アリゾナ余波

『毎日』の記事;


米国:州の新移民法に批判 「人種選別捜査につながる」

 【ロサンゼルス吉富裕倫】米アリゾナ州で先日、成立した不法移民取り締まり強化新法に対し米内外から批判が噴出している。同州企業との契約打ち切り決議案がロサンゼルス市議会に提案されたほか、AP通信によると、メキシコに本部を置く世界ボクシング評議会(WBC)は同州ではメキシコ人選手の試合を行わない方針だ。

 アリゾナ州はメキシコと国境を接し、不法移民の流入ルートの一つ。不法移民対策として成立した新法は、外国人登録証の携帯を義務付け、違法の疑いがあれば移民の地位確認を捜査当局に求める。今夏施行予定で、人権団体や宗教団体は「人種選別捜査につながる」と批判している。

 29日には新法を違法とする2件の訴訟が起こされたほか、連邦政府も訴訟を検討している。中南米系移民の多いカリフォルニア州ロス市議会には、アリゾナ州の企業と結ぶ720万ドル(約6億5000万円)分の契約打ち切りを市に求める決議案が提出された。

 さらに、中米エルサルバドル政府が約280万人の米在住者に同州に旅行しないよう呼びかけたほか、ニカラグア政府は米州機構と国連に中南米系移民の人権を保護する措置をとるよう求めた。
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20100501k0000m030011000c.html

この州法については例えば、


RANDAL C. ARCHIBOLD “Arizona Enacts Stringent Law on Immigration” http://www.nytimes.com/2010/04/24/us/politics/24immig.html


『毎日』の記事で言及されたアリゾナ・ボイコットは米国国内においては野球界を巻き込んでいる。先ず、スポーツ・ライターのDave Zirinがアリゾナ・ダイアモンドバックスの試合の観戦ボイコットを呼びかけている*1。これはティームのオーナーの1人であるKen Kendrickがアリゾナ州における共和党への主要な資金提供者であるため。さらに、MLB選手の組合であるMajor League Baseball Players Association*2が反対を表明している。Richard Adams “Arizona immigration law: baseball players cry foul*3に曰く、


The association points out that "hundreds of international players" and their families move through the state during spring training or to play against the Diamondbacks, and that they could be targeted by the law.

In the 2008 season, 27% of MLB players were Hispanic. In addition, the league now includes foreign players from all over the world, including Japan, Korea and Taiwan as well as Latin America – so that 28% of current MLB players were born outside the US.

See also

Richard Adams “Arizona's anti-immigrant law: the inevitable result” http://www.guardian.co.uk/world/richard-adams-blog/2010/apr/26/arizona-immigration-law-boycott
“Hysterical nativism” http://www.economist.com/world/united-states/displaystory.cfm?story_id=15954262

感染源と抗体反応

承前*1

民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)

民族とネイション―ナショナリズムという難問 (岩波新書)

塩川伸明『民族とネイション』から抜き書き;


(前略)ナポレオン戦争を契機に、ヨーロッパ諸国はフランスという強力な敵国と戦うためという要請から、それぞれの「国民的団結」を創りだす必要に迫られた(いわば、後の「総力戦」の論理の萌芽的登場)。そのことは同時に、フランス革命を契機とする「国民国家」観念の影響が隣接諸国に拡大していくことを意味した。ラテン語のnatioに由来する「ネイション」ないし同種の言葉は、言葉それ自体としては古くからあったものだが、それが今日にまでつながる近代的な意味で広く使われるようになったのは、フランス革命を画期としている。(p.40)
免疫学的比喩をいい加減に使うと、この場合、仏蘭西は「ナショナリズム」という病気の感染源であり、それに刺戟されて生成した独逸などの後発的ナショナリズムは抗体反応といえるだろう。ここではその抗体反応の症例としてフィヒテの『独逸国民に告ぐ』*2をマークしておくが、ともかく仏蘭西はその後のナショナリズムの猖獗に対しては感染源としての責任を有することになる。また、この感染−抗体反応という構造はその後何度も何度も反復されることになる。亜細亜におけるナショナリズムが〈抗日〉ということで生成したとすれば、日本は自らが感染したナショナリズムという病気を感染させてしまったという責任を有しているということがいえるだろう。
ドイツ国民に告ぐ (岩波文庫)

ドイツ国民に告ぐ (岩波文庫)

直接関係はないが、上に引用したパラグラフの次のパラグラフも書き出しておく;

「国民の一体性」という観念は、現実にはそれほど広く分かちもたれていたわけではない。しかし、それでも、いったん「国民国家」という自己意識をもった国家が登場すると、その国家が共通語(国家語)形成、公教育の整備、国民皆兵制度などを推進し、「国民」意識を育成するようになる。そのような政策がとられ出した後も、「国民の一体性」という観念は文字通り全国民に共有されるわけではなく、しばしば国民の中での亀裂が問題となるが、そうした亀裂をできるだけ覆い隠し、あたかも一体性が存在するかの如き外観が整備されていく。このようにして成立するのが「国民国家」である。(ibid.)

当事者の証言(取り敢えず)

以前「かつて舛添要一のDVに耐えかねて離婚した片山さつきを城内に対する〈刺客〉として送り込んだ小泉純一郎のセンスって凄いと思う」と書いたとき*1、実は記憶に頼って裏を取るということをしていなかったので、証拠を提示しろという突っ込みが来るんじゃないかとびくびくしていた。
さて、『日刊ゲンダイ』の記事で、『週刊新潮』のインタヴューに答えた片山さつきの発言が引用されていたので、切り抜いておく;


「公私ともに人は利用するだけのものと思っているんでしょう。大体、彼の言葉に信頼性があるとお考えですか? 彼にはこの政策を実現したい、是が非でも成し遂げたいといったものがあるんでしょうか。改革派といっても、彼のどの実績がそれにあたるんでしょうか?」(週刊新潮)という片山は、舛添との結婚生活を「ただただ怖かった」と振り返る。その辺にあるものを投げつける。サバイバルナイフを並べる。愛人は妊娠していて、「出ていけ出ていけ」とギャーギャー騒ぐ。

「今で言えばDVということになるんでしょうか」(同)と語っている。
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/gendai-000111632/1.htm

序でに言うと、舛添の東京大学辞職*2と要一/さつきの離婚とは同年なり。