書物蔵

古本オモシロガリズム

ヲイヲイ! 京城帝国大学図書館の司書官様はトンデモなくネ?

昭和前期の朝鮮における図書館活動の重要な記録に、雑誌『朝鮮の図書館』があるが。
それににゃんだかトンデモな話が載っていたのでご紹介。
この雑誌には毎回、まじめな社会・政治問題の図書を紹介する欄があるのだが、それがなんだかヘン(・∀・)
「城大図書館 吉村生」という人が言うには…

天皇を英訳してEmperorと申し上ぐるの妥当なりや否やについて、実は内々大なる疑を懐いて居るのであるが、本誌創刊号に一寸紹介した酒井勝軍氏が旧ロウ著した「天皇礼讃のシオン運動」[四六判一一〇頁、一月、東京市外渋谷町猿楽、国教宣明団、一円]といふ本を見て、私の外にも同感の士があるかと空谷に蛩音を聞くの思ひがあった。(「天皇礼賛のシオン運動:附,共産とフアツシヨものゝ紹介」『朝鮮の図書館』(3) p.11-18(1932.2))

と、「イスラエルの正系ヨセフ族は、実に我大和民族であり」、ユダヤ人のシオニズムは、「実は日本を捜している運動だといふ」本だと紹介し、さらに、こう述べる。

酷評すればどうも纏りがついて居ない憾があり、其論も(略)我々俗人には卒かに首肯出来ないが、切々愛国の至情には深く打たれるものがある。

ん?(・ω・。) 「酷評」とか、にわかには肯定できないとか、ちょっと冷静な紹介っぽいが…
なんだか吉村さんってば、若い頃、東京で酒井勝軍の演説を聴いたこともあるんだって。
そして、酒井勝軍の著書12点をすべてリストアップしたうえで、

右の内*印は筆者は読まぬから知らぬが、何れも参考に読んで可い本だ。

と、リストをよくみると、*のついている、つまり読んでいない本はたったの2冊!(×o×)
外地でこんなパンフレットをわざわざ読むにはソートーな手間が…(^-^;)
どうやら相当に…(・∀・)ニヤニヤ

吉村定吉さんってば

手許のお宝、『簡約日本図書館先賢事典』によれば、

吉村 定吉 よしむら さだきち 18??-19??
(3)秋田県社会教育主事,1924:秋田県立図書館館長,1930:京城大学図書館司書官助教授,1941:退職,戦後秋田大学講師,1959:上京,以後不明

とある、って書いたら実はオタどんがこの前見つけてきてたその人じゃござんせんか(×o×)
さすがオタどん(・o・;) 日本図書館史学で生没年不明の行方不明状態のヒトの手がかりを見つけてくるとはとは(^-^;
このヒトの奥さんの妹の旦那だったお医者さんが、どうやらトンデモ趣味があったみたいですわい(^-^*)
総合すると…

吉村定吉(1886-19??)よしむら・さだきち
 明治19年3月生まれ。1916年東京帝国大学文学部英文科卒、秋田県社会教育主事を経て1924年秋田県立図書館館長。1930年京城帝国大学図書館司書官助教授,のち同館館長というのはガセネタ。1941年退職。戦後は秋田大学講師を勤め,1959年に上京。没年不明。

ってな感じ。
でも、英文出だから、英語・英文学関係のレファ本で追跡できるかもね。あと、秋田もあやしい。出身県かも。