりやす。

ついでに産経の記事も図書館史の観点でlibrary humorに

 書物耽溺 / 谷沢永一. -- 講談社, 2002.8

これも安く買いました。ちょうど探してたんすよ〜,よかった。東京堂ふくろう店の坪内祐三の棚で立ち読みして,これなぞまさに図書館本ということで。

なぜ図書館本かって? そう,いい質問です。全体としてはこれは本の本の書評集。でも重要なのことは,「図書館学の悪口がかいてある」ってこと。これ重要。

「図書館の参考事務は無意味である:植村長三郎「図書館学・書誌学辞典」」p.58-59

これを読んで思うのは,この主張の是非ではなく,図書館(情報)学で,植村長三郎やら毛利宮彦やら金森徳次郎やらを引用する論者がいるのか?ということだ。ゼツボー的。

なにも読まずに,ボクはこう考えた,わたしはこう思うってのばかりではないか。エッセイであろうとも,本をよんでそれに賛成であれ反対であれ触発されて書いたならば,言及すべきなのである。そんな文献の引用の網の目のなかでだけ,その言説の相対的なたしからしさは最低限,たもたれる。もともと文系のあらゆる言説は科学じみた検証ができないんだから。

図書館に文句をいうにしても誉めるにしても,なんらかのソースがないと。

ここではくわしく論じる余裕がないけど,ここで谷沢氏が展開してる論には半ば賛成だが,一部に留保をつけたいというところ。結論としては,リファレンスは意味あるよ。

死せるカクロウ,生ける広報官をうごかす

金森徳次郎ついでに日曜の産経に「国会図書館/職員過多」って記事がでた。原紙をみると,第1面右上トップで題字がすごくデカイ。むむむー,国会図書館はさすが巨大図書館だす〜。題字がデカイのは,産経の認知度がたかいっちゅうわけだす〜。

コトの是非はとりあえず措いてといて(論理的にはいろいろツッコめる記事ですが,こーゆーのは背景に政治的な意図があるので,ツッコンでもあまし意味ナイ),図書館現象学派として注目すべきなのは,記事本体じゃあゼンゼンない。ではどこか。

末尾の「国会図書館幹部」の反論なのだ。それも意味内容ではなくて,表現

〜行政府に対抗できる専門家が必要。森羅万象の法律を扱うので多すぎるとは思わない

どですか?なにかのコトバが引っかかりませんか?そう!「森羅万象」ですよ!

わからないかな。これは日本におけるリファレンス業務の父(と,いま私が宣言します),志智嘉九郎(シチ・カクロウ)のスローガンなのです。

昭和二十四年頃,この仕事を大々的にやろうと決心し,それをPRするために,

古今東西森羅万象,判らんことがあれば,なんでも一応,図書館へ相談して下さい(下記p.56)

この豆本は,古書の蒐集を再開して最初に買ったものの一つ。ネットで安かった。
 知事の難題 / 志智嘉九郎. -- 豆本“灯"の会, 1978.3. -- (灯叢書 ; 第8編)

国立図書館のデータで,NDCに289.1(日本人の伝記)がついているけど,まちがい。正しくは,015.2049(レファレンスワークの雑)。豆本の図書館本はほかにもあるけど,そのNDCのまちがいについてもまたやりまする〜(ひつこいか?)。

んでもって,国会図書館にある調査局ってーのは,Research and Legislative Reference Bureau がホントの名前なわけです。

そんで,このリファレンスってコトバは当時の日本人には全然わからんかったんで,こんな議論を国民の代表がしました。

○大石(倫)委員 カタログとかサービスという言葉は大体日本語にしても意味が通るが、リフアレンスだの、ヘべれけだの、そういつたようなことを法文の上に現わすことは、われわれ議員としての責任上、よほど考えなければならぬ問題だと思う。

2-衆-図書館運営・議院運営委員会連合審査会-1号-昭和23年2月3日 大石倫治(おおいしりんじ日本自由党http://kokkai.ndl.go.jp/

「リファレンス」ってのは,当時,「へべれけ」なわけです。んで,立法リファレンス局は立法考査局になりますた(笑。

ですから,国会図書館が,立法考査局をまもるのに「森羅万象」って表現をつかうのは,その背景に,志智嘉九郎の影響をみてとれるわけです。死してなお,広報担当官の無意識を操るとは。むぅ,偉大なりカクロウ…。

蛇足ですが,立法考査局があったんで国民むけには「一般考査局」もありますた。いまでいう参考係なわけですが…,一般考査(General Reference)局って,偉そうすぎ(笑。

蛇足ついでに,調査及び立法考査,ってあるけど,調査と立法考査の違いはこれでわかってきやす。

立法考査は,レジスレーティブ・レファレンスなわけだから,リファレンス,つまり文献に依拠しなければならないんすね。対して調査は,文献に依拠せずともよいわけです。先行文献がなくてもフィールドワークなどして(自力で現実から概念をきりだして)判断しリポートする活動です。学者でもよくなしえない技です。すごすぎ。

国会会議録

さいごに「国会会議録」データベースについて。こりは機能はプリミチブでインターフェイスもけしてよくないですが,魔法の箱です。なんでもわかります。こまめに引くと,今回みたいなlibrary humorの題材もひっぱってこられます。それこそ日本国の森羅万象がわかりますよ〜。西部ススムとか宮台シンジ等の演説もきけ?ます。もし,この箱をすみずみまで探して求めるものが出てこなかったら…,それはまだ日本国政で話題になっていないということです。あなたが一番乗りになれますよ。