『浅倉久志編訳ユーモア・スケッチ傑作展 1』読了

以下後報

【後報】
早川書房単行本
装幀:畑農照雄
編訳:浅倉久志
昭和53年9月初版
読んだのは
昭和56年6月の三刷

1972年からハヤカワ・ミステリ
・マガジンに連載された
短文訳をまとめた本。

短編より短く、
ショート・ショートと
いうわけでもない、
英語文學独特の
スタイルの作品を日本に
提供する企画
だったみたいです。
あちらではこうした作品を、
ユーモアとかカジュアルとか呼んでいると、訳者あいさつにあります。

訳者追悼短編集を読み*1、訳者のほかの本も讀もうと思って借りた本。
図書館検索で、訳でなく著で出たので借りたわけですが、
図書館(の下請け?)がDB打ち込む際にちょっとアレしたみたいで、
これも訳書でした。

どういうたぐいのユーモアかは、いろいろあるのですが、例えば、

頁146「パリのアメリカ人」ロバート・ベンチリー
"FRENCH FOR AMERICANS" by Robert Benchley
旅行ガイドのパロディ。
(前略)町のメイン・ストリートをゆっくりと通りすぎてゆく連絡列車の乗客が、あなたを地元の人間と勘ちがいして、しきりに指さしてくれるのだ。(「ねえ、ごらんなさいよ、ハリー。ちょっと絵になるじゃない! あの人たち、生まれてからおフロにはいったことがあるのかしらね!」)

もしくは、

頁131「冠婚騒災入門」ドナルド・オグデン・ステュアート
"PERFECT BEHAVIOR" by Donald Ogden Stewart
第四章 飲酒のエチケット
 いうまでもなく、“飲酒”は社会の上層階級のあいだでつねに人気のあるスポーツでしたが、“禁酒法”施行後のアメリカほど、この娯楽が熱狂的に迎えられた国はありません。これまでそれほど“飲酒”に関心のなかった紳士淑女も、いまや他のすべての娯楽をなげうって、この魅力あるスポーツに専念している現状です。若い男女も、最近の数年間に、両親たちにひけをとらないほどこのゲームに上達しました。多くの都市では、“飲酒”が“ブリッジ”や“ダンス”よりもポピュラーになっており、“禁酒法”があと数年続けば、“飲酒”は偉大な国民的スポーツとして、ゴルフや野球の地位を奪うだろうと予測されています。
 今日では、このゲームは、(イ)公式の飲酒と、(ロ)略式飲酒に分かれています。前者はふつう晩餐のあとで行われ、最高の屋内娯楽として、ゼスチュア・ゲームや、手品の実演や、幻灯の映写などにとって代わる勢いを見せはじめました。“公式の飲酒”の参加人数は、ふつうの広さの住宅の場合、一人から十五人までというところです。それ以上の場合には、ガレージと、大きな空地と、特別の警察・火災・窓ガラス保険が必要になります。ゲームを始める前に、グラスと、角氷と、何本かのウイスキーまたはジンを用意してください。

以下は単なるメモ。

頁52「自転車の修繕」ジェローム・K・ジェローム
"OVERHAULING A BICYCLE"(from "Three Men on the Bummel") by Jerome K. Jerome
ぜんぶで二ポンド十シルもかかった。

頁36「逆行魔」スティーヴン・リーコック
"THE RETROACTIVE EXISTENCE OF MR. JUGGINS" by Stephen Leacock
なにはともあれ、彼がわたしの知りあいの中でもっとも教訓的なアレゴリーのひとりであることはまちがいない。

<以下収録作品(を書き写しただけ)>
第一室
「クレイジー二人旅」ドナルド・オグデン・ステュアート
"THE CRAZY FOOL"(from "The Crazy Fool") by Donald Ogden Stewart
「逆行魔」スティーヴン・リーコック
"THE RETROACTIVE EXISTENCE OF MR. JUGGINS" by Stephen Leacock
「おもしろいやつ」ジェイムズ・サーバー
"THE FUNNIEST MAN YOU EVER SAW" by James Thurber
「自転車の修繕」ジェローム・K・ジェローム
"OVERHAULING A BICYCLE"(from "Three Men on the Bummel") by Jerome K. Jerome
第二室
「指の歴史」H・アレン・スミス
"A SHORT HISTORY OF FINGERS" by H. Allen Smith
「忘れられたバッハ」フランク・サリヴァン
"THE FORGOTTEN BACH" by Frank Sullivan
「橋の不思議」ロバート・ベンチリー
"THE MYSTERY OF BRIDGE BUILDING" by Robert Benchley
「いかに絶滅するか」ウイル・カッピー
"HOW TO BECOME EXTINCT" by Will Cuppy
「ロジャー・プライスの人名学理論」ロジャー・プライス
"THE ROGER PRICE THEORY OF NOMENCLATURE" by Roger Price
「冠婚騒災入門」ドナルド・オグデン・ステュアート
"PERFECT BEHAVIOR" by Donald Ogden Stewart
第三室
「パリのアメリカ人」ロバート・ベンチリー
"FRENCH FOR AMERICANS" by Robert Benchley
シェルブールの雨」ロバート・ベンチリー
"ROUTE NATIONALE 14" by Robert Benchley
「フランス人はふしぎな国民」ウイリアム・アイヴァーセン
"THE FRENCH THEY ARE A FUNNY RACE" by William Iversen
第四室
「正本・チャタレイ夫人の恋人」ハーヴィー・カーツマン
"THE REAL LADY CHATTERLEY" by Harvey Kurtzman
「喪服の似合うエトセトラ」フランク・サリヴァン
"LIFE IS A BOWL OF EUGENE O'NEILLS" by Frank Sullivan
「チュウチュウタコかいな」フランク・サリヴァン
"A GARLAND OF IBIDS" by Frank Sullivan
「騎士道残酷物語」スティーヴン・リーコック
"GUIDO THE GIMLET OF GHENT : A ROMANCE OF CHIVALRY" by Stephen Leacock
「さらば愛しきオードブルよ」S・J・ペレルマン
"FAREWELL, MY LOVELY APPETIZER" by S. J. Perelman
第五室
「離れ島の一家の寓話」E・B・ホワイト
"THE PARABLE OF THE FAMILY WHICH DWELT APART" by E. B. White
「男だけの世界」コーリイ・フォード
"HOW TO GUESS YOUR AGE" by Corey Ford
「女だけの世界」コーリイ・フォード
"DO YOU SAVE STRINGS ?" by Corey Ford
「善玉と悪玉」アート・バックウォルド
"THE GOOD AND THE BAD" by Art Buchwald
「二百歳まで生きる法」スティーヴン・リーコック
"HOW TO LIVE TO BE 200" by Stephen Leacock
「億万長者になる方法」スティーヴン・リーコック
"HOW TO MAKE A MILLION DOLLARS" by Stephen Leacock
「飛べ、オーヴィル!」E・B・ホワイト
"THE WINGS OF ORVILLE" by E. B. White

初出誌、初出年はありません。以上
(2017/5/15)